ロックウェーブ 企画開発チーム マネージャー
黒河 宏太郎氏
2014年~ マーケティング・セールスチームにて約100社の自社EC構築・運用をサポート。2017年~企画開発チームにてaiship機能追加企画設計、カスタマイズ要件定義を実施。2019年よりaishipシリーズのプロダクトマネージャー。
ECにおいてギフト市場は非常に活況だ。矢野経済研究所の「ギフト市場に関する調査(2021年)」によると、2020年の国内ギフト市場規模は小売金額ベースで、前年比92.5%の9兆8905億円、2021年は同102.2%の10兆1040億円を見込んでいるという(図1)。
カジュアルギフトの伸長
こうした状況について、ロックウ ェーブの企画開発チーム マネージ ャーの黒河宏太郎氏は市場の変化について次のように話す。
「ギフトの市場規模は、一見すると大きな成長のない市場のようにも見えます。コロナ禍の影響で2020年に一時的に落ち込み、その後徐々に回復の兆しを見せていますが、今のところ大きな伸びが見られる、というわけではありません。しかし、実はギフト市場の内情は、この数値から読み取れない部分で近年大きく変化しています。ギフト市場の中でも、お中元とお歳暮に限った市場規模は2020年で前年比96.7%の1兆5680億円、2021年は同99.4%の1兆5600億円を見込んでいます(矢野経済研究所調べ)。これまでギフト市場では、お中元やお歳暮、冠婚葬祭の返礼といった儀礼的なフォーマルギフトが支えてきましたが、この分野は縮小傾向にあります。しかし、ギフト市場全体が縮小していない要因としては、カジュアルギフト市場の成長にあります」。
カジュアルギフトとは、家族や友達など、親しい人や大切な人に個人間で贈るプレゼントを指す。手軽に贈れるギフトであることから、ECサイトを利用することで、思い立った時にすぐに贈ることができる。また、 SNSとの相性が良く、コロナ禍の時代背景も重なり、気軽に人と会いにくい状態が続いたことから、新たなコミ ュニケーション手段にもなり得ることで、ますます注目を集めている。
他にも、緊急事態宣言下で気軽に会えない状況の中、相手にギフトを贈ることでコミュニケーションを図るケースや、会食でのお祝いが贈り物に替わるケースが目立っている。久しく「モノからコトへ」と言われてきたが、こうした状況下ではコトができない代わりのモノとしてのギフトニーズが高まることとなった。
注目されるソーシャルギフト
また、Z世代では記念日はもちろん、日常のちょっとしたお礼やコミ ュニケーションとしてプチギフトを贈るケースも多い。特にLINEギフトをはじめとするソーシャルギフトが登場して以降、この流れは加速している。ソーシャルギフトとは、住所や電話番号を知らない相手に対し、 LINEやFacebook、Instagram、Twitterなどの各種SNSのメッセージ機能、あるいはメールで相手に商品を贈ることができるサービスだ。 LINEによると、LINEギフトの2021年における年間総流通額は前年比330%を達成、2021年12月に累計ユ ーザー数が2,000万人を突破したと公表されている。
この伸長の背景には、従来のEC形態では届け先の住所が分からなければ注文できなかったものが、相手方の住所を確認することなく商品を購入し、発送する(=受取人が受取場所を指定する)ことができる点にある。個人情報の保護や防犯の目的から住所を教えなかったり、リアルでつながっている知人でも、そもそも教える機会がなかったり、わざわざ聞くのも抵抗があったりと、お互い住所を知らないケースは多い。三越伊勢丹や髙島屋など大手デパートの間でも、ソーシャルギフトは市場の拡大が期待されるとして導入の動きが広がっている。
ソーシャルギフトへの対応
ギフト専用のショッピングカートASPとして「aishipGIFT」を提供しているロックウェーブでも、ソーシ ャルギフトに対応する機能を実装した(図2)。
これにより無料で容易に自社ECサイトでもソーシャルギフト対応が実現する。「多くの企業から、ソーシャルギフトについてのお問い合わせをいただいております。現在はまだソーシャルギフトが未実装のECサイトも多く、対応していること自体がブランド力となります。また、この機会に年齢が若いユーザ ーへの認知を取りたいというお話も聞きます」と黒河氏は話す。
「今まで単価が安いからギフトに向かない」と思われていた商品も、少額だからこそ商品を気軽に贈りたいというカジュアルギフトのニーズに合ってくる。今後新しくギフトECに参入する企業も増えるだろう。その際、ソーシャルギフトは非常に有望な形態になるのではないだろうか。
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