WWFは1961年にスイスで設立され、100カ国以上で活動している環境保全団体だ。サステナブルな社会の実現を目指し、様々な活動を展開している。
WWFジャパンは1971年に設立された。ブランドコミュニケーション室 室長の渡辺 友則氏に、『社会課題解決ための情報連鎖を生むプランニング力養成研修』を実施した背景と修了後の成果を聞いた。
——これまでのキャリアについてお聞かせください。
大学在学中は国際関係学、コミュニケーション学を専攻していました。卒業後は大手広告会社に入社し、クライアント企業の広報、マーケティング、プロモーション業務を経て、クリエイティブ職に異動し、コピーライター兼CMプランナーとして活動していました。
その後、子ども支援専門の国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」コミュニケーションズ部部長に就任して、広報、資金調達を行い事業規模拡大に貢献しました。
現在は「WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)」で、ブランドコミュニケーション室の10人のメンバーとともに、地球環境保全の意識変容、行動変容の推進に取り組んでいます。
——WWFジャパンではどんなコミュニケーション活動をされていますか。
環境保全をめぐる意識変容や行動変容を促すことを目的に、PESO(Paid、Earned、Shared、Ownedの各メディア)にあたる広告、パブリシティ、ソーシャル、自社Webサイトなどを活用した各種キャンペーンなどのコミュニケーション活動を実施しています。
直近では、WWFジャパンが主導して「未来47景」「脱炭素列島」といった気候危機に関わるキャンペーンを実施しました。各都道府県別に気候危機を訴求したり、脱炭素に向けた目標設定をレベル分けして示したりと、多くの地元市民の方々からも、難しい話を自分ごと化できた、地元の脱炭素の取り組みを応援したい、などの声やアクションが寄せられ、変容を促す反響の大きいキャンペーンに成長しました。
——2022年6月にカスタム研修『社会課題解解決ための情報連鎖を生むプランニング力養成研修』を開催した背景は何でしたか。
環境課題は年々複雑化・高度化が進んでいます。それに伴い、課題解決のためのコミュニケーション活動の難易度も上がっています。
加えて、情報爆発といわれますが市場に流通する情報がますます多くなっています。メディアもどんどん増える一方です。
こうした状況で、効率的かつ効果的なコミュニケーションを行うためには、より精緻に「どのメディアやインフルエンサーに、どういった訴求のある情報を届けると、パブリシティにつながるのか」、それが起点となって「広さと深さの両方において有効な拡散がされるか」という情報連鎖をプランニングすることが重要だと感じています。
メンバーがこうした変化に適うコミュニケーション活動ができるよう、情報流通構造を学び、単に情報発信するのではなく、事前に仮説を設計したうえで効率的・効果的な発信ができるようになることを目的とした研修を実施したいと考えました。
——宣伝会議を選ばれたポイントは何でしたか。
「情報連鎖を生むプランニング」というテーマに精通し、実践に生かせる研修として高い実績を持っていたことが決め手でした。
その上で研修内容や実施の仕組みの打ち合わせで、3つのことを感じました。
- 私たちからのオリエンテーションをよく聞いてもらい、ワンチームになって準備することができたこと
- 内部で分かる、本を読んで分かる、人に聞いて分かる、公開型のセミナーの受講で分かる範囲を超えた内容をとしたい、という要望に応えた研修内容が企画されたこと
- 事前の打ち合せで、メンバーが学んだ内容を実践できるようになることが最大限配慮された設計が組まれたこと
こうしたことを踏まえ、企画から実施にあたって信頼関係が構築できたと感じています。
——渡辺さんが研修で学んで特に印象に残っていることを聞かせてください。
印象に残っていることばかりですが、その中でも「メディアtoメディアの構造説明」として、ヤフートピックスを例に、レガシーメディアの重要性を学び直せたことを挙げたいと思います。
内容自体は何となく知っておりイメージはあったものの、多くの事例とともに解説されることで、「どの視点で、情報流通構造を考えて、実現するのか」ということが再整理できました。
環境問題に関心がある記者だけにフォーカスしすぎない方が良いことにも気付きました。
もう一つ強く印象に残っているのは、「打率を上げるには、量より質」という発想です。パブリックリレーションズの世界の教訓として、「メディアの人には、何万を超える情報が送られているから、まずはこちらも量を送りましょう」という過去の正攻法があります。しかし、情報流通構造が変化している昨今、やみくもに量を追求するよりも、1つの案件を精緻に計画し、今何が世の中のニュースとなるかを突き詰め、発信する情報の質を高める方が、メディアに載る、反響を呼ぶといった打率の向上につながることが体感として分かりました。
