※本記事は広報会議2022年11月号「広報担当者のための企画書のつくり方入門」をダイジェストで掲載します。
長引くコロナ禍で、私が支援する企業からの広報領域に関する相談内容も徐々に変化してきている。コロナ拡大初期の頃は短期的な売上のリカバリー(販促PR)の相談案件が多かったが、会社広報全般に関する相談へと変わっていった。特に「売上至上主義」からSDGs推進のような「持続可能社会」の追求型へと、根本的なコンセプトチェンジを試みようとする企業と接する機会が増えた。ところが、コロナ禍3年目を過ぎてからは、さらに自社の広報体制そのものの見直し、特に「PR会社との付き合い方」を見直したいという相談をよく受けている。今回はPR会社を活用するための企画書の書き方について考えたい。
コロナ禍で浮き彫りになった課題
「PR会社との付き合い方」が見直されている背景には、❶リモートワークの常態化 ❷グローバル広報への対応変化 ❸持続可能社会に向けた社内体制の見直し ❹既存の予算ポートフォリオの見直しといったことがあると考えている。
まず、❶リモートワークの常態化については、すでに多くの論説などで語られているが、私は特に社内広報(インターナルコミュニケーション)についての考え方の変化を指摘したい。社内広報にはあまり重きを置いてこなかった企業がこれまでとは異なる社内広報のあり方を模索するように変わりつつあるのだ。社員同士がこれまでのようにface-to-faceでのコミュニケーションを取れなくなったことなどが背景にあるものと思われる。
face-to-faceのコミュニケーションが取りにくくなったことは、これまでにもリモートコミュニケーションが一般的だった ❷グローバル広報を行う企業にとっても深刻だ。広報担当者は頻繁に海外支社や子会社を訪れていたわけではないが、重要な商品発表や新規事業のローンチ時には現地出張することも多かった。しかし、長引くコロナ禍により海外出張自体が難しくなった。
現地の広報活動を信頼できるエージェントを通じて行っていくには、どういった体制が望ましいのか。そのためにはどういったプロセスを踏めば良いのか。こうした相談をもらう機会が増えている。
また、❸持続可能社会の実現に向けて本格的に動き始めた企業からは、これまでの広報部門の行ってきた活動全般を見直したいとの声を聞くことがある。さらには ❹広告とPRとのこれまでの予算ポートフォリオを根本から考え直したいと考えている企業も増えてきた。
元々は毎年恒例の協賛イベントが中止となり“予算が余った”ので一時的に別の施策に回したいという程度の話がきっかけだった。しかし、最近は記事広告などの出稿やメディアリレーションを含むコミュニケーション体制全般の大幅な見直しや、PR会社をもっと積極的に活用したい(あるいは依頼内容を見直したい)という自社の広報体制自体のブラッシュアップの要望へと変わってきている。
広報の「質の向上」への方向転換
こういった相談への対応が難しいのは、単に旧来のようなアナログ(face-to-face)でのコミュニケーションからデジタルコミュニケーションへのシフトという文脈だけでは語ることができないからだ。例えば、行き過ぎた広報活動のデジタル化への反動からface-to-faceへの回帰を希望する企業などもある。
また、私自身の反省も含めてだが、我々は広報活動の「効率化」を過度に求め過ぎてきた。例えば日頃から私は広報活動におけるKGI、KPIの設定を重視しているため、最終ゴール(KGI=Key Goal Indicator:重要目標達成指標)に直接結びつかない施策はなるべく避けようとしてきた。
しかし、必ずしも数値評価に結びつくかどうかまでは分からない取り組みや初めて行ってみる施策(「ガッツな取り組み」と私は呼んでいる)をアフターコロナのタイミングで実施しようと考える企業も多くある。(例:初めての社員合宿/総会、社員の家族も含む交流会、初めての周年事業等)。いずれの企業も社員同士の一体感/結束の弱まりを肌で感じている結果だと私は考えている。
アフターコロナに向けて今我々が考えなければならないのは、企業にとってのコミュニケーション活動の「質の向上」そして最適化を図るための広報戦略の再定義と体制づくりだ。では、このためのパートナーとして、どういった強みを持ったPR会社が良いのかを考えたい。
自社にとっての最適なコミュニケーション戦略を再定義する上で、PR会社との関わり方は非常に重要だ。その関わり方には ❶ハウスエージェンシー型と ❷プロジェクト型/ツール活用型がある。まずはそれぞれのメリット・デメリットを見ていこう。
ハウスエージェンシー型の契約は中長期視点も可
