※月刊『宣伝会議』2022年12月号(11月1日発売)では、「メディアDX――アナログメディア×テクノロジーで活用が広がる!」と題し特集を組みました。
ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。
トッパンフォームズ
デジタルイノベーション本部
DC推進部 企画グループ
マネージャー
長原 優氏
トッパンフォームズに新卒で入社後、ダイレクトマーケティング企画やSP企画などのクライアントワークに従事。メガバンクのデジタル戦略プロジェクトでは、MA施策のUIUXの統括ディレクターを経験。2020年より自社の新規事業の立ち上げに加わり、共通手続きプラットフォーム「AIRPOST」のデザインマネージャーとしてUIUX、ブランド開発、広告プロモーションなどの領域で活動中。
Q1. 近年のDXの潮流とは。その中で、どのように広告主にとってのメディア価値を高める取り組みをしていますか。
A. 紙とデジタルの使い分けや併用で施策効果を最大化します。
当社は企業や行政と生活者の橋渡し役となり、個人宛の重要な情報や、広告宣伝に関する情報を直接届けることができるダイレクトメール(以下DM)を取り扱っています。近年ではスマートフォンが全世代に普及し、企業側のコスト削減や環境への配慮などを背景に、DMの分野でもデジタルシフトが進んでいます。一方で紙のDMには保存性・閲覧性など紙ならではの良さがあり、届ける情報や求める効果によっては紙を大切にする広告主も多く、デジタルとの使い分けや併用が重要な戦略となります。
デジタルDMの領域においてはユーザビリティやセキュリティ面など、まだ多くの課題があります。デジタルでも広告主・生活者が安心して情報を取り扱うことができ、情報を通じた顧客体験がさらに向上することを目指して、当社では様々なサービス開発に取り組んでいます。
Q2. DMのDXにより、どのようなデータを取得できるようになりますか。
A. デジタルDMにより、生活者の行動プロセスが把握できるようになりました。
紙DMの最大の弱点は効果測定の難しさと言われています。そのDMをいつ受け取ったのか、開封したのか、それとも捨てたのか、そのDMがきっかけで行動につながったのか。生活者の行動プロセスが見えないため、問題点の把握や次の対策が立てづらいことが課題でした。デジタルDMの場合、これらのデータの取得が可能となるため広告主側もROIやCPR以外のKPIを設定してPDCAを回せるようになります。
また行動データとデモグラフィック情報を掛け合わせて分析することも有効です。セグメント別に曜日や時間を分けて配信したり、デジタルDMに反応しなかったグループには紙DMを送るなど、効果やコストを最適化する提案が可能になります。
Q3. メディアのDXがもたらす、生活者に提供しうる価値とは何でしょうか。
A. 自分が欲しいタイミングで確実に情報を受け取れるようになる。
ダイレクトメールは企業と生活者を1対1でつなぐことができるメディアのため、重要な情報や個人宛のパーソナルな情報を伝えるのに適しています。そのため情報が「確実に届く」ことがメディアの価値に繋がります。過渡期においては、生活者が紙を望むケースもあるため、紙とデジタルのハイブリッドで接点を網羅的に提供することで、情報を確実に生活者に届けることが可能となります。
またデジタルの利点としては、情報が「早く届く」ことも挙げられます。これにより例えば災害時の手続きの案内や、生活者の行動に基づくイベントベースの施策が有効となります。生活者にとっては自分が情報を欲しいタイミングで確実に受け取ることができるようになるため、企業とのエンゲージメントやUXの向上につながると考えています。