※本記事は『広報会議』2022年9月号の転載記事です。
身近な材料で簡単にできる料理を魅力的な写真とともに日々投稿し、Twitterは120万、Instagramでは126万フォロワーにのぼる、料理インフルエンサー・山本ゆり氏。彼女の “食べ物” のおいしさや魅力を切り取った、拡散につながる投稿にはどのようなポイントがあるのだろうか。
存在感が引き立つ試行錯誤
「私は撮影に関して専門的な技術や知識があるわけではありません。道具も揃えたいと思いつつも、今は残念ながらiphone7のみ……。写真に関して専門的に語れるわけではありませんが、日々の投稿の中では、きれいな写真より、いかに『おいしそう』で『簡単につくれるか』が伝わる写真を心がけています」と山本氏。
まず「おいしそう」の部分。「いくら味に自信がある料理でも、SNS上では匂いや味を感じてもらうことはできません。唯一の伝える手段である写真で『おいしそう』が引き出せないと意味がないと思っています」。
具体的には、画角・光の具合・色味・小物などで工夫ができるという。画角によって、料理の映り方は変わってくる。アップ・俯瞰・左右、また断を見せるパターンなどを、様々な光の当て方で複数撮影し、一番「おいしそう」な角度を探っていく。「炒め物などべちゃっとしたものであれば俯瞰、高さがある料理は真横から、など工夫できます。また、料理は “存在感” が重要です。器などを替えて印象を変えて、その料理が一番引き立つ形を探します」。普段よりあえて浅めや小さめな皿を選び、詰めることで、高さやインパクトが出る。皿の印象は、肉眼で見たときと、写真に撮って見たときとでは異なるため、写真の中で判断する必要があるという。
料理の色味は、カラフルが基本でありつつ、時にあえて単色の料理で存在感を打ち出した方が「おいしそう」に見えることも。「例えば、『照り照り豚丼』(投稿①)では、ごはんとお肉だけ。茶色一色ではありましたが、おいしそうに見えたポイントはお肉の “ツヤ感” です。実際何度も撮影してきて乾いてしまった場合は、タレなどの水分を追加することもあります」。地味な色味やモノであっても、彩度や輝きが足されることで印象はがらりと変わる。また、器やランチョンマット、紙ナプキンなどで、料理では出せない足りない色味を足すことも多いという。
試したくなる欲を引き出す
次に「簡単につくれるか」の部分。これは特にTwitterとの相性がよいという。「SNSごとにかなり読者層は変わると感じています。ブログやInstagramの投稿もしているのですが、Twitterの場合は、若い男性や中年男性を含め、不特定多数の方が見てくれていますね。もちろん、私の読者層自体が『簡単でおいしくつくれるレシピ』を求める傾向にはあるのですが、バズる(拡散される)料理となると、Twitterでは特に、一目見た瞬間にパッとつくれるようなものが伸びる印象です」。
最近投稿した「6 Pチーズのいももち」(投稿②)は現在、4.4万リツイート、29万超のいいねがつくなど反響を呼んでいる。「この投稿では、雪印メグミルクの6 Pチーズのパッケージも映り込ませました。視覚的に商品のイメージがついたり、少ない材料ですぐつくれると一目で分かるのがポイントだと思います」。
また、「工程が分かりやすい」「見ただけでつくり方が簡単に分かる」ことも重要。「例えば、『ナスと豚バラを並べてチンする料理』(投稿③)では、加熱前の状態と加熱後の完成品の2枚を投稿。この写真通りに並べてしまえばあとはチンするだけ、という手軽さを表現しました」。
山本氏は、完成した料理の写真だけでなく、材料をすべて上から撮影したりレシピのポイントになる部分、全体の写真だけだと伝わりにくい部分を撮影。複数の写真を一緒に投稿している。こういった生活者に寄り添った補足情報も、「つくってみよう」「試してみたい」というハードルを一気に下げることにつながっているのだろう。
「おいしそう(食べてみたい)」「つくってみたい(私でもつくれそう)」という、生活者の “欲” を引き出せる写真が、拡散につながるポイントになりそうだ。
Pick up! 山本さんの撮影法
写真はすべてiPhone7で撮影。光やレフ版も使っておらず自然光で撮影している。昼間の光が入りすぎる時間よりは、朝か14時~15時ごろがベストだという。「天候に合わせて撮影するタイミングを毎日うかがっていますね(笑)」。加工はInstagramに付いている機能を使って、明度・彩度を調整。
山本ゆり(やまもと・ゆり)
料理コラムニスト/インフルエンサー。どこにでもある材料で誰でもできるレシピをブログやSNSで紹介している。著書 『syunkon カフェごはん』シリーズ(宝島社)は累計700万部を突破。(2022年8月現在)
広報会議2022年9月号
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