ゲゲゲってゲゲゲ
今年は水木しげる生誕100周年ということで様々なイベントが企画されているようだ。鬼太郎ワールドと地域とのコラボも、境港市や調布など盛んに行われている。鬼太郎はいまや現代の民話といってもいい。
人気のキーになったのは、やっぱり「ゲゲゲ」というネーミングだと思う。元は「墓場鬼太郎」だったが、それでは怖すぎる。そもそも鬼太郎作品はかなりこわい。私は小さいときに読んだ「鬼太郎」がいまでも夢にでてくるくらいだ。だから、1960年代の日本では、暗闇で妖怪が跋扈する「鬼太郎」は、非科学的で、時代遅れで、迷信まみれで、子どもたちには好ましくないと、大人たちは眉を顰めた。
でも、本当は、大人たちだって知っていたのだ。高度成長の時代でも、AIやロボットの時代でも、いやむしろそんな時代だからこそ、不気味で恐ろしく、ときに間抜けで哀しく優しい妖怪たちは、私たちの秘密の友だちなんだということを。1968年、「ゲゲゲの鬼太郎」に改題されアニメ化されて、人気が沸騰し、国民的キャラクターとなった。
「ゲゲゲ」とは、「不意を突く驚き」をちょっとポップに表すと同時に、「化化化(ゲゲゲ)」の底知れなさもこっそり滲ませた、絶妙のタイトルだと思う。そしてそれから半世紀以上過ぎた現在も、「ゲゲゲ」は私たちの心をそっとゆさぶる。
学習院大学
法学部 教授
遠藤 薫氏
東京工業大学大学院修了、博士(学術)。日本学術会議連携会員。専門は社会学、社会システム論、社会情報学。著書に『ロボットが家にやってきたら⋯人間とAIの未来』(岩波書店)、『ソーシャルメディアと公共性』(東京大学出版会)、『ソーシャルメディアと〈世論〉形成』(東京電機大学出版局)など。
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