インバウンド再開に向け、準備しておくこと SNS発信の元となる公式サイトの多言語化

「サイトの翻訳に手が回らない」。そんな広報担当者に向け、サイト多言語化の専門家が、ステークホルダーの満足度を高める翻訳のコツを解説します。

 

インタビュー /上森久之 Wovn Technologies 取締役副社長 COO

うえもり・ひさゆき デロイト トーマツにて、新規事業/オープンイノベーションのコンサルティング、会計監査、M&A関連業務などに従事。公認会計士登録。2016年、Wovn Technologies COOに就任。2019年より取締役副社長。

 

コロナ禍で停止していた訪日外国人の受け入れが2022年6月、2年ぶりに再開しました。訪日外国人といえば、旅行消費額がコロナ前の2019年、4兆8000億円に達していました。そして本年、世界経済フォーラムが発表した旅行・観光開発指数のランキングによれば、日本が初めて1位に。さらには円安の影響も大きく、インバウンド需要の復活に期待をかけている読者の方もいると思います。

では、私たちは今どのような準備をしておけばいいのでしょうか。

リンクの飛び先は多言語サイト?

観光客への情報伝達手段として、SNSが活用されていますが、ここで注目しておきたいのは、SNSにリンクが張られることの多い、公式サイトについてです。

せっかく海外ユーザーが投稿に関心を寄せてくれたとしても、リンクされた公式サイトが多言語化されていないと、クリック数やシェア率が下がってしまう原因になります。

SNS投稿でサイトのURLを記載すると、サイトのタイトルや説明文が自動的に生成されます。この情報が、ユーザーの母国語で表示されると、さらに詳しい情報にたどり着けて理解も深まりますし、ユーザー同士でのシェアもしやすくなるというわけです(図1)。

その結果、海外ユーザー同士が、SNSで情報をシェアしたことがきっかけで日本に興味を持ち、来日につながることも期待できます。

図1 母国語で読めるほうがクリック・シェアされやすい

ECサイトで訪日客の接客を

また、サイトが多言語化されていれば、接客にも活用できます。

例えばSHIBUYA109。店員のSNS投稿を見て「この方に会いたい」と、台湾の若い女性をはじめ、海外から買い物のために来日した顧客が集まります。外国語が堪能でない店員も、タブレット端末で、多言語化(英語、中国語、韓国語)されたECサイトを開けば、素材や手入れ方法などを指差しで説明することができます。SNSを機にせっかく来店してもらっても、店舗のPOPや接客が外国語で十分に対応できていないという場合に、サイトを「指差し説明ができるアイテム」にする、という方法があるのです。

誤訳で機会損失にも

海外の熱心なファンは、公式サイトが日本語だけだったとしても、自身で翻訳ツールやアプリを使い、何とか内容を理解しようとします。しかし、ここで思わぬ不利益をこうむることもあります。

例えばNFTの会員サイトで「退会」というボタンをブラウザ翻訳ツールで英語にすると「withdrawal」となりました。この単語には「退会する」だけでなく実は「お金を引き出す」という意味があります。そのためボタン表記に従って「withdrawal(お金を引き出す)」のつもりが、意図せず退会していた、こうしたことが実際に起きています。

特に注意したほうがいいのは、クリックを促すような「ボタン」の類です。単語単位の機械翻訳は、意図せず極端な意味になることもあり、サイト上のどの位置で表現される単語なのか、どんな行動につながるのか、と全体の流れを見ながら翻訳していく必要があります。

戻る、進む、追加する、削除するなど、アクションを促すボタンは、誤訳により誤ったアクションを引き起こすことがあるため、注意が必要です。

例えば私たち日本人が英語サイトで商品を注文しようとフォームに入力するとします。その時、最終行に「submit order」「clear order」という2つのボタンが出てきたので、ブラウザ翻訳ツールで「clear order」を日本語に訳してみると「明確な注文」となりました。このボタンを押すと、どうなるでしょうか。注文できたと思いきや、入力した情報が全て消去(clear)されてしまい、ユーザーはがっかりしてしまう、というわけです。

このように、ユーザーが自ら翻訳した誤訳による不利益を防ぐためにも、公式サイトの多言語化の重要性は高まっています。

コロナ前と欲しい情報は違う

さて、コロナ前と比べ、公式サイトでの情報発信も、それに対するユーザー側の見方もだいぶ変わってきました(図2)。そのため、発信の仕方にも注意が必要です。

例えばユーザーは、感染対策、安心・安全に関わる情報を欲するようになりました。「マスクを着けての入店をお願いします」ということを通知しておく、といったこともあるでしょう。

また、コロナ禍で営業時間が変動的になりました。これも観光客が公式サイトで入念に確認する項目の一つです。せっかく訪問したのに休業日だった時ほど残念なことはありません。しかし曜日を意味する「月~金」の表記が、翻訳ツールでは「Month-Gold」と直訳されることもあるので、これだけでは訪日外国人が混乱してしまいます。誤訳を防ぐ必要のある最低限の情報だけでも、企業側で翻訳しておきたいものです。

さらには、店内の混雑を避けるため、サイト上で来店予約や事前のチケット購入をしてから訪問することも増えています。こうした点は2年前との違いです。

コロナ禍で情報が変動しやすいタイミングでは、印刷物よりも更新頻度が高い公式サイトに信頼を寄せやすくなります。今一度、訪日外国人の期待どおりの情報が誤解なく伝わる内容になっているか、見直してみてください。

図2 インバウンド、コロナ前との違い

 

<Information>

Wovn Technologiesは、追加のシステム開発が不要のサイト多言語化サービスを提供する。サイト更新を検知し自動翻訳、デザイン変更もできる仕組み。世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにすることを目指す。

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