正しく「計測」することはアプリビジネスの必須事項
幅広い年代でひとり1台スマートフォンが行き渡るようになりつつある現在の日本。これにより、多くの企業で「アプリ活用」がビジネスを左右する存在となってきている。
小売店やECでの購買のポイント蓄積のためにアプリが活用されるケースも増え、ユーザーを囲み、ファン化するコミュニケーションの軸として多くの企業が注力していると言える。 Adjustでゼネラルマネージャーを務める佐々直紀氏は、このような背景から、「計測」の重要性がかつてない高まりを見せていると述べる。
例えばモバイルマーケターがプロモーションを行う際、様々な媒体で広告を出すにあたり、インストール数や経路、アプリ使用率など、様々なデータが出稿計画に必要となる。
「私たちは、マーケターがアプリユーザーの獲得や、その後の育成を行う上で必要な計測・分析ツールを幅広く提供しています。中でも事業の核となるのが、①メジャー(計測)、 ②アナリティクス(分析環境の提供)、③オートメイト(業務の自動化・簡素化)、④プロテクト(不正防止)の4つの柱です」と佐々氏。
同氏は④の不正防止について、モバイル広告の問題点を指摘する。
「アドフラウドへの対策は、正確なモバイル計測を行う上で避けては通れません。当社のツールの不正防止機能をオンにした際に、それまで有効とされていたうちの10 ~20%が不正と検知されるケースもあります。広告予算を守るためにも、マーケターの方々に向き合っていただきたい問題ですし、当社でも啓発のための発信を続けています」。
包括的CTV広告計測は国内初「CTV Advision」
同社の事業の4つの核のうち、① 「計測」における重要項目のひとつに“アプリのダウンロードの流入経路” がある。ダウンロードの流入経路は現在、オンラインだけでなくQRコードを活用して、店頭POPや雑誌を起点にするなど、多様化の一途をたどっている。その中でも佐々氏は、コネクテッドTV(CTV)広告経由でのダウンロードについて、「欧米ではすでに、CTV経由でのアプリダウンロードがメジャーになりつつあります。日本でも今後、この新たなチャネルをどう活用するかが重要なテーマになることは間違いありません」と話す。
Adjustは今年5月、国内初の包括的CTV広告計測ソリューション「CTV Advision」を発表。CTV経由でのダウンロード数や、その後のアプリの使用のされ方などのデータをひとつの管理画面で可視化できる。
「CTVとスマートフォンのIPアドレスを使用すると、それぞれの位置情報がわかるため、CTVでの広告の表示が、スマートフォンでのダウンロードに寄与していると数値的に証明できるようになりました」。
現在、CTV広告を活用している事例として、佐々氏はニュースアプリ「SmartNews」の事例を挙げる。
「きっかけは計測の環境が整ったこと。以前よりCTVのオーディエンスの急拡大は認識されていて、欧米などでも新たなチャネルとして注目していたものの、いかに評価するかが課題だったそうです。そこにAdjustで、日本で最もポピュラーなOTTのひとつ『ABEMA』の広告の測定ができると知り、ブランディングのみならず獲得後のユーザーの継続率などの重要指標の可視化ができるとなれば、踏み込まない手はないという経緯で飛びついたそうです。CTVのインパクト評価や他のチャネルとのユーザー比較ができ、将来有望なチャネルをいかにドライブさせるか、改善に取り組む環境ができたと喜んでいただいています」。
SmartNews の担当者からは、「CTVに注目したポイントは地上波テレビCMと同様に『ながら視聴』されることです。モバイル端末でのインストリーム広告の場合は、その時に視聴している動画を中断してアプリ利用を促すことはハードルが高いですが、テレビモニターで広告を見ているCTVであれば、動画を見ながら手元のスマートフォンでアプリを利用するアクションが期待できます」との声もあるという。
ビデオリサーチとの連携により地上波テレビCMの効果も可視化
また佐々氏は、近年の広告ID規制によるデジタルマーケティング環境の変化を受けて、地上波テレビへの広告回帰の流れも同時に起きていると話す。そこでAdjustは7月に、ビデオリサーチ社との連携により、地上波テレビCMからのモバイルアプリインストールの計測と分析を可能にした。
「ビデオリサーチ社は、どの地区のどんな番組で、いつテレビCMが流れたのかという詳細なデータを広告主に提供しています。Adjustではユーザーがアプリを起動するとIPアドレスを取得できるので、ある程度の地域が判定できます。それらのデータを連携することで、アプリインストールに対するテレビCMの効果を測定できる仕組みです」。
同ソリューションを導入した「フォワードワークス」では、同社が提供するゲームアプリ、「みんゴル」のテレビCMを、「全英オープン」の中継番組の合間に放映したところ、そのCMが貢献したと思われるユーザー群を計測で捉えられ、さらにこのユーザー群は、広告を見ずに自ら望んでアプリをインストールした「オーガニックユーザー」と比較して、最大で12%増ものアプリ継続率を得られたという。この結果は、今後「みんゴル」でテレビCM出稿を検討する際の材料のひとつになる。
今後の展望について佐々氏は、「計測ツールに重要なのは“網羅性”です。今後も環境に順応し、複数チャネルをひとつのプラットフォームで比較できる強みは大切にしていきつつ、予測分析機能やレポーティング機能もより充実させることで、日本のアプリビジネスの成長に貢献したいです」と思いを語った。
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