※本レポートは広報会議2022年11月号より転載しています。
「経営に資する広報」までの道のりは?
「広報の評価を進化させる 効果測定研究会」第2回には、アドビ、岩谷産業、カルビー、ゴールドウイン、J‐オイルミルズ、ジャパネットホールディングス、スープストックトーキ ョー、スギホールディングス、スクウェア・エニックス・ホールディングス、セコム、デロイト トーマツ グループ、ハピネット、ファクトリージャパングループ、ファミリーマート、ファンケル、堀場製作所、立正大学(五十音順)の広報関連部門の担当者が参加。ボードメンバーには、広報の効果検証プラットフォームを開発・販売するプラップノードが加わり意見交換しました。
経営に近い位置にある広報
研究会の前半では、プラップノードCEOの渡辺幸光氏が「自社の広報課題に合わせた効果測定項目の設定」をテーマに講演しました。
「広報およびPRに含まれる職務は、非常に多岐にわたっています。米国でPRの教科書としてよく使われている『アージェンティのコーポレート・コミュニケーション』によると、メディアリレーションやクライシスの対応はもとより、レピュテーションの管理や企業広告、政策提言も広報の仕事の範疇にあるとされています。広報の業務は経営に近い位置にあるのです」と渡辺氏。一方で「組織の活動をコア(顧客視点から見て競争優位の源泉となる活動)とコンテクスト(コア以外の全ての企業活動)に分けた場合、ほとんどの会社で広報はコアではなくコンテクスト業務にあたるでしょう」と指摘します。「技術力やデザイン性の高さなど、何を組織のコアにするかは経営者が決めるもので、コアとコンテクストは主従関係になりがちです。しかし、顧客やメディアの視点を把握する広報部門なら『今、技術力を打ち出しても受け入れられないですよ』と、対等な関係で発言できます。経営に近いところにいながらも、社内外から組織を俯瞰できるのです。この部分で広報の存在感を発揮していくことが大事だと思います」。
ただし広報活動の評価は、組織・経営陣からの期待値に寄るところも大きいと渡辺氏は言います。「例えば、良いメディア露出が獲得できた時、『これは知名度アップにつながる』と評価する経営者もいれば、『その露出は売上に影響があるの? どう評価したらいいのか分からない』という経営者もいる。これはよく聞くお悩みです。後者の場合は『広報は経営において重要だ』と認識してもらうことが最初のステップになるでしょう。広報の価値が評価されて『経営課題を広報の力で解決する』ステージにたどりつくまでには、いくつか道のりがあると私たちは仮説を立てています。図1はひとつの例ですが『メディアにたくさん露出したい』と量を意識する段階、『狙い通りの露出が欲しい』と質を求める段階を経て、広報活動が成熟してくると『効率よく取材対応したい』と業務効率を考える段階、『きちんと評価されたい』という段階になっていきます。仮に、経営陣が『今はもっと認知を広げないといけない時期だ』と捉えているならば、質の良い取材対応ができたとしても、『露出が足りない』との評価になるでしょう。広報部門がもっとステージを上げなければと危機感を持つ場合は、自ら経営陣の期待値を上げていく働きかけをすることも大事になると思います」。
まずは広報資産の見える化から
では、経営に資する広報を目指していくには、何が必要なのでしょうか。まず「広報資産」の整理と見える化が重要だと、渡辺氏は言います。「露出を獲得したいメディアリストや運用しているオウンドメディアのほか、ブランド力、ユニークな社内制度など、社外にアピールできる要素を確認しておきます。広報歴の長い『名物広報パーソン』のメソッドがきちんと引き継がれているかどうかなど人、モノ問わず広報資産となるものは多くあります。どの程度活用できているかも含めて整理していくと円滑な広報活動の手助けとなるでしょう」。
経営陣が広報に求めているステージに必要な広報資産がそろっているか。不足しているものは何かを確認した上で、計測可能な指標を設定していきたいところです。
「例えば、広報を始めたばかりで人も予算もないなら、Googleアラートなどで簡易的にクリッピングすることからスタートして、成果が出てきたら、露出数やリリース配信数、広告費換算額を指標として見ていくこともできるでしょう。質を求める段階になったら、重要媒体での露出、競合と比較したシェアオブボイス、ソーシャル上での反響などを指標にするのも手です。取材対応の効率化については、リリースの露出結果はすぐ呼び出せるようにデータにしておくと便利です。『この情報なら、このメディアに取り上げてもらえそうだ』と分かれば、効率的な広報活動ができます。業務評価という点では、ブランド認知調査や、従業員エンゲージメント調査など、施策前後の変化を測る指標を使って、経営陣にアピ ールするのもいいでしょう。組織ごとに、目的に即した指標を選んでいく必要があります」。
広報の影響度を正しく測る難しさ
研究会の後半では、4グループに分かれ ❶あなたの会社の広報資産 ❷経営陣(組織)の広報に対する期待 ❸自社にとって計測可能で意味のありそうな効果測定指標について、ディスカッションを行いました。❶広報資産については、知名度の高さが露出数に表れている企業もあれば、地の利を活かしてローカルメディアから露出を増やしている企業もありました。メディアリストについては、数千のボリュームを抱えるケースから、確度の高いリストを運用するケースなど、企業によって大きく異なっていました。また、SNSでの発信強化を検討している企業や、長期ビジョンを重視し、いかにビジョンにつながるストーリーが発信できるかに注力している企業もありました。
❷経営陣から求められる広報への期待については、各社ごとに特色があり、「次世代の顧客となる若年層への認知を高めたい」「商品自体の差別化がしにくい中で、自社が選ばれるような独自のストーリーを打ち出したい」「従業員を積極的に露出させモチベーションを高めたい」「トップの思いを社内に伝えることが命題」などの声がありました。一方で「事業部から広報視点では扱いにくい情報を渡されて困っている」「少ない予算の中で高い露出効果を期待され苦労している」といった広報の業務に対する社内の理解度によってハードルが生まれているケースも散見されました。
❸効果測定指標についてはメディア露出数や広告換算値だけでなく、「広報部の重点テーマに対して、ストーリーとしてコミュニケーションできた本数を年間で計測する」「出店の多いエリアで露出がどれぐらい取れたか、競合と比べてボリュームはどうか」「必ず露出したいと狙っていたメディアに載れたかを見ている」といったように、広報の目的に応じて工夫した目標の設定が見られました。
意見交換では「売り上げへの貢献や、外部調査のランキングの順位といった広報活動との相関を可視化するのが難しい領域をどう整理していくか」「今の指標が正しいか見直したい」「広報への期待値のコントロールは大切。自ら社内の理解を得ていかなければ」という意見も出ました。これを受け渡辺氏は「広報は社内でつながる部署が多く、情報のハブだからこそ、広告換算値のような分かりやすい指標が主流になってきたのかもしれません。しかしオウンドメディアの運営も主流になってきた昨今、広報の新しい指標を考えないといけない過渡期でもあります。例えば、メディア露出の効果について、従業員エンゲージメントへの影響はどうか、といった視点を持つこともできるはずです。経営目線で指標を再設定してほしいと思います」とアドバイスしました。
広報を進化させる 効果測定研究会
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