「あのとき、こうしたかった」企画で挑戦状
木村 広告賞には、実際に世の中に出た広告を評価するものと、アイデアコンペの二種類があります。MACAのように、後者だけれど特に実現不可能なアイデアは評価されない賞は大事だと思っています。
というのは、自分のアイデアや創造力の可能性を広げてくれるからですね。実際の仕事は、どうしても制約の多い中で考えるから、できる範囲の中で思考がとどまりがち。
MACAは、できるかどうかわからないギリギリのところで、ちゃんとクラフトまで仕上げて第三者の評価を受けられます。受賞するかどうかも大事だけれど、挑戦することのほうがもっと大事で、栄養になると思います。
樋川 アイデアコンペのいいところは、誰もが大きなクライアントや大きな広告媒体に挑戦できることだと思います。「こういう仕事がしたいな」という理想はあっても、なかなか実現する機会がない方にとってチャンスだし、自ら実績をつくることができます。私もそこに魅力を感じてコンペに参加し始めました。
杉 実際の仕事は、ベストと思うアイデアも曲げなければいけない場面があります。コンペは、「あのときこうしたかった」というアイデアや、それを実現させる自分のポテンシャルを発揮する場になっていると思います。
でも、やりたいことをやるというだけでは自己満足でしかありません。僕もグランプリを取って「天狗になってしまうかも」と思っていたんですが、そういう感覚でもなくて。それは審査される、ということを意識して、いかに賞を取るかを考えて、準備をして受賞できたからだと思います。
木村 中小でも、地方でもチャンスはある。僕もノンクリエイティブから成り上がったので、やる気と情熱と、ちょっとしたアイデアを持った人がちゃんと成り上がっていけることも大事だなと思います。
樋川 賞の実績は信頼にもつながると思っています。たとえばクライアントへ提案や転職活動の際に、自分がどんなクリエイターで、どれくらいの実力があるのか知ってもらえる。コンペに挑戦することで、仕事の間口を広げることができるのではないでしょうか。また、気持ちの面でも賞をいただいたことで自信がつき、堂々と仕事ができるようになりました。
杉 評価されるのは制作物ですからね。僕のように小さい制作会社の人間でも、地方の専門学校生でも、日の目を見ていない人が世に出るチャンスだと思います。
八木 僕も京都で三人くらいのフィニッシュスタジオで仕事をしていて、そこから脱出したいと思っていました。コンペを戦略的逃亡というか、思いを持つ人が、それを形にしていく。その様子を見た次の人がまた勇気をもらう。MACAもそういう場になってほしいと思います。
西澤 私は普段の仕事で企画から関わることがないので、コンペでは自分の企画力、実力を試したいと思っています。自分の好きなことを取り入れて、「自分ごと化」できた実感がある。次に応募される方も、自分の表現したいことを発揮してもらいたいです。
八木 挑戦状ですよね。どこかで反対されて断念したけど、これはありだと思っていたアイデアを形にしてメッセージにできる。広告業界としてはR&Dになっているわけだから、こういう場所があった方がいい。
佐々木 コンペは自由に、柔軟に発想できるチャンスとして、またなかなか関わることができない企業や知らなかった商品に触れ、そこに込められた思いを知る機会としてとらえています。今回の動物園協会のように、勉強になることもあると感じました。
賞を取って、一緒に仕事をしている人に「取ったね」と言われることもあり、うれしい反面、緊張も感じます。
樋川 コピーライターというとコピーを書いたり、原稿を書いたりする人だと思われがちです。もちろんそれが本職ですが、企画やアイデアを考えることもできます。コピーライターという仕事の幅広さをもっとたくさんの人に知ってほしいです。だから、コピーライターとして働いている方もプランニング部門に応募してほしいですね。
八木 杉さんも「天狗にならない」と言っていたけれど、賞を取ったら次に何をするのか注目される。「あのときのグランプリの人は何をしているかな」とウォッチしていくことも大事。
コピーライターもコピーを書く人ではあるけれど、それだけではない。デザインだって立体的にイメージしているし。そういう認知を得られると評価も変わっていくと思う。僕の会社でも悩んでいる人はいっぱいいると思うので、ぜひ新しいコピーライターのあり方、進化的原点回帰みたいなことも、コピーライターの応募者の皆さんがMACAを通じて発信してもらえると、とてもよいと思います。