米連邦取引委員会(FTC)は6月28日、米小売大手ウォルマートを提訴したことを明らかにした。同社の送金サービスが詐欺に使用されているにもかかわらず、防止措置がなかったとして、消費者への返金と、民事罰を課すよう求めている。ウォルマートは「必要な措置は講じてきた」として反論している。
ウォルマートは、複数の送金サービス事業者の代理店として、「Walmart2Walmart」や「Walmart2World」といった自社ブランドで送金サービスを来店者に提供している。店頭での送金取り扱い件数は年間で数千万件に上り、ウォルマート従業員が対応している。
ウォルマートが代理店を務める送金サービス事業者、マネーグラムやウエスタンユニオン、リアらが管理するデータベースによると、2013年から2018年にかけ、詐欺の苦情の対象となった1億9700万ドル以上の送金がウォルマートのサービスで行われていた。
送金サービスは、米国税庁(内国歳入庁)や親族を装う「なりすまし詐欺」や、懸賞詐欺などテレマーケティング詐欺に悪用されているケースがある。FTCは詐欺にあった消費者を保護しなかったとして、マネーグラムやウエスタンユニオンら送金サービス事業者にも訴訟を起こしている。
ウォルマートはこれまで、「数十万件、数億ドル規模の不正な取引を阻止してきた」として、反論。「2021年には不正のおそれがある送金は、1万件あたり2件以下になった」としている。「銀行口座などを持たない消費者に、安価に利用できる送金サービスを提供することで、市場競争にもいい影響をもたらしてきた」と主張するほか、「FTC委員に必要な面談ができていない。手続きとしても問題がある」とした。
FTCによると、ウォルマートの従業員向けマニュアルでは「詐欺の疑いがあっても、送金を完了せよ」との記載があるほか、従業員が詐欺師からチップを受け取るなどして、入金の受け取りに加担していたケースもあるという。