AI で表現を検証、従来比約5倍の効果
2019 年の設立時は短尺のバンパー広告などに特化し、専門性を発揮してきた6 秒企画。現在はWeb 動画からテレビCM まで手がけ、プロデューサー、エディター、ディレクター、カメラマンなど気鋭のクリエイターら約60 人が所属する。さらにサイバーエージェントが2022 年に仲畑貴志さん率いるドラゴン東京を子会社化するなど、グループ全体でクリエイティブ表現を追求できる体制強化の動きもある。
6 秒企画の代表取締役を務める二宮功太さんは、同社の方針について「ターゲティングと最適なクリエイティブの組み合わせに力を入れている」と語る。「オンライン動画広告なら基本的なデモグラフィックや興味関心、行動パターン、行動履歴など多種多様なターゲティングができ、それに合わせた複数パターンの表現の出し分けや効果に応じた差し替えもできる。グループ全体で培ったダイレクトマーケティングのノウハウをブランド広告の表現にも応用する取り組みを進めています」(二宮さん)。
6 秒企画には大手制作会社出身のプロデューサーも多数在籍している。前職ではテレビCM の制作が中心だったメンバーも、現在はWeb 動画、あるいはWeb 動画とテレビCM とのハイブリッドの案件を多く手がけている。環境の変化について、「企画の上流から関わることが増えた」「映像制作のコスト、スケジュール、クオリティの管理だけでなく、広告運用の提案や数字に基づく検証など仕事の幅が広がった」「Web 動画は枠や本数の制約がなく、手段も表現も無限に可能性を追求できる点が面白い」と、各プロデューサーがその実感を語る。
2022 年に制作したディー・エヌ・エーのライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」の動画では、ユーザーのサービスに対するニーズを数カテゴリー抽出。それぞれのニーズに適した動画を用意し、複数パターンを配信した。どのニーズに訴求するとターゲットに響くかを検証し、効果が高かったものを選定。さらにそのニーズに対して新たな表現パターンで制作した動画を入稿するなど、ターゲットごとの最適なクリエイティブの組み合わせを重視した。
この施策では、サイバーエージェントが開発した「極予測AI」のAI による広告効果予測エンジンも活用。過去実績から効果がより高くなるキャストを予測し、それを元にオーディションやキャスト選定を実施した。これらの検証を経て制作した動画と従来の動画を同時に配信し比較検証した結果、従来比で約5 倍の効果を実現した。
数値化が難しいとされてきたクリエイティブの世界。AI を用いた検証について、担当プロデューサーは「抵抗はなく、むしろ改善の指標として有効」と語る。二宮さんも「従来のクリエイティブの在り方を否定したり仕事を奪ったりするものではなく、あくまで客観的な数値によってクリエイターの仕事をサポートするもの」と説明する。
バーチャルプロダクションも活用
グループが持つバーチャルプロダクションなど最先端技術の活用も進んでいる。Meta 社の「Instagram」アプリの未インストールユーザーをターゲットにしたWeb動画の制作もそのひとつだ。事前調査やマクロテストによってターゲットが興味関心を持つワードを抽出し、トリガーとなるキーワード5 つを選出。キーワードごとに複数パターンの動画を短期間で制作した。そこで活用したのが、サイバーエージェントグループが持つ大型LED ウォールを用いたCG 映像とLED ライティング技術だ。
このほか全身の3DCG データや身体の動きを捉えるモーションデータ、音声データなどを取得し、本人の「分身」を生み出すデジタルツインを広告に取り入れる動きも。三菱地所レジデンスの新築分譲マンション
「ザ・パークハウス」の仮想空間「SUPER MODEL ROOM」(2022 年7 月公開)は、モデルの冨永愛のデジタルツインが登場する施策として話題になった。
最近ではYouTube で配信した効果の高い動画をテレビCM として拡張する事例も増えてきた。「明確に数値が見えることで、制作本数や出稿量の増加にも繋がっています。引き続き人材も募集しており、技術を用いて広告効果を最大化する取り組みに興味のあるメンバーと新たな挑戦を続けたい」と二宮さん。グループのリソースを活かし、さらなる成長の道筋を描いている。
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株式会社6 秒企画
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