従業員満足度がDXへの入り口 顧客体験起点で店舗DXを考える

顧客体験(CX)と従業員満足度(EX)は密接に関係している。「店舗DX」を推進するに際しても、EXについて考えることは非常に重要だ。「店舗DX」におけるCXとEXの関係について電通プロモーションプラスの伊東英男氏に話を聞いた。

※本記事は、2022年8月1日発売の『販促会議』2022年9月号の転載記事です。

電通プロモーションプラス
リテール&コマース事業部
リテールDXプランニング部
伊東英男氏

デジタル化が進展し、生活者が常時スマホに接続する昨今。皆がデジタルサービスの利便性の高さを実感しています。高度情報社会において、私たちは多様化するライフスタイルへの対応や、高感度な情報発信・店舗利用のユーザビリティ向上など、さまざまな視点において店舗利用価値を上げていかなければなりません。

その価値を上げるためには、デジタルを活用して生活者のニーズを丁寧にくみ取り、生活者の店舗利用における不安や不満を解消する必要があります。ただし、それは顧客に向けた視点だけではありません。店舗運営は、顧客・従業員の両面で成り立っているため、事業者側の「従業員」への視点も同じように重要です。店舗DXへの取り組みは、CX(顧客体験価値)向上だけではなく、EX(従業員体験)向上も含めてトータルでのプラニング・実装が必要だと考えています。

DXはどこからスタートするか

「店舗のDX化」について、本部の戦略立案も現場の従業員の方々と距離があってはいけません。従業員に対し「効率化できることはないか」「運営上の課題や改善点がないか」と掘り下げることで、今まで人手が必要であったモノやコトが整理され、DXへの取り組みにつながっていきます。また、店舗で人材が不足しているというケースも多くあります。業務を整理しDX化することにより、人員の見直しや業務負荷の低減、生産性向上にもつながっていきます。DX化を推進し、継続・定着させるためには、それを活用・運用する現場の従業員の視点はとても重要です。

販促やマーケティングなどの部門からは、明確に「DX化したい」というよりも、現在行っている店頭施策・プロモーション施策を「効率化したい」というご相談が多くあります。既存施策の負荷を減らすにはどうしたらよいかという観点で、デジタルを活用したスキームに変革、つまりは「販促のDX化」についてお話しすることが多いです。もちろんEXとCXは密接に関係しているので、店舗DXはCXとEXどちらの価値も向上させる必要があります(図表)。

図表:従業員満足度(EX)と顧客体験(CX)の関係

また、顧客体験だけに重きを置いた結果、従業員の作業が増え、施策が長続きしなかったという声もよく聞きます。逆に従業員のDX化を推進したことで作業効率が上がり、結果として顧客接点が増え、売り上げが上がるという事例もあります。そのため、まずはどのような「顧客体験」「従業員体験」を目指すのかを第一優先に考えていくことが重要です。

ここで注意すべきことは、闇雲なデジタルツールの導入です。DXは言葉の通り、デジタルツールを導入するのが目的ではなく、事業をトランスフォームさせること、つまり仕組み自体を効率的に変革させることです。本部主導でシステム導入したものの、現場ではあまり使いこなせていないというケースが多くあります。ポイントは、現場に応じたスピードや手順でデジタル要素をゆっくりと溶け込ませること。まずは、既存の顧客体験や店内業務・実施施策を丁寧に点検から取り組むことが大切だと思います。

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