読者から寄せられた、2つの想定外の反響
「ブランド論の教科書通りにやってみても、ブランドはつくれません!」と何とも偉そうな書き出しで始まる『実務家ブランド論』を、2021年9月に発刊しました。
この書籍は、2020年1月よりアドタイで連載していたコラム「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」を大幅に加筆修正したものです。
本書の主旨を「はじめに」から引用します。
もし、あなたが「ブランドは差別化」とか、「約束」だと信じていたのなら、絶対にブランドはつくれません。まして「ブランドは第五の経営資源」などと言い出したら末期症状。社内から、ブランドかぶれの頭でっかちと言われてしまいます。コミュニケーションの実務においては、教科書通りにやってみたところで、ブランドはつくれません。では、どうしたらブランドをつくれるようになるのか?
私は、世の中にある「ブランド論の教科書」に書かれている本当の意味や、ブランドをつくる実務家としての方法論がわかるまでに、恥ずかしながら実に28年もかかってしまいました。貴重な人生の多くの年月を無駄にしてしまったことになります(タイトルが「33年」なのは、ブランドづくりの方法論を習得してからの5年間を含んでいるからです)。
私のような失敗や無駄な回り道をせず、実務家が最短距離でブランドづくりをできるようになることを目指してこの書籍を執筆しました。
おかげざまで『実務家ブランド論』は発売後即重版となり、ブランドの実務に悩む多くの方に読んでいただいています。本当にありがたいことです。
ただ、実際に発刊してみると、想定外の困りごとが2つでてきました。
「実務家ブランド論」だけを読んで終わりになっている人がいる
ひとつは、「ブランド論の教科書」を読んだことがなく、「ブランドの教科書に書いてあることとは何かを知らないまま」に、この本を手にされる方が意外に多かったことです。
『実務家ブランド論』は、初めてブランドの実務に取り組む方にもわかりやすく、役立つように書いたつもりです。ただ、残念ながらブランドの本を1冊読めばすべてがうまくいくようになるほど、ブランドづくりは簡単ではありません。
ブランド論の教科書には「実務家が求める答え」が実はしっかりと書かれていることが多いのです。ただ正確さや汎用性が優先されるあまり、文章が難解なことが多くそれを読み解いて理解するのが大変なのです(私は28年かかってしまった)。
学生時代に教科書を読むときに参考書を使ったりしませんでしたか?『実務家ブランド論』は「教科書」を読み解き理解するための参考書として使っていただくと、ブランドの理解がさらに進みます。
本書を読むだけではなく、そのあと「ブランド論の教科書」も読んでいただければ、本書の内容の理解もさらに深まり、ブランドづくりがうまくなります。
理論の裏づけがないから、いまひとつ信じられない
2つ目の想定外、こちらの方が1つ目よりもずっと多くいただいた意見です。それは「確かにわかりやすいが、『論』としてはかなり飛躍している。『理論』の裏付けに乏しいためほんとに正しいのか疑わしい」でした。
『実務家ブランド論』は、実務家向けの本。「とにかくわかりやすく」「理屈よりも結論」を最優先にしていたため、わかりやすいは、最高のお褒めの言葉であり、大変うれしいことです。
ただ、本書に記している「ブランドの定義は妄想だ!」「なんとなく好きを目指せ!」は、教科書での一般的なブランドの定義とされる「約束」や「差別化」と比較すると、なんとなく薄っぺらく思えるし、ありがたみがない。本文中に理論とひもづけた説明もない。すなわち理論で説明できない、著者の思いつきや経験則をもとに書かれたブランド論に違いないと受け取られた方も多いようです。
論とは、筋道をたてて述べるという意味です。『実務家ブランド論』は、ブランドについて筋道をたてて述べていて、私としては立派なブランド論と今でも思っています。理論を誰に対しても理解できるように説明することが私にはどうしても難しく、わかりやすさを最優先して本ではあえて触れませんでした。
その結果、本書の内容は「世の中で認められている理論」の裏づけがないと思われたり、ありがたみを感じないというご意見をいただいたりしたことは、正直想定外でした。ありがたみ出すために、小難しくても?ちょっとくらい本に書いておけばよかった!と反省しています。
でも、思い出してください。私は28年にわたり、教科書ブランド論に書かれた理論を一生懸命学んできたのです。もちろん『実務家ブランド論』は、様々な学問の「理論」から生まれたものです。
今回のコラム「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」番外編では、らしくないのですが理論の一部を公開したいと思います。
本書の内容がいまひとつ信じられないと思っている人には理解の後押しに、これからこの本を読んでみようと思われている方には、その入り口になれば幸いです。
「約束」「差別化」はなぜブランドの定義とすべきでないのか
ブランドの教科書に書いてある、ブランドの定義は、「約束」や「差別化」。そしてブランドと聞いて真っ先に思い浮かぶのはAppleやスターバックスになります。まさにスーパースターといえるブランドです。この場合は、ブランドは差別化、約束というブランドの定義こそふさわしく、違和感を覚えることはありません。
でも、実務の現場でよく話される「あのブランドは絶対に買わない」とか「最近うちのブランドの存在感がない」といった場合はどうでしょう。少なくとも、教科書ブランド論の定義をそのまま使って「あの約束(≒ブランド)は絶対買わない」「うちの差別化(≒ブランド)の存在感がない」と翻訳しても、何のことかわからないのではないでしょうか?
だからこそ私は、実務家は「約束」や「差別化」をブランドの定義として使うべきではないと主張しているのです。
そして『実務家ブランド論』で、ブランドとは「生活者の頭の中に浮かぶ勝手なイメージ」、つまり「妄想」と定義しこの定義を使うべきとしています。
妄想は脳(頭)の中に生まれます。
だから「人間の脳が生まれながらに機能する仕組み」に関係する『理論』が、『実務家ブランド論』のベースなのです。そして脳の働きを理解することで、ブランドを上手につくることができるようになります。
そして、なんとなくブランド=Appleと考えがちだったり、一方で「あのブランドは絶対に買わない」という場合のブランドの定義とは何なのか?については、この脳の働きやその理論から簡単に説明ができるのです。
では、具体的には後編(9月13日掲載)にて順を追って解説します。
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【片山氏講演】9/12(月)~9/16(金)開催:アドタイ・デイズ2022秋(オンライン配信)
企業の広告・マーケティング・DX・CXなどに携わるリーダーが登壇する「アドタイ・デイズ2022秋」(9/12~9/16開催)に片山義丈氏が登壇し、本コラムのテーマについても講演します。
【9月15日(木)12:15~12:45】
発売から1年が経った今、改めて考える。アップデート版「実務家ブランド論」
もし、あなたが「ブランドは差別化」とか、「約束」だと信じていたのなら、絶対にブランドはつくれません。まして「ブランドは第五の経営資源」などと言い出したら末期症状。社内から、ブランドかぶれの頭でっかちと言われてしまいます……。片山義丈氏の初の著書『実務家ブランド論』が発刊されてから1年が経ち、読者から様々な反響が寄せられました。それらを振り返り、書籍で伝えきれなかったこと、改めて強調したいブランドづくりの考え方を紹介します。今だから話せる、実務家ならではのブランド論の最新版です。
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