【前回コラム】「家に置きたくなる」書籍が見つかる、台湾発書店/誠品生活日本橋
コンセプトは「“本”だけでなく、その先にある“体験”までを届ける」
――講座などのイベントや、渋谷の店舗ではカフェを併設するなど、書店でありながら他の業態を展開されています。
天狼院書店全体としては2013年に、初となる店舗を池袋に開店しました。現在は渋谷エリアなどに全10店舗を展開しています。以前からビジネス書の専門書店を開きたいという思いがありました。街やテナントに合わせて、店舗の形を変えていくことが天狼院書店の特徴です。STYLE for Biz店の入るビル内に、客層が重なる男性向けのショップが入店していたことも開店理由のひとつでした。
「本」だけでなく、その先にある「体験」までを届けるというコンセプトを掲げています。全国に数多くある書店のひとつとして天狼院書店をどう活かせるかと考えた結果、カフェやイベントなどクリエイティブな体験の提供を試みました。
店舗に陳列している書籍から情報を得ることはもちろんですが、読書だけでは得られないアイデアもあると思います。そこで講座受講を通じて、本を読む以上の成果を届けたいという思いのもと開催しています。私自身も、文章力を磨く講座に長期的に通ったのち、スタッフとして入社しました。そういう意味でも、講座から得られたものは大きいかもしれません(笑)。
お客さまが一目で理解できる棚づくりを
――永井さんの選書のこだわり、棚づくりの工夫を教えてください。
選書のために月に1回、出版社の方との打ち合わせを行っています。その場で、当店に合う書籍かどうかと熟考し、版元さんからの提案を検討しています。
また、お客さまからの意見も重要視しています。私が店長になった当初は、お客さまから「こんな書籍を置いてみたらどうか」「この書籍は是非置いてほしい」といった意見をいただくことが多く、お客さまの選書眼に助けられていたこともありました。意見をすぐに取り入れることができたのは、小さい書店ならではのことかもしれません。
小規模な書店なので、店舗全体を見回すことも容易です。そのため、ひと目で理解してもらえるような棚づくりを心がけています。以前はジャンル別に陳列していた書籍も、今ではジャンルの垣根を超えた配置にしています。書店側が区別するのではなく、お客さま自身で感覚的に理解してもらい、考えながら見ていただけるような棚を目指しています。
池袋は書店が多い街ですが、大型書店で書籍を見てきた後、「もっと面白い本はないかな」と探されているお客さまが多く見られる印象です。ビジネス書のコアな部分を見ていただいていると考えています。
小さな店舗だからこそかなう、お客さまとの相互コミュニケーション
――若者が多い池袋ですが、どんな客層を想定していますか。
池袋はターミナル駅として老若男女が訪れる街のため、あえてターゲットの想定は行っていません。実際に、会社員の方からファミリー層、学生まで幅広い世代の方に来店いただいています。
門戸を広げておくことで、書籍とお客さまの新鮮な出会いも生まれると思います。そのため、書籍もできるだけ幅広く提案し、どれだけ気になってもらえるか、知ってもらえるかという点はお客さまにお任せしています。
“日本一話しかける書店”として、お客さまとのコミュニケーションを重要視しています。これは小規模の店舗ならではの取り組みです。より近い距離感で接客することとで、満足いただいている印象です。
選書についても開店当初はお客さまからおすすめの本を紹介いただくなど、相互的なコミュニケーションをとることができるのは当店ならではだと思います。
積極的にイベントの開催や講座の配信を行っていることは、当店のカラーとして変わらず大事にしていきたいと思っています。イベントがきっかけで来店し、店舗も見てもらうことでビジネス書と出合い、一冊でも多くの書籍を知るきっかけになってほしいと思っています。
天狼院書店 STYLE for Biz
住所:東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:12:00〜20:30
定休日:なし
担当者おすすめの1冊
『プレゼン思考』
小西利行(著)
この本を読んで以来、“伝える”より“伝わる”ことが重要であると考えるようになりました。
私自身、当店で開催していたライティングの講座を受講生として学び、“伝える”ことについて、十分に学んだ上で入社したつもりでした。しかしこの本を読んだことで、“伝える”という考え方ではまだまだ甘いのだと思うようになりました。
お客さまに接する時、何か文章を書く時と、常に“伝える”より“伝わる”ということを意識するキッカケをもらった一冊です。