クラシコム、3年LTVは1.9万円 上場後も世界観重視を堅持

広告事業は9.4%増の2.99億円見込む

東証グロースに8月5日上場したクラシコムは、同日に開いた記者会見で、品揃えやカテゴリーの拡充など、今後の成長戦略について紹介した。事業自体の拡大や国外への進出にも含みを持たせた。法人向けの広告事業は、「やみくもに増やせるものでない」と慎重さを見せた。

2022年7月期の売上高は前年比13.6%増の51億4900万円の予想。主力のeコマース(D2Cドメイン)は同比13.9%増の48億5000万円、広告記事掲載などのブランドソリューションドメインは同比9.4%増の2億9900万円の見込み。21年8月1日〜22年4月30日までの累計は、D2Cドメインが36億3771万円、ブランドソリューションドメインが2億2625万円だった。

D2Cドメインでは、購入者数と購入回数の増加を促すため、商品ラインナップや取り扱いカテゴリーを拡充する。現在のアパレルやインテリア、生活日用品、キッチン雑貨に加え、アンダーウエアや寝具、家具などの扱いを増やす。

21年7月期時点の会員数(退会済み除く)は42万1571人で、うち同年度の新規会員数は9万9503人。比率では23.6%を新規が占める。会員数の20年度からの伸長率は30.8%増で、新規会員数は同比16.4%増だった。年間購入者数は、21年7月期は同比23.4%増の18万2144人。会員数に占める割合は43.2%で、前期から2.6ポイント低下した。

D2Cドメインを支えるのは顧客生涯価値(LTV)の高さで、2021円7月期の3年LTV(18年7月期に初購入後36カ月間の平均顧客単価に売上総利益率を乗じた値)は約1万9000円。14年7月からの3年LTVは1万4986円で、18年7月期までの平均成長率は5.7%だった。

会見後に撮影に応じる代表取締役を務める青木耕平氏と、取締役執行役員の佐藤友子氏(同右)。クラシコムは両氏が共同で創業した

青木耕平代表取締役は5日、東京証券取引所で開いた記者会見で、高いLTVの達成要因について「コンテンツの強さにあると考えている」と話した。

「一般的なECサイトでは、商品に興味があるか、あるいは買い物の予定があってサイトへ訪問するため、LTVを高めるには、新商品を次々に出すことで誘引を図ったり、CRM(顧客関係マネジメント)の一環として、クーポンなどの価格インセンティブを付けたりすることが必要になってくる。一方、当社の運営する『北欧、暮らしの道具店』では、特に買い物の予定がなくても、SNSなどの発信のほか、記事や動画、ラジオといったコンテンツに接触する方が多く、特に買い物の予定がなくてもブランド接触があり、接触のひとつとして『買い物』がある」(青木代表取締役)

新事業や国外展開についてもコンテンツを中心に据える。

「たとえば動画がある国で大きな反響を得られたとすれば、その国に進出することも考えられるかもしれない。せっかく見ていただけているのに、それ以上何も提供できていない、ということがあれば問題。この方針は国内でも同様で、仮に男性のアクセスが増えているのに商品が少ないとなれば、増やすこともあり得る。コンテンツと、その根底にある〈世界観〉に共感して集まってくるお客さまに、何が提示できるかをこだわりなく考えていきたい」(同)

一方、広告事業となるブランドソリューションドメインは、「純粋なクリエイティブビジネスであり、やみくもには増やしていかない。仕組み上も、短期的に拡大する可能性はさほど大きくない」とする考えを示した。

「通常のコンテンツ以上の工数をかけ、喜ばれるものにしている自負はある。スポンサードタグを付けているが、それ以外の点ではほとんど通常の記事と差を感じないものになっているのではないか。その点では増やすことによる顧客の離反リスクは低いとみている」(同)

2021年6月に公開したクラシコム制作の映画『青葉家のテーブル』がサントリーのテレビCMの1シーンに採用されるなど、波及効果も出てきた。

「ブランドソリューションドメインは、ナショナルクライアントととの接点が作れる点も大きい。食品メーカーとのコラボレーションで、当社のロゴが入ったパッケージが全国のスーパーに並ぶなど、事業売り上げ以上の価値があると考えている」(同)


 

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