他にも多くありましたが、翌日よりすぐに実行できるスキルセットとマインドセットの両方をバランスよく、実践的なアドバイスをいただけました。
——当日は、グループワークや質疑応答で、メンバーの活発な議論が多かったと聞いています。
はい。当日は、座学、グループワーク、質疑応答の順に開催しました。座学で学びっぱなしになることを避け、学んだポイントが実践され、記憶と記録に残る設計を心掛けました。
特に、半分以上の時間をグループワークと質疑応答に充てることで、自分で考えたことをメンバーに共有したり、互いにフィードバックをすることで、より良いプランニングに発展していくコツが掴めたと感じています。
また、グループワークのお題を、実際にコミュニケーションをしているテーマから事前出題しました。そのため、各自が事前にお題について自分なりのプランニングをした状態でグループワークを進めることができ、学んだポイントを実務に直結して使える設計としたことも良かったです。
加えて、グループワークのお題に対するメンバーからの発表後、本テーマの第一線の専門家である講師から、より精緻なブラッシュアップにつながるフィードバックが得られたことも、活発な議論となった理由だと思っています。
その後の質疑応答は途切れることなく、1時間以上延長するほど白熱しました。
当日のメンバーの様子から、各自が日ごろの実務で考え発信している案件について、せっかく発信しても思ったような反響が得られていないといった課題感や、それを何とか突破したい、という気持ちを感じました。
——研修から1カ月が経過しました。実践して成果になったと感じることは何ですか。
大きくは以下の3点が挙げられます。
- スタッフ内で「情報流通構造」が共通言語化した
- 「情報流通構造」を考えることの必要性を理解し、キャンペーンプランやコミュニケーションプランにおいて必須となった。期初の各計画に組み込まれた形となった
- 具体的には、ただ発信するのではなく、メディア特性に合わせた起点メディアの検討、タイミングやメッセージの精査、研修で学んだニュースバリューのメソッドを意識した切り口の創出などをもとに、より良い成果につながる予感を覚えるプランニングできるようになった
当日のアンケートでも、満足度のスコアが高く、コメント欄で「自分ごと化できた」といったコメントが多数見られましたが、さらなる定着を目的に、学んだことを各自がまとめ直し、短時間で発表する形で振り返る機会を設けました。
また、研修実施から1カ月以内に1時間の振り返り会と内容のレビューを行い、各自が抱えているプロジェクトに対するお題を選んで個人ワークをして再度演習をしました。
そうすると、初回の研修時以上に、互いに良いところと改善点をフィードバックできるようになっていました。具体的には、今までにない視点で、起点となるメディアの選定や、どういう順番でメディアと対話するか、どのニュースバリューの要素を生かすべきか、訴求のキーワードはこう設定したほうが良いのではないか、というフィードバックができるようになっていました。
7月から新しい期が始まり、各自がこの1年でどういうイシューを、どのプランでコミュにケーションしていくのか、個人ごとに設定しているのですが、このフィードバックにおいても、上記の共通認識を持って、より効果的に対話ができるようになったと感じています。
——これから実践していきたいことをお聞かせください。
今回、インプットは十分できましたので、次はアウトプットです。各自がどのような情報連鎖を起こしていけるか、多くの挑戦と場合によっては失敗を重ね、プランニングした内容と実行した結果を分析する振り返りを幾度と行い、チームとしての社会変革につながるコミュニケーションの成功パターンを見つけ出していきます。
また、次に習得が必要なスキルの見立てもつけました。
情報が氾濫している中で、生活者の方々が振り向き、自分ごと化し、自らが行動をしようと思うものはほんの一握りと、いち生活者として感じています。
こうした状況でも生活者に到達し行動変容を促しているコミュニケーションは、しっかりとメッセージが練られており、コミュニケーションとして密度高く伝達しようとしていて、創意工夫やユーモアに溢れている、メッセージや表現だと感じています。
そのため、上記を追求しながら、次回は突破力を生み出す力、もしくはそれを生み出せる人の力を最大限発揮するクリエイティブ・ディレクション力の習得を目指していきます。
宣伝会議の「カスタム研修」でした。
宣伝会議の教育講座をベースに、カリキュラムや時間、講師などをアレンジできるカスタム研修。現場で活躍する一流の講師により、貴社のためだけのプログラムで講義が展開されることで、全員でより目の前の課題解決に向かうことができます。
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株式会社宣伝会議 教育事業部
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