「デジタル時代のキャンペーンマネジメント by HCL Unica」と題し、マーケティングのアカデミックと現場での実践を縦横に駆け巡る奥谷孝司さんをモデレータに迎えた対談。エイチシーエル・ジャパンの岩田行雄氏を聞き手に、顧客データを活用した、より今日的なキャンペーンマネジメントを探ります。(本稿は、宣伝会議主催「SIMC 2022」で実施した講演の内容を再構成したものです)
本講演の内容はエイチシーエル・ジャパンのホームページ上で視聴可能です。
【登壇者】
岩田 行雄 氏
エイチシーエル・ジャパン
マーケティングソリューション シニアディレクター
奥谷 孝司 氏
オイシックス・ラ・大地
専門役員COCO(チーフ・オムニチャネル・オフィサー)
顧客時間 共同CEO/取締役
コロナ禍を経て企業はデジタルシフトできたか
奥谷:今日のトークテーマ「デジタル時代のキャンペーンマネジメントに必要なこと」を考えるにあたって、やはり見過ごせないのは、このコロナ禍を経て、企業はどれくらい顧客のデジタルシフトに対応できているか、ということです。
重要な点として、「アクティブ消費型」の消費者が増えつつあります。「アクティブ消費型」というのは、オンラインでもオフラインでも活発に買い物をする層。2020年4月、最初の緊急事態宣言が出されたときには居なかった顧客セグメントですが今は伸びている顧客セグメントです。
鏡写しになっているのが「オンライン消費型」、いわゆる巣ごもり消費で、やはり実店舗がなかなか営業できない、しづらいタイミングでは伸びるものの、経済が従来の姿を取り戻しつつある中で、次第に減ってきています。
もちろん、小売業の業態によっても異なります。2020年の緊急事態宣言前後でカード決済件数を見ると、家電量販店のようにコロナ禍以前から、オンラインとオフラインを行き来する消費者をとらえている業態もあれば、スーパーやホームセンターのように緊急事態宣言下においても購買の中心が実店舗にある業態もあります。
ただ、消費者は業態をまたいで買い物をしているわけですから、「この業界ではこれくらい、ネットでできないの?」もしくは、「この業界はネットでここまでできるんだ」と、業態間のギャップを日に日に強く感じるようになってきている、と言えるのではないかと思います。
オン・オフを行き来する顧客を把握する上で、大前提になるのが顧客のオンラインIDを企業が持つことです。そのIDは購入時だけ、あるいはデジタルプロモーション時にだけ使うものではありません。むしろ、購入前や購入後に、顧客とつながれる場を設けて、顧客を理解し、コミュニケーションを深めていく。販売チャネルだけ、広告やプロモーションだけをデジタル化するのではなく、より広い接点で、顧客とのコミュニケーションをデジタル化することが必要です。
約10年前になりますが、良品計画の在籍時に作った「MUJI passport」は、実店舗にいらっしゃるお客さまのカスタマージャーニーを、オンラインで可視化することを目的にしていました。実は、「MUJIpassport」を作る礎というか、知見のベースになったのが、「Unica(ユニカ)」でした。当時、EC顧客を抽出してセグメントするために、活用していました。
ただ、だいぶあの頃からは「Unica」も変わってきているんじゃないかなと思うので、いったん岩田さんにお返しします。
チャネル横断で顧客に応じたコミュニケーション
岩田:奥谷さんに10年前に使っていただいていたのは、「Unica Campaign」ですね。これは昔からご評価いただけていて、「Unica」の代名詞的な機能というか、精緻な顧客セグメントを作れることが強みになっています。当時からもうひとつあるのが、「Unica Interact」というものです。お客さまの行動をリアルタイムに検知して、それに対してアクションをする。これもご評価いただけている機能です。
奥谷:たとえばオンラインストアを訪問した、とか、アプリを使っている、とか、さらには実店舗に来店したといったことも、リアルタイムにデータとして取れるということですか。
岩田:そうです。さらに特定のページを訪れて、狙ったアクションをした人だけにメッセージを送るなど、特定のリアクションを取ることができます。