ハウスエージェンシーとは、本来は親会社や関連会社のコミュニケーション業務を独占して請け負う代理店のことだ。自社にとっての専属(PR)代理店ともいえる。もっとも、最近は親会社などグループ会社以外の企業からも仕事を受けるハウスエージェンシーも多い。
また、コミュニケーション活動全般についての包括的な業務委託契約を特定のPR会社と長期間にわたって結んでいる場合には、その契約をハウスエージェンシー型の契約と便宜上呼ぶこともある。
ハウスエージェンシーに依頼することのメリットには以下が挙げられる。
まず、同じグループ内(もしくは伝統的に付き合いのある)代理店であるため、代理店手数料などの諸費用が安く済む。また、競合企業への情報漏洩などを防ぐことができる。長期的な関係性が依頼先企業と構築されるため、委託する側との意思疎通が速やかで緊密となる。このため重要な意思決定を早く行うことができる。
一方で、デメリットとしては、案件ごとにコンペティションを行うプロジェクト型の業務委託ではないため、依頼元とPR会社の担当者同士がいわゆる“馴れ合い”になりやすい。このため斬新な発想での新しいアイデアは生まれにくいことがある。
ハウスエージェンシー型のPR活動を委託するために企画書を書く際には、前提として、こうしたタイプのPR会社のメリット・デメリットについて客観的な視点から整理したい。
プロジェクト型の契約ポイントは「目的」と「依頼先」
PR会社に業務を委託する場合、最も一般的な依頼の方法はプロジェクトベースでの依頼だ。しかし、「どこのPR会社に依頼すればいいのか?」という質問は簡単なようでお答えするのが難しい。
まず間違えたくないのが自社及び自社が手掛けるプロジェクトの規模感だ。例えば、スタートアップ直後の企業で新商品発表会をプロジェクトベースで行いたい。自社の社員にはノウハウもなく人手も足りない。こういった状況で大手PR会社に相談を持ち込んだとしよう。その場合、実際には依頼企業の希望とはかけ離れた結果となってしまうことが多い。
まずは料金面だ。大手のPR会社の場合は契約先の企業自体が大手であることが多い。最低限必要な月額フィー(基本料金)だけでも一般的な大手で月額100万前後。全体予算が数百万程度の予算で大手PR会社に対面イベントの実施を依頼することは厳しいのが現実だ。
一方で自社がテレビCMを行っているようなビジネス規模の企業(例:売上1000億以上、社員数1000人以上)の場合、あまりに小規模なPR会社に広報プロジェクトを委託する際には十分に気をつけたい。小さなPR会社の場合、大手以上に担当者は複数の企業のサポートを行っている。仮に1人が5社を担当し、毎週定例ミーティングに1.5時間参加するとリモート会議だけ(移動時間なし)でも週のうち1日分が潰れてしまう。
望ましいのは、例えば「戦略立案にフォーカスしたサポートを依頼」「医療関係に詳しいなど専門領域に特化したPR活動を依頼」「ファッション雑誌へのメディア露出にフォーカス」「危機管理対応(公式アカウントの炎上時)」など、依頼内容を明確にした上で、自社が属する業種や希望する掲載メディアとの親和性が高いPR会社を選ぶことだ。
もちろん大手のPR会社へ委託する安心感は、何ものにも代えがたいだろう。だが、広報予算がない場合には、まず、毎月委託料が生じるハウスエージェンシー的な包括契約(総合型)での委託ではなく、委託内容を絞り込んだ上で、大まかな期間(半年、あるいは1年)を決めプロジェクトベースでPR会社に委託することで、結果的に良い関係をPR会社との間に築くことができる。
続きは…広報会議2022年11月号へ。依頼前に検討すべきこと、アフターコロナで何が変わるのかについて解説しています。
広報会議2022年11月号
【特集】持続的成長に結びつく
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GUIDE2
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日高広太郎(広報コンサルタント)
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・BtoB企業の記者発表会のポイント
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【特集2】インターナルコミュニケーションと企業ブランディング
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モスフードサービス
REPORT
揚羽/ビジネスサーチテクノロジ/ブイキューブ/タノシナル
など