明治座、東宝、ヴィレッヂの3社から集まった同い年のプロデューサー3人が立ち上げた「三銃士企画」。
その第2 弾となる舞台『歌妖曲~中川大志之丞変化~』が11 月6 日から、東京・明治座を皮切りに全国3カ所で上演される。主演は俳優の中川大志、作・演出は倉持裕。
本作の宣伝周りのアートディレクションを手がけているのが、Standの高橋亮さんと井田岬さん。「演劇の仕事は初でした。舞台の内容が固まる前にデザインを進める必要があったので、ストーリーから想像を膨らませて制作しました」(高橋さん)。
時は昭和30 年代。歌謡界のトップスターには、絶世の美男子 桜木輝彦が君臨していた。しかし彼の生い立ちには暗い影が。大手芸能プロダクションを営む華々しい鳴尾一族の末っ子・鳴尾定として生まれたものの、ねじ曲がった四肢と醜い顔を持っていたため、その存在が闇に葬られていたのだ。闇医者の施術により桜木輝彦として生まれ変わった彼はスターダムを駆け上がり、鳴尾一族への復讐劇を繰り広げる。
「桜木輝彦と鳴尾定という二面性を持つダークヒーローの歪んだ心と、歌謡界を舞台にさまざまな曲が登場する作品の特徴から、譜面に並ぶ音符のような流れや歪みを文字に加えることにしました。元のフォントは『妖』の字のはらいの部分が蛇のように先細りになる筑紫明朝を採用。最初はPC 上で加工していたのですがいまいちしっくりこず、手で動きを付けることに。自分で紙を揺らしながらプリントした字をスキャンするというアナログな手法で制作しました」(井田さん)。
意識したのは、音楽の軽やかさと主人公の心を体現する歪さのバランス。2、30 回ほど試し、中でも「妖」の字のウエーブがしっくりきたものをロゴとして使用している。一方で、サブタイトルの「中川大志之丞変化」の部分は読めるギリギリまで細く。メインのロゴが舞台を体現しているため、こちらはあまり主張が強くなりすぎないよう調整した。背景色はシアンを少し混ぜた血のような赤、文字の部分はリッチな黒を採用。主役の裏表を表現したキービジュアルの写真と合わさり、作品の異様さやストーリーを伝える役目を果たしている。
スタッフリスト
- 企画制作
- Stand
- CD+AD
- 高橋亮、井田岬