ロゴ一新し、ロングセラー商品を改名 ユーハイム100周年のリブランディング

『広報会議』では、長寿企業から学ぶ企画「周年イヤーの迎え方」を連載しています。今回は、2022年に日本初出店から100周年を迎えたユーハイムの取り組みをレポート。同時に行われた周年事業とリブランディングの裏側を紹介します。
※本記事は『広報会議』2022年8月号の転載記事です。

ユーハイム 1922年日本初出店
1909年にドイツ人のカール・ユーハイムが創業した老舗洋菓子メーカー。1969年から、材料に含まれる食品添加物を取り除くための取り組み「純正自然」を開始し、2020年3月に20年越しの念願だったチョコレートコーティングの純正自然化を実現。現在は、百貨店を中心に国内外で260店以上を展開している。従業員数は519人(2021年4月1日時点)。

日本の洋菓子の黎明期を築いたユーハイムが、2022年3月に日本初出店から100周年を迎えた。同社では、創業者であるカール・ユーハイムが日本への永住を決心し、1922年3月に横浜で「E・ユーハイム」を開いたのち、関東大震災を経て神戸に移り「ユーハイム」神戸1 号店として再興する1923年11月までの「20カ月」を周年期間としている。

100回目の誕生日会をイメージしたイベント会場には、バースデーケーキを模した装飾が施された。

店頭でのつながりをテーマに

周年事業のメインテーマは「店頭(現場)でのつながり」。それを体現しているのが100周年事業のイベント「ハッピーバースデートゥーユーハイム」だ。ユーハイムの100歳の誕生日会に顧客を招待するというコンセプトのもと、イベント実施エリアの店舗では開催の1カ月前から1080円以上の購入者にイベントの招待状と、オリジナルデザインのノベルテ
ィ(ハンカチ)を配布。期間中にハンカチを身につけて来店すると、ハズレなしの福引「ユーハイム100周年ガラポン」に参加できる仕組み。

「ハッピーバースデートゥーユーハイム」の招待状とノベルティのハンカチ。どちらもユーハイムチェックを活かしたデザインとなっている。

福引の商品には、「オーダーメイドケーキ」や「パーティーバウム」など、同社ならではのアイテムを提供した。「ユーハイムは100年にわたりお客さまに育てていただきました。不特定多数の方へのPRも重要ですが、当社の財産は、店頭におけるお客さまとのやり取りですので、店頭配布という手法を選びました」とその思いを語る本社企画本部の豊慎二氏。

神戸阪急でのイベント初日にはオープン前から会場に並ぶ人の列ができ、神戸と広島の会場では期間中におよそ1800人がガラポンに参加した。
「わざわざハンカチを身につけてまで来てくれる方はいるのだろうか……という不安もありましたが、列に並ぶお客さまの姿に、あらためて地域の方々に支えられてきたことを感じました」。

支店の枠を超えて一致団結

通常の催事は開催店舗のメンバーで完結させるが、周年イベントでは関西エリアの店長たちが運営に携わり、各支社の若手職人が店頭に立って実演を行った。

「現場のつながり」というテーマに基づいて各支社から人を送り合い、応援し合うことで、現場の士気が高まった。「コロナ禍の開催となりましたが、イベントを機に集まった店長は再会を喜び合い、店頭に立った職人がSNSで自分の実演動画が拡散されたのを機にモチベーションが高まるなど、現場が再び団結するスタートの場となりました」。

関西エリアでのイベント開催を知った東京の店長から「こちらでも開催してほしい」という声があり、秋以降は全国の主要百貨店での開催も決まっている。

同時に、「懐かしいけれど新しい」というコンセプトでのリブランディングも実施。新たなロゴは、創業者がバタークリームで綴った文字をベースにしたもの。

また、創業当時から使われていた3色のカラーリングも「ユーハイムチェック」としてよみがえらせた。これは、「純正材料(白):Pure」、「無添製造(赤):Passion」、「職人の系譜(黒):Pride」というユーハイムが大切にする3つの要素をしっかりと織り合わせることで、純正自然のものづくりを行うことを表している。
 
新たなロゴもユーハイムチェックも、HAKUHODO DESIGNの代表取締役社長でありアートディレクターの永井一史氏が手がけた。公式サイトや100周年念イベントの招待状やノベルティのハンカチなどに用いられている。

「当社のコア層は50~60代ですが、周年イベント限定でユーハイムチェック柄のエコバッグを作成したところ、20~30代の方に購入いただけるという新たな経験につながっています」。

3月7日にリニューアルしたユーハイム神戸元町本店。レストランだった地下では、同社の100年の歴史が分かる展示室として創業当時の様子が描かれた貴重な資料の複製などが6月末まで展示された。

周年イベントを経て、社内では次の100年へ向けた意識の変革が浸透しつつあるという。「我々は“菓子屋” です。次の100年に向けて、『我々世代のお菓子を考え、つくり売っていこう』という思いが社員の中でも高まっているように感じます」と豊氏。老舗菓子店の矜持を胸に、店頭での接客を通じて100年分の感謝を伝え、ここから始まる100年を顧客と共有し続けていく。

プロジェクトチームの中心を担った本社企画本部の豊 慎二氏。「私も新入社員の頃、大型催事で職人の技を目の当たりにしてモチベーションが上がりました」。

Pick up!
創業からのロングセラーを改名し、さらに進化
 
創業当時から販売している「フランクフルタークランツ」は、ドイツのケーキをアレンジしたユーハイム独自のケーキ。そこで、商品名を「ユーハイムクランツ」へと変更し、表面にまぶすアーモンドシュガーも改良を重ねて進化させた。100周年イベントでは職人が実演製作したできたてを提供し、連日完売となった。

「わが社の周年事業・プロジェクトを広報会議で取り上げてほしい!」
という担当者の皆さま、ぜひ情報をお寄せください。
kouhou@sendenkaigi.co.jp

 

広報会議2022年8月号

 
【特集1】
変化に対応する企業ブランド構築
大切なのは一貫性ある行動

 
GUIDE1 今こそ企業ブランディングが欠かせない理由
広報に期待される役割とは
森門教尊(博報堂コンサルティング パートナー)
 
GUIDE2 インターナル・ブランディングのポイント
ブランド価値を社内から高める
見える化・自分ごと化、そして行動化へ
岡田裕幸(B.I.Pジャパン 代表取締役)
 
CASE1 ヤンマーホールディングス
リブランディングで未来志向の企業へ刷新
時代に合わせたブラッシュアップが鍵
 
CASE2 J-オイルミルズ
コミュニケーションブランドに価値を貯める
理念に沿った商品が広報の発信強化に
 
CASE3 太陽ホールディングス
社内外の声を集約し“軸”をつくる
広報チームはブランドの体現者であれ
 
COLUMN
値上げ時代に問われる企業ブランディング
 
レポート
社会における存在価値を伝え、企業ブランドを向上させる
コーポレートブランディングカンファレンス
 
CASE STUDY
DIC
 
REPORT
揚羽/テテマーチ/たきコーポレーション たき工房/産業編集センター
 

【特集2】ファンを増やし、選ばれる存在になるには
大学ブランディング最前線

 
社会起業家の育成を目指す、循環型の広報戦略
立命館大学
 
企業連携で発見した大学らしさ、広報に活かす
高崎商科大学
 
小規模大学のメリットを活かした逆転の発想
宮城大学
 
CASE
別府大学・別府大学短期大学院/大阪経済大学
ものつくり大学/日本大学 三軒茶屋キャンパス
 
など
 


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