11社横断、約80人が集まる共創の場
2022 年9 月、クリエイティブスタジオ「CH:The Creation HUB」が始動した。エルロイを筆頭に、デランシー、RECO、BOLDTYPE、massive などのプロダクション、CG・VFX 制作のサザビー、モーショングラフィック制作のilli、エンタメ領域の企画制作を担うアディクイット、XR 技術などに長けたプロデュースカンパニーCHAMELEON といった10 の関連会社が入居する。さらにグループ外でWeb サイト制作などを手がけるライデンも加わり、11 社から約80 人が集まる共創の場となる。
設立理由について、エルロイの前代表/取締役の和田篤司さんは次のように説明する。「3 つの狙いがあります。ひとつめは【共創】。異分野でコラボし、クリエイティブの相乗効果を狙います。2 つめは【人材の育成強化】。異業種から刺激をもらい成長を促し合い、生産性を高めます。そして3つめは【起業プラットフォーム】になること。映像関連に限らず、CH を通じて新たなクリエイティブ・スタートアップを数多く起業する。これにより日本の創造産業を新たな産業の柱にするべく尽力したいです」。
777 平米のオフィスは、フリーアドレスの執務エリアのほか、映像編集に特化したエディットルーム3 部屋、ミーティングルーム5 部屋、白ホリゾントのスタジオ、機材や制作備品を集めた倉庫も備える。場所や時間を自由に選ぶ働き方を表す「ABW(Activity Based Working)」の概念を取り入れた空間だ。
環境整備には、2017 年にエルロイが独自開発した広告・コンテンツの制作管理システム「MILL」も寄与している。MILL によって顧客、売上、予算、勤怠、備品、経理、精算などが一括管理できる。
「労働時間短縮と制作単価低減の波の中で、制作物のクオリティを落とさずにいかにクライアントに貢献できるか。それは『業務のデジタル化』に全てかかっているといっても過言ではありません」と和田さん。労務管理や精算業務の効率化など、コロナ禍前からDXに取り組み、業務に集中できる環境をソフトとハードの両面から実現した。
専門スキルのシェアや情報交換も
エルロイ 代表取締役の高原成博さんは、「会社ごとの垣根を取り払い他社のワークフローを目の当たりにすることで、互いに教えを請うことも増えました。現場では既にシナジーが生まれています」と語る。全スタッフを紹介する社内ポータルサイトが立ち上がったほか、Slack 上で技術やソフトに関する情報交換が進むなど、交流が活性化。さらにCH で月に2 回、内外の有識者が講師を務める講義「アカデミー」を開講しており、1 社だけでは得にくいノウハウやスキルを共有できるようになった。
毎週金曜には「シャッフル座談会」を開催。各社からランダムに人員を集め、カフェスペースで2 時間ほど交流するイベントだ。社内の機材や設備を活用して自主的にMV制作のプロジェクトが会社横断で立ち上がるなど、新たな化学反応も生まれている。入居する関連会社のひとつ、デランシーの代表取締役 平本恵一さんも相乗効果を実感している。「ちょっとしたやりとりでも刺激になると思います。クリエイションはつながりによって生まれるもの。一人では限界を感じることもあるが、人との関わりで表現の幅が広がります」(平本さん)。
CH には撮影機材も一式揃い、社用車や編集室、制作備品、MILL などを共同で利用できる。各個人がフレキシブルに働き、仕事を心から楽しみつつクラフトマンシップが刺激されるような環境が整った。エルロイや関連会社を含めたスケールの拡大を目指す過程において、和田さんはCH を業界全体の活性化やクリエイターの新たな働き方を模索する「実験場」と位置付ける。
「CH でアンケート調査などを行うことで、クリエイティビティやモチベーションを最大限に引き出す環境づくりを研究していきたいと考えています。座学、働く道具、労働時間、給与、評価制度、企業理念など創造性を高める要因について検証してみたい。その結果として、生産性とクオリティの向上を両立し、クリエイティブ産業のキープレイヤーとして成長していきたいです。また制作系の会社は業務に追われ社会貢献の視座が欠けてしまうことも。せっかく多くの会社が集まるので、収益だけではなく社会や環境への貢献を重視した投資も積極的に行いたい。それが根付くかどうかもひとつの実験です」(和田さん)。
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株式会社エルロイ
URL:https://www.ellroy.jp/