※本記事は、2022年9月1日発売の『宣伝会議』2022年10月号の転載記事です。
ワイデン+ケネディ
グループ・ストラテジー・ディレクター
タイス・ヴァン・デ・ワウ氏
ワイデン+ケネディ東京でブランド戦略およびコミュニケーション・プランニングチームを率い、Nike、Google、IKEAなど世界で最も影響力のあるブランドを担当。。
Q.クライアント企業がデザイン、クリエイティブのプロに求めることとして、どのような領域、どのような課題の解決にニーズがあると考えますか。
A.解決すべき正しい問題に釘を刺し、変革的なブランドのアイデアを引き出すこと。
ワイデン+ケネディでは、ブランドは社会や文化に影響力のある役割を果たすユニークな力を持っていると同時に、責任も持っていると考えています。最高のクリエイティブは現代社会が抱える真の問題を解決するものです。つまり、解決すべき正しい問題を見つけること、そしてクライアントと彼らのビジネスやオーディエンスにとって何が最も差し迫った問題なのかを誠実に話し合うことに、より多くの時間を費やす必要があります。
よく「ブランド力や認知度が足りない」「店舗に人が来ない」といった悩みを抱えたクライアントから相談を持ちかけられます。多くの場合、その根底にはもっと大きな問題があります。そして多くの場合、それは広告だけでは解決できないものです。
解決すべき正しい問題に釘を刺すことで、変革的なブランドのアイデアを引き出すことが重要です。ブランドのアイデアは、広告のアイデアよりもはるかに強力です。ブランドのアイデアは、そのブランドの将来の可能性、カルチャーにおける役割、どんな製品をつくるか、どんなイノベーションに力を入れるべきかといった情報を与えてくれます。さらには企業自体の目的意識に火をつけることにもつながります。
Q.「生活者に選ばれる」企業になるために、デザインやクリエイティブの力で貢献できることは何だと思いますか。
A.主張や信念を伝えるだけでなく、ブランドを行動に至らしめるようなクリエイティブを考えること。
ブランドはコミュニケーションの手段です。私たちは自分が何者であるか、何を信じているかを他者に伝えるためにブランドを身に着けています。そのため、ブランドとしてすべての行動においてオーディエンスの価値観を反映させることが重要です。ワイデン+ケネディでは、パートナーと密接に連携し「共通の信念」を確認します。それは、自身が世界に対して抱いている信念であり、自身がオーディエンスと共有するものです。しかし今日、信念やメッセージだけでは十分ではありません。
人々はブランドに対して意味のある信念を持つだけでなく、その信念を貫くことをこれまで以上に求めています。世界的な調査によると、94%の人が企業が強い目的を持つことが重要だと考えている一方で、83%の人がその約束を果たした場合にのみ利益を得るべきだと回答しています。そのため、主張や信念を伝えるだけでなく、ブランドを行動に至らしめるようなクリエイティブを考えることが重要です。