こんにちは、電通zeroのクリエーティブ・ディレクター 嶋野裕介です。
最近だと、BOSSとウマ娘のコラボ広告や、 THE STRONGとスト2のコラボゲームを担当しています。
前回のレポートでは、カンヌライオンズで「Creative Marketer of the Year」に輝いたマーケティングカンパニーとして、主に「バドワイザー」「コロナビール」などのブランドを持つAB InBev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)の事例をご紹介しました。
第2弾となる今回は一転し、見つけたときに個人的に「楽しかった」「ワクワクした」事例をピックアップします。
シンプルに楽しかった、筆者が注目した4事例
つい前回は小難しく、キレイにまとめてしまったことを反省し、今回はシンプルに事例をご紹介します。
あえて細かな説明はなしでご紹介するので(決してめんどくさがってる訳ではないはずです……)、皆さんのご感想や「楽しかった」事例があれば、アドタイさん宛にでも直接でもメッセージをお聞かせいただけると嬉しいです。
今年のカンヌは楽しくもあり、考えさせられました。
A. バーガーキング 「Nonartificial Mexico」
(Outdoor部門 ゴールド)
めちゃくちゃ好きでした。写真の勝利です。アートディレクターの皆さん、ぜひご覧になってください(バーガーキング、こういうのもできるんだ……!)。
B. Prime Video for Laura Pausini 「STARAOKE」
(OutdoorやMedia部門でシルバー 他)
やっていることがバカでデカくていいです。アワードムービーがずるいですが、大きいから許せてしまう。でかいは正義かもです。
C. LEICA 「Soldier」
(Print & Publishing 部門でシルバー)
広告偏差値が高すぎて初見では全然わからなかったのですが、同じ会社でカメラに強い尾上(永晃)くんに教えてもらいました。これらの意味が全てわかる人は、写真のプロだなという感じがします。
D. Change the Ref 「The Lost Class」
(FilmやPR部門でゴールド 他)
実は1年前からこの仕事についてはいろんな人と議論をしていました。広告技術については素晴らしいものと感じる一方で、多くの日本人と同じように、私も「やり方」についてネガティブに思っていました。
ただ、現地で多くのクリエーターと議論する中で、様々な視点を学び、都度○×の価値基準を揺さぶられました。自分に見えていない世界があることを知ることもできたし、広告業界に関係なく、人間としての覚悟を問われる気がしました。
私は、この仕事を通じて、「広告」と「コミュニケーション」の違いや、「現代における主語の役割」を感じました。 ぜひ、皆さんの意見を聞いてみたいです。
SDGs/環境系ソリューションの次のステップ
もう1つ、ぜひ皆さんに知っておいてもらいたい潮流です。
国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、アパレル業界は石油産業に次いで、世界2位の汚染産業と認定されています。そのせいもあり、ファッション分野における「SDGs・環境系」が今年は大きな受賞群をつくっていました。
たとえば、
Dole社の「Piñatex 」
(Design部門 グランプリなど)
パイナップルの収穫時に残る大量の葉っぱは、それ自体がゴミとなるだけではなく、環境負荷を生む存在。素材開発のベンチャーと提携して、それらを新しい繊維として再活用した取り組みです。しかもそれ自体が多くのファッションブランドに購入され、収益を生み出している点が評価されました。
それ以外にも、CO2を吸収する素材である「CO2AT」(Design部門 ゴールド)や、
素材系ベンチャーへの投資をH&Mがファッションカタログ風に促した「THE BILLION DOLLAR COLLECTION」(Design部門 ゴールド)も。
これらを見て感じたのは、世界の環境対策は日本より1レイヤー上に(文字通り“川上”へ)いこうとしている、ということです。これまでの環境問題へのアプローチは、今ある素材を100%リサイクルしたり、CO2排出量(+)から吸収・除去量(−)を差し引いてゼロにする「カーボンニュートラル(海外だとNet Zero)」が主流でした。それだけでも相当すごいことですし、企業各社の取り組みも相当大変だと思います。しかし上記のような事例を見ると、「原材料や素材」のところから改善する「カーボンマイナス」という取り組みが生まれつつあるのかもです。
(めちゃくちゃ大変だけど、実現したらすごい・・・!)
先日、日本のとある企業のCMが話題になった際に「CMはいいけど、この商品自体の環境負荷はどうなのか?」というツイートが相当数上がっていたのが気になっていました。環境問題を教科書で学んだ世代がどんどん増えている現代では、プロダクトに対してそういう見方も生まれるということを、頭の片隅に残しておくべきだとかもしれません。
ということで、今年のレポートは以上となります。
最後に、若い企画者へのアドバイスとして、カンヌに限らず広告の勉強はぜひ複数&全員の意見を共有し合う形でやることをお勧めします。私も会社の研修でカンヌ事例を使ったものを開催していますが、複数でやるときの学びの深さは一人でやるときとは別格です。
学びとはもちろん、個々人の成長が目的。でもひとりでやっても成長には限界がある。オンラインのスプレッドシートやチャットを使って、学びのスタイル自体もどんどんクリエーティブにできると最近感じています。
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