足袋がコロナ禍で打撃を受ける中、福助(東京・江東)が突破口を見出そうとしている。日常生活に合わせた新ブランドの開発やコラボのほか、製造技術や人などに焦点を置いたPR動画の配信を始めた。
sections
和装のイベント、部活が減少
新型コロナウイルス感染症の拡大や、生活スタイルの変化などから、足袋の需要が下がっている。福助の足袋の2020年の売上高は、19年比で52%、21年はやや回復したものの同比72%だった。
和装で着飾ることの多い成人式や卒業式といったイベントのほか、対面となる茶道や華道の集まりなどが減った。弓道などの部活も足袋の出番だが、休止を余儀なくされた。
新ブランド開発、鬼滅コラボも
打開のために福助は2021年10月、足袋の製造技術を生かした新ブランド「Tabeez(タビーズ)」を上市。バッグやエプロン、足袋シューズ、室内用足袋を展開し、年商1億円規模への成長を目指すなど、足袋事業の継承と拡大を急ぐ。
新たな足袋ユーザーを開拓すべく、コラボにも積極的だ。人気マンガ『鬼滅の刃』とは足袋のほか、足袋型靴下やルームシューズでコラボレーション商品を発売した。日本舞踊をベースとしたダンスパフォーマーで歌手の花園直道氏とコラボした足袋は、ハコゼ(足袋のかかと側についている金物の留め具)がなく、ルームシューズ向けに展開。和装教授師範の小柳順子氏とは、足袋にも合う和装向けの下着を開発した。
ことし10月には、マーブリングによるボディペイントが特徴的な「DWS JAPAN」とコラボした足袋や靴下を発表した。昨年10月にも足袋職人が作ったマスクでDWSとのコラボ商品を発売したところ、初日で完売するという反響を得た。
PR動画で技術や人にスポット
YouTubeでは企業イメージ向上を目的に、足袋製造にまつわる技術や人、工場を置く四国の様子を伝えるオンライン動画『匠』編ほか3編を配信している。140年続く足袋製造について発信することで、製造を担う子会社・四国フクスケの工場で働く従業員の雇用安定や、技術の継承を図りたいという。新型コロナウイルス感染症の拡大前は、毎年1〜3人の新入社員を採用していたが、近年、応募者も減りつつある。
動画制作には福助を完全子会社とする豊田通商も協力した。縫製だけで17にも渡る工程がある足袋製造の様子を映した『匠』編のほか、入社のきっかけなど従業員にスポットを当てた『働く人たち』編、工場を置く香川県観音寺市の特産品などを取り上げた『観光』編を用意した。
足袋には、ただ、知られていないだけ、の〈伸びしろ〉もあるようだ。『観光』編の収録時、出演する地元住民に「Tabeez」を手みやげにしたところ、「『こんな機能的でかっこいい足袋シューズに出合いたかった』という声をいただけた」(制作に携わった豊田通商の石原正博氏)
福助はもともと、ユニークな広告宣伝で知られた企業だった。民放ラジオの放送が始まった1951年にラジオCMを打っていたほか、マンガを用いた広告を先取りしたのも同社とされる。明治には、創業の地ながら、知名度がなく苦戦した大阪・堺では、足袋の片方を民家に投げ込む力技に。「片足足袋戦法」として話題を呼んだほか、もう片方を買い求める客が増え、成長に寄与した。
スタッフリスト
- 企画制作
- 豊田通商、メルクマール
- CD
- 石原 正博
- AD
- 森田 智子
- D
- 日辻 みく
- ME
- 富川 寛美
- 撮影
- 中森 真
- C
- 近藤 智子
- I
- 松橋 てくてく、重松 亜季
- NA
- 柴田 チコ
- EOF
- EOF