NTTドコモは、10月にアーティスト 藤井風さんが出演するテレビCM「KAZE THEATER」篇のオンエアを開始した。
CMは、映画館の中で一人映像を見入る藤井さんの姿から始まる。うれしそうに笑いながら画面に見入る藤井さん。そこに流れているのは、藤井さんの楽曲をモチーフに自らの手で映像をつくりあげるこの「KAZE FILMS」というプロジェクトに参加する学生たちの姿だ。その熱意や言葉たちに「素晴らしい」と拍手を送る藤井さん。
これは同社が30周年を迎えることを機に、今年3月にスタートした「KAZE FILMS docomo future project」のCM。本プロジェクトは、何かに挑戦したい意志を持っていても、きっかけや手段がなく、一歩を踏み出せずにいる学生が、制限なく自らの可能性に挑戦できるように後押ししたいという想いのもと立ち上がったもの。
企画を手がけたクリエイティブディレクター 高崎卓馬氏は「そもそもは企業広告とは、どうあるべきかを考え直したことから始まったプロジェクトです」と話す。イメージではなく、実体を伴った企業広告をつくるにはどうすればいいか、CD保持壮太郎氏と大きな視点の話をしばらくしていくなかで、ドコモがこれまで子どもたちに多くのプログラムを提供してきたことに着目。これからの時代をつくっていく世代が自分の可能性に挑戦することを、ドコモが後押しし応援していくことこそ、本当の意味での企業広告になるのではないか。この夏に「宝物のような経験」をデザインできたらそれは素晴らしい企業とひとの関係のはじまりになるのではないか、と考えた。
本プロジェクトの最終目標は、藤井さんが書き下ろした楽曲「grace」をモチーフに、オリジナルのショートフィルムをつくること。公式SNSでは55日間、藤井さんの楽曲を流しながら広くエントリーを募った。ドコモは応募のためのガイドラインとして、「アイデアノートの書き方」の映像を公開。参加者はこの曲を聞いて思いついた物語やアイデアを企画書にまとめて応募した。そして2000件近い応募作の中から、30の参加チームが選ばれた。その後、参加チームがオンラインで集まり、ショートフィルムの制作をスタートした。
プロジェクトチームはそれぞれの作品について企画の広げ方などをアドバイス、ドコモは撮影のための機材を貸し出した。また映像ディレクター 林響太朗氏やお笑いコンビ コロチキの映像のつくり方の講義に加えて、藤井風さんの未発表曲の試聴も実施。さらに映像制作のプロである電通クリエーティブXの制作スタッフが、各参加者のチューターを務めた。参加者はアイデアのまとめ方、撮影の許可取り、機材の使い方など、実制作での壁や課題を相談しながら、自分が考えたアイデアを自分の手で映像化していった。これらの作品は、「KAZE FILMS」公式ホームページで9月30日から公開されている。
このプロジェクトの大きなテーマは、「すべての人には、才能がある」だ。藤井さんはこの言葉に感銘を受け、楽曲「grace」を制作。「一人一人の中に広がる無限の宇宙のようなものに、一人一人が気付くお手伝いが出来たら、また一緒に探しに行くことが出来たら、なんて素敵なことだろうと思います」とコメントしている。
「このプロジェクトでは応募された作品に賞を与えたり、すごい才能を見つけることを目的としていません。このプロジェクトに参加することで、隣の人や周りの目を気にすることなく、自分にもこんな才能があるんだ、自分はこんなに自由に発想することができるんだ、ということを自覚して持ち帰ってもらうこと。そして何よりも映像制作を楽しんでもらうことが大事だと考えました」(高崎氏)
音楽を聴いて、その曲のMVを考えたり、曲そのものを表現するのではなく、自分の頭の中に思い浮かんだ物語を映像にする。これは、高崎氏自身の経験も反映されている。
「学生のときに、クラシックのレコードを聴いて、自分が思い浮かんだ絵を描くという音楽の授業を受けました。音楽そのものを絵にするのではなく、そこから発想したものを絵にするという、そのときの経験が自分にとって大きかった。それによって、自分が好きなものとか、いろいろなことに気づけたんです。だから、参加した学生たちにもぜひそういう経験をしてもらえたらと思いました」
映像完成後、参加した学生たちに「曲を聞いてどう思ったのか」「どんな想いで映像をつくったのか」などをインタビュー。それをまとめたダイジェスト映像を、藤井さんに見てもらったのが、10月からオンエアされているCMだ。「子どもたちと対等に向き合って話を引き出すことができ、なおかつ映像の知識がある人がいいと考え、インタビュアーは映像ディレクターの菱川勢一さんにお願いしました」(高崎氏)。菱川さんが学生たちにインタビューした映像では、「曲を聞いて誰かからの恵み、感謝を感じた」「大切な場所があることを思い出した」「どんな嫌なことがあっても、最終的には大体どうにかなるから大丈夫」「自分以上の力が発揮できることに気づいた」など、子どもたちは制作の中での気づきを語っている。「KAZE THEATER」ロングバージョンで一部インタビューシーンが公開されているが、今後このインタビューだけをまとめた映像も公開予定だ。
現在、KAZE THEATERには、小学生から大学生までの参加者が制作した26本の映像が公開中。11月には、参加者を集めたイベントの実施も予定している。
スタッフリスト
- 企画+制作
- 電通+(つづく)+Dentsu Craft Tokyo
- CD+企画
- 高崎卓馬、保持壮太郎
- AD
- 畝見謙人
- CPR
- 和田耕司、村山二郎
- PR
- 藤岡将史
- PM
- 中村広美、鈴木優哉、恒川茜
- 演出+撮影
- 林響太朗、藤代雄一朗
- 助監督
- 伊藤賢
- 照明
- 田上直人
- 美術
- 鴇田清美
- プロジェクター
- 前田正浩
- ST
- 石井大
- HM
- 向井大輔
- CRD
- 高橋亨
- 編集
- 柿原未奈(オフライン)、尾口麗奈(オフライン)、野田哲広(オンライン)
- カラリスト
- 西田賢幸
- MA+SE
- 浅田将助
- BP
- 片山享、高原悠樹、田村顕一朗、諸田裕貴、長谷川充
- 出演者+音楽
- 藤井風