ミドルファネル攻略の2つの鍵と、たったひとつの考え方 

〔左から〕アイレップ インタラクティブデザインUnitの吉田真央氏、小野洋平氏、米田雄史氏、長谷川朝則氏

テレビCMは認知拡大施策――こうした認識が半ば常識となりつつある。しかし、実態はそうではない。そもそも〈認知〉とは、何をもって〈認知〉と言えるのか、という点も実際上、不明瞭なケースも少なくないのではないか。仮に認知されたらどうなるのか、も同様だ。

「〈認知〉自体はもちろん重要です。しかし、そこからプランニングを始めてしまうと、なかなか成果に結びつきづらいと思います」と話すのは、アイレップ インタラクティブデザインUnitでクリエイティブディレクターを務める長谷川朝則氏だ。

「クライアントの方々にとって、最も重視したいゴールから逆算して、メディアプランやクリエイティブを構築、設計することが重要です。特定のコンバージョンを生じさせるには、その前段階でどんな指標が増加するか、その前段階は…とさかのぼっていきます。それが、いわゆるミドルファネルの攻略の鍵です」(長谷川氏)

アイレップ インタラクティブデザインUnit クリエイティブディレクターの長谷川朝則氏

最終目標=KGI(主要目標指数)に資するKPI(主要業績指標)は何で、KPIに貢献するにはどんなメディアを用いるか。さらには活用するメディアに適したクリエイティブをどう企画し、実現に至らせるか。それこそ、SEOや検索連動型広告はじめとするロウワーファネル(ファネルの下部)の獲得領域を熟知したアイレップが得意とするところだ。

より多くの人に見てもらえた、というインプレッション(露出数)や到達数(リーチ)を認知として、一定の規模は得ることができた。では、それが何につながったのか……? という点に課題を持つ企業も少なくないのではないか。

「認知の次の段階の指標は、好意喚起や行動喚起であると言えます。これも上から考えていくのではなく、“次の指標につながる”好意喚起、行動喚起であるべきです」(長谷川氏)

では、その好意喚起や行動喚起をどのように生じさせるか。アイレップが鍵と考えているのが「Made for Media」、すなわち各メディアに適したクリエイティブの企画・制作だ。

エビデンスあるクリエイティブ

美しく情緒的な企画、あるいは笑えたり、驚いたりするような企画が上がってきた。しかし、なぜそれが施策として目標に貢献するのか? を担当者自身としても完全に理解できておらず、社内でもなかなかうまく説明できない――こうした問題に当たるケースもあるのではないか。

「こうした問題を発生させないように、当社では『科学する』という視点を重視しています」と話すのは、アイレップのクリエイティブディレクターの米田雄史氏だ。Made for Mediaの企画にも携わっている。

アイレップ インタラクティブデザインUnit クリエイティブディレクターの米田雄史氏

Made for Mediaは、一言で言えば、動画やそのほかの広告を出稿するメディアの特性に合わせて、クリエイティブを企画すること。言葉にすると簡単だが、それを実現するには膨大なデータが必要になる。表現はもちろん、出演者や音楽も重要な要素になる。

「各メディアで視聴態度や好まれるコンテンツは異なる、というのは実感のあるところかと思います。Made for Mediaは、単に流行っているコンテンツをそのまま踏襲する、というものではありません。もし、そのまま露骨に作ったとしても、結局ユーザーに見てもらえません。演出上の構造であるとか、興味を引く要素として取り入れる、ということです」(米田氏)

「やはりそれぞれのプラットフォームに対してユーザーがどんな触れ方をしているか、何を求めているかという点が重要です」と言葉をつなぐのは、インタラクティブデザインUnitでコピーライターを務める吉田真央氏だ。

アイレップ インタラクティブデザインUnit コピーライターの吉田真央氏

「クリエイティブには各プラットフォームのユーザーが好む要素をきちんと盛り込むことが好意喚起につながり、最終的にはコンバージョンにつながります。単に獲得効率だけを追って、ユーザーの印象や心情がないがしろになることは避けなければなりません」(吉田氏)

Made for Mediaでは、データや調査を踏まえながら、各プラットフォームやターゲット世代に合わせたプランナーを起用し、その領域に合わせた感性を取り入れたクリエイティブを制作している。実際に、動画のスキップ率が有意に下がるといった成果が出てきている。

好意度、第一想起といった指標が上がったかどうかだけではなく、最終目標の指標との相関を見ながら、行動喚起や次の指標につなげていく、という点もポイントだ。

科学で成果を最大化する

Made for Mediaはさまざまな表現形態がありうる。その中でも動画は、特に改善すべき箇所が多くなる。アイレップでは、「VOOST(ブースト)」の名称で、運用と改善をパッケージ化している。

VOOSTは、制作前〜制作中にも改善を見出しているのが特徴だ。そもそもの企画テーマ選定やコンセプトは、きちんとターゲットに届くものになっているのか。それぞれのカットで、訴求したいことに視聴者が目を向ける画作りはできているか、などだ。

アイレップ インタラクティブデザインUnit クリエイティブディレクターの小野洋平氏

「特に視線は、注視予測ツール『H-AI EYE TRACKER』を活用しています」と話すのは、インタラクティブデザインUnitのクリエイティブディレクター、小野洋平氏。『H-AI EYE TRACKER』は自社開発のツールで、データから人の注視傾向を学習した人工知能(AI)技術を取り入れている。数分で動画カットのどこに視線が集まるかを予測し、ヒートマップで可視化する。

「ほかにもメッセージをどういうふうに語りかければいいか、など、動画内容の最適化ポイントは多岐に渡ります。配信後も編集点の調整や、どのカットで視聴離脱が起きたか、どのカットで指標が上昇するか、などを検証していきます」(小野氏)

こうした改善をくり返すと、ある事例では、指名での検索数が1.9倍、見込み客獲得率が19ポイント増、購入意向率は33ポイント増、コンバージョンは58%増となった。

しかし、どんな優れた動画も改善する要素は次第になくなってくる。同時に、効果も逓減していく。

「並行して新しい企画の検証を進めておくといった、より上位のレイヤーでのPDCAが必要になってきます。たとえば明らかに伸びが悪いターゲットセグメントには動画施策ではなく、別の手立てが必要かもしれません。新たな企画と言っても、すでに実施したPDCAで得た発見を踏襲できるので、より効率は良くなっていきます」(小野氏)

いずれにしても重要なのは、どんな成果を得たいかという「ゴール志向」だ。「視野を施策レベルから、全体のコミュニケーションに広げても同様です」と長谷川氏。

「フルファネルでのデジタルマーケティングを続けてきたからこそ、ゴールから逆算したメディアプランニング、クリエイティブの重要さを実感します。ゴールを設定し、実施して、目標と結果のギャップを見る。ミドルファネルだけで考えるのではなく、アッパーからロウワーまで、全体の視点で実施していくべきだと思います」(長谷川氏)

翻せば、失敗を招くのは、一つひとつのファネルに囚われ、結局のところ何を求めているのか、を忘れてしまう、ゴール志向のなさ、と言えそうだ。
 


 
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