リアルタイムなリアクションは技術的に困難なのですが、「Unica」は能動的に情報を取り込んで、それをそのままトリガー(引き金)としてアクションを起こすことができます。たとえば「Unica Discover」は、サイト上のマウスポインタの動きを追跡して、その情報をもとにアクションを仕掛けることもできます。
カスタマージャーニーに合わせて、購買前後でコミュニケーションを図る場合、必ずしもWebサイト内ではなく、さまざまなコミュニケーションチャネルがあり得ます。そういったものと連携できることも「Unica」が得意とするところです。
たとえば、シンガポールの銀行最大手では、オンラインバンキングでログインに手間取っている顧客を検知した場合、ログイン方法を案内するために、コールセンターから電話をかける、というオペレーションを敷いています。
奥谷:銀行業界でもリアルのタッチポイントの価値は一体何か、ということが改めて考えられている中で、こうした「ネットでお困りのことはありませんか」という顧客の課題解決は、ユーザーになった後の顧客時間をケアしていて、よいですよね。オンラインとオフラインをかっちりくっつけながら、コミュニケーションできるということですね。
岩田:もうひとつ、事業者として販売したいものと、それに見合った顧客をマッチングさせる機能もあります。事業者としてはときに、在庫を処分したいというケースが出てくると思います。そうした商品と、購買履歴やアンケート、お気に入り登録などの情報をもとに、お客さまとマッチングさせる、というものです。
それだけではなくて、販売の仕方もカスタマイズできる、という点があります。必ずしもスポットでの購入ではなく、サブスクリプションモデルにすることも可能です。コミュニケーションも、ソーシャルメディアや先ほども出たコールセンターなど、さまざまなチャネルを駆使しながら、コンバージョンポイントへ誘導する、というものになっています。
シナリオを作成するのも操作上かなり簡便になっている上、ダイレクトメールを送るなど、オフラインのタッチポイントの連携がしやすくなっていたり、シナリオ同士を連携させやすかったりというのも特徴的です。
顧客目線で情報とコミュニケーションをとどける
奥谷:顧客が迷ったり不安を抱いたりしているところ、場合によってはまだ気づいていないタイミングで、かゆいところに手が届くようにオンライン、オフラインのタッチポイントを使っていくというのは、デジタル時代のキャンペーンマネジメントの基本かなと思いますね。
ただただ広告を打つ、という時代はもう終わっていると思いますので、「Unica」のようなツールを用いて、きめ細やかな顧客との交流を設計することが大事です。
オムニチャネルという言葉はすでに多くの人が理解していると思いますが、別に新しいチャネルが生じたわけではありません。既存のすべてのチャネルをきちんとモバイルを中心に連携するということ。どのタッチポイントでどんな機会が発生するかは、顧客の側に主導権があります。それを前提に、「かゆいところに手が届くような」コミュニケーションが求められている。「Unica」のようなツールが後ろに控えた上で、さまざまなタッチポイントで、僕の言葉で言うとプレイスに位置づけられる店舗、オンラインストア、モバイルをしっかり稼働させることが重要だと思います。
岩田:そうですね。顧客目線で、顧客が何を欲しがっているか、しかもその情報をどのチャネルでコミュニケーションをすると、一番成果につながりやすいのか。それを数字から見極め取り組むこと。実はHCLの創業者は、プロギャンブラーという顔も持っていたのですが、マーケティングも確率的に勝てる要素の高い手段を選ぶという考えを持っていますし、勝ち、すなわちコンバージョンにつながりやすいルートはなにかを見極め、管理するためのツールというふうに理解いただければと思います。
奥谷:最後にお知らせとして、「Unica」がIBMからHCLに売却される前に「Unica」のユーザー会というのがあったのですが、それを復活させたいと考えているんですよ。ユーザー同士でキャンペーンマネジメントをどういうふうにやっているのか、「Unica」の使い勝手が良い悪いも含めて意見交換しながらマーケティング活動に資する会を実施していければと思います。ご興味ある方はぜひご連絡ください。
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