※月刊『宣伝会議』2022年11月号(9月30日発売)では、「生活者の変化に合わせて企業も変わる!マーケティングDX」と題し特集を組みました。
ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。
ユミルリンク
取締役
渡邉弘一氏
システムエンジニアとしてキャリアをスタート。ユミルリンクに入社後は、法人営業を経てBtoBマーケティング全般に従事。同社は2021年9月に東証マザーズへ上場。現在はマーケティング・営業を掌握し、広報・IRを含めたマーケティング全般を統括。
Q1. 業務効率化にとどまらず新たな売上を創出するためのマーケティングDXにおいて必要な観点とは?
A. デジタル化のみにとどまらず、価値を生み出すには “経営者視点” が必要。
マーケティングDXとはデジタルを活用して企業として新しい価値を創出することであり、新たな売上を得ることだととらえています。その実現のためには、デジタル化するだけではDXとならないため、どのように価値を創出できるかがポイントであり、ときに経営者視点でマーケティングDXを考え、遂行していくことが必要だと思います。バズワード化すると目的と手段が逆となってしまうことも往々にしてあるため、目的を明確化していくことも重要と考えています。
また、マーケティングとデジタルを同時に考えていく必要があることから、マーケティング、デジタル双方の知見を持った担当者をいかに増やしていけるかも必要なポイントです。
Q2. データドリブンなマーケティングを志向する企業も増えていますが、昨今のマーケティング活動における、データ利活用の課題とは?
A. 部門横断プロジェクトを推進するリーダー、データを扱う人材が十分に存在するか。
マーケティングDXやデータの利活用は最終的に新たな価値を創出していくことが目的であるため、実現に際しては全社を横断したプロジェクトになるケースも多いと思います。それゆえ推進するための強力なリーダーシップと推進力を持った人材がいるかという点は、必ず初期の課題として出てくる問題だと思います。
また、データをそろえたとしても、そのデータを分析したり、マーケティング活動に活用していったりといったPDCAを回すための人材不足、教育不足といった点が課題になっていると思います。
Q3. マーケティングDXを実現するための、最初の一歩となりうることとは?
A. まずは自社で実現可能なオンライン接点を整理し、顧客とつながる土台を強固にする。
まずは自社と顧客とのオンラインでの接点がどの程度あるかを棚卸ししてみてはどうかと思います。
当社のお客さまにも、従来はオフラインで事業を展開されていましたが、インバウンド需要の減衰に加えコロナ禍による顧客行動の変化によりオンライン施策に、いちから取り組まれた企業があります。その際に実行されたのが、ECサイトの会員を集めることでした。メールマガジンやLINEなどを通じオンラインで顧客接点を持とうにも、届けられる会員がいなければ始まらないので、Webサイトの整備など、まずは接点をつくるための土台づくりからスタートしてみてください。
あるいは、会員数は一定数いるもののアクティブ率が低いといった場合には、コミュニケーションを見直してみることも方法のひとつです。例えば、購買意欲の低い休眠層にいきなりクロージングをかけるのではなく、自社のこだわりや強みなど、ブランドやプロダクトに興味を持ってもらう発信から行い、徐々にファン化を図っていく手法が考えられます。
商品試用中の顧客に、「顧客の体験談」や「サポート体制」に関するコンテンツを伝えたことで、本契約転換数を4倍に伸長させた事例もあります。顧客の困りごとや興味関心に寄り添ったアプローチをすることで、ロイヤルカスタマーの醸成につなげることができると思います。