中川監督の「独特な映画づくり」とは
澤本:でも、詩人の方が監督をやっていると聞くとさ、納得感あるよね。映画の印象としても“行間”が広かったじゃない?セリフとセリフの間がパーンと空いていて。それが、詩を読む時に行間がポーンと空いているニュアンスに似ているよね。「観ている人が読み取ってよ」という感じがすごくしましたね。
岸井:はい。後ろ姿をずーっとカメラで追っていくシーンだとか。あれも、台本に書いてあるト書きでは、「これは、誰目線なんだろうか?」みたいなことが書いてあるんですよ。
権八:ええ〜?(笑)
岸井:作品中、私がカメラに語りかけるシーンがあるんですけど。そこも台本では「ここで真奈は、何を言うんだろうか?」って書いてある。
一同:え〜!?
澤本:あれは、自分で考えて言ってたの?
岸井:それで、「いや。ちょっと、どういうことですか?」って。
一同:ははははは!
岸井:「中川さん、中川さん。これ、ちょっとどういうことですか?」って言ったら、「いや、何を言うんだろうな〜って、思ってさ」みたいな感じで(笑)
権八:へえ〜。
岸井:それで、「枠組みだけでもいいからください」って言って。そしたら、「そこから、真奈が言わなさそうなことだけ省いてみて」みたいな感じでペラの紙一枚を渡されて。それでああいう形になったんですけど。
権八:ほお~。
中村:見ようによっては、新手の脚本ですけどね。
岸井:そうですね。
権八:女優さんにセリフまで託されているんですね。
岸井:すごい託されていて。だから「いやいや、何を言うんですか?!」って(笑)
一同:ははははは!
澤本:内容をどこまで言っていいのか分からないんですけど。途中、地元の方々が喋り始めるじゃないですか?あれはどういう演出になっているんですか?
岸井:あれは中嶋朋子さんとゆづみちゃん以外は本当の「語り部」の方たちです。
澤本:あ~、そうなんですか?あれは中嶋さんが語り部の方にインタビューしているという?
岸井:はい、そういう設定で。後は演出なしで「いつもの感じでやってください」と。ふだんから、そういう活動をされている方々なので。
権八:うんうんうん。
澤本:そうかそうか、なるほどね。あそこがすごくリアリティがあって。最後に中学生のあの……。
岸井:新谷ゆづみちゃんが演じる。
澤本:はい。僕はあの子が出てきた時、彼女も語り部みたいな人だと思っていたんですよ。
岸井:いや、そうですよね。すごいですよね、ゆづみさんは……。
権八:そうそうそう、「あの子はどっちだろう?」って思った。
岸井:いや〜、ホントにすごくて。現場でも一発OKで。
権八:伊藤羽純(いとう はずみ)役の、新谷ゆづみさんね。
澤本:あれ、びっくりしてさ。その後もふつうにお芝居を始めちゃうじゃないですか?「あれ、これって、どこからどうなってるんだ?」って思って。
岸井:すごかったですね〜。
澤本:ねえ。妙なリアリティがそこから生まれていて。
岸井:はい。朝焼けの中で、ゆづみちゃんが歌を歌ってくれるシーンがあるんですけど。あの時はものすごく天気が悪くて。もう、「ガッシャーン」!っていうぐらいの波が来ていて。本当はもっと綺麗な澄んだ海で撮ろうと思っていたんですけど、ものすごい荒波で……。でも、それが映画になったらすごく綺麗な画で、びっくりしちゃった!(笑)
一同:ははははは!
岸井:あんな荒波の日だったのに、映画になると「凪」みたいな感じになるなんて。
中村:非常に綺麗なシーンでしたね。
岸井:はい、びっくりしました。
権八:だからか〜!真奈がゆづみちゃんに「歌を歌ってくれる?」って振った時、「え、マジ?」みたいな感じで笑ってたじゃない?(笑)「この状況で歌うの?」みたいな。
一同:ははははは!
中村:そういうことだったんだね、実は(笑)「え、今っすか?」みたいな。
権八:すごいリアクションが自然でびっくりした(笑)あれは、いいシーンでしたね〜。
〈END〉後編につづく