父の日を4日後に控えた6月15日、読売新聞の朝刊にこんな広告が出稿された。
「そろそろ父の日か、ま、気にしてないけど…」と、寝そべりながら新聞を読んでいるのは人気漫画『あたしンち』に登場するお父さん。
これは母の日に続く、ユニクロの父の日広告。前回の母の日には「あたしンち」のお母さんが登場し、大きな話題を集めた。今回の広告で、お父さんは新聞を広げ、そんな母の日広告を見ながらつぶやいている。
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しかし、「気にしてないけど…」の後には、やけに長い「…」が。ようく目を凝らしてみると、無言の象徴である「…」の中に、実は極小サイズの文字でお父さんからのメッセージが書かれている。
というのは嘘だ。心の中ではちょっと意識している。
どうも父の日は母の日に比べて忘れられがちな気がして不安だ。
子供たちよ、どうか察してくれないか。
感謝されるような姿を見せられている自信はないけど、
父は君たちのことを愛している。これは心からの本音です。
「普段から多くを語らないお父さん。でもきっと心の中では子どもたちや家族のことを想っているのではないか。ユニクロさんとの打ち合わせを重ねながらテーマと企画が決まりました。本当は父の日をちょっと意識していたり、母の日に比べて父の日が忘れられがちなことに不安だったり、でも、子どもたちをとても愛していたり、一見気にしていないそぶりを見せるお父さんの心の中が書かれています」と、本企画を手がけたアートディレクター 玉置太一氏。
今回のお父さんのイラストも、漫画の作者であるけらえいこさんが描き下ろしたものだ。
「実は母の日の広告をお父さんが見ています。母の日と父の日のつながりも表現しつつ、“気にしてないけど”と言いながら、母の日をうらやましがっているのか、父の日に気づいてほしいのか、そんな父のアピールのようなものを感じるユーモアのある絵になればいいなと思いました。けら先生には、ポージングといい、表情といい、気にしてないけどそぶりがよく出た、とてもかわいいお父さんの絵を描いていただきました」(玉置氏)。
お父さんの本音を「…」に込めた企画を進めるにあたり、コピーライター栗田雅俊氏は「コピー的には二段階ロケットを意識しました」という。
この広告の出稿後、SNSでは「ユニクロの母の日に続いて、父の日の広告が!」という話題に始まり、少し遅れて隠れた文字に気づいた人から驚きの声が上がり、話題が時間差で広まっていった。
「『…』の中の文字に気づかない人でもシンプルに楽しめること、わかった人はさらに楽しめること、を狙いました。まさにそのような形で話題にして頂けてありがたかったです。
前回の母の日も今回の父の日も、形は違いますが嘘っぽくない本音を表現することを大切にしました。ユニクロさんが“ただ商品を売ろうとする広告ではなく、お父さんへの想いを喚起できるものを”という一貫したスタンスを示してくださったのでブレなかったです」(栗田氏)
これまでになかった広告表現を成立させるために、新聞社とも課題や不安などを共有し、それらを一つずつつぶさに解消しながら実現に至ったという。メディアプランナー 田中僚氏は「携わるすべての方たちの発想や熱量を過不足なく再現したい、という想いで取り組みました。今回の広告を通じて、自分自身も“新聞広告を通じた体験は、読者や世間に、新しい気づきや見方を与えられる”という手応えを得ることができました」と話す。
新聞広告の他に、SNSや店頭でも展開。
今日は父の日❤️#ユニクロ父の日 #あたしンち pic.twitter.com/j0QFsOUfai
— 『あたしンちSUPER①』あたしンち/けらえいこ公式 (@atashinchi_new) June 19, 2022
コピーライター真子千絵美氏は、「新聞掲出当日、SNS上でも、拡大すると『…』の文字が見える画像を投稿して、新聞を見ることができなかった人も追体験できるようにしました。また、父の日を迎えるまでの間にも連日、お父さんに関するコピーとイラストを投稿しました。特に“母にささやいている父”は、お母さんを通して自分の気持ちを伝えてくる実際のわたしの父を想像しながら考えたのですが、あるあるに共感する声も多く、うれしかったです」と話している。
スタッフリスト
- 企画制作
- 電通 + sora inc.
- CD
- 井戸真紀子
- AD
- 玉置太一
- C
- 栗田雅俊、真子千絵美
- D
- 菅原良太、田口美希、梁取幸子
- I
- けらえいこ
- AE
- 前田浩行、三浦良晃、寺倉靖明、宮脇くるみ
- メディアプランナー
- 赤松英治、田中僚、荒川里彩、岡村莉紗子
- 印刷
- 精美堂