消費者庁は、ステルスマーケティング(ステマ)規制を目的に、景品表示法上の不当表示として、ステマを指定する告示を出す方針だ。早ければ2023年秋には施行される見通し。消費者庁は今後、指定告示案に対するパブリックコメントを募り、公聴会や消費者委員会から答申を得るなど手続きを進める。
2022年12月27日、検討会で報告書案を取りまとめた。告示案は「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの。」と整理した。
〈事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示〉が〈広告〉を指し、〈一般消費者が当該表示であることを判別することが困難〉が〈広告であることを隠している〉に該当する。検討の過程では、「当該業者の当該表示」として、「広告を出している企業」まで判別できることを求める文言だったが、削除となった。
報告書では、ステマを生じさせている悪質な仲介業者(=不正ブローカー)についても言及した。ステマが減少しない場合、不正ブローカーを規制できるよう、景表法上の供給主体・責任主体の位置づけを見直し、仲介事業者やインフルエンサーにも規制範囲を広げることを検討事項に挙げている。
現行法での規制対象は広告主。ステマ対策として、SNSなどのプラットフォーム事業者に対して不正レビューに関する投稿の削除要請が必要である、といった提言も盛り込んだ。
景表法第5条第3号の規定に基づき、優良誤認や有利誤認以外の「不当表示」として、ステマを規制する。同規定で規制されている表示はほかに、いわゆる「おとり広告」や、果肉を含まない清涼飲料水などに「無果汁」と記載しなければ不当表示とするものなど、6つがある。うち4つは業種や商品・サービスの内容を限定しており、ステマ広告は、「おとり広告」に次ぐ包括的な指定となる。
ステマ規制の検討は、22年9月16日に開始。河野太郎・消費者相は初会合で、「広告であることを明示しない、俗にステルスマーケティングと呼ばれる広告手法によって、消費者の合理的な消費行動や商品選択が困難になっている。必要とあらば、何らかの規制をしていくことも考えなくてはならない。検討会を通じて、年内に一定の結論を得たい」と、スピード決着を指示していた。
ダークパターンも対応検討
コロナ禍を経て、消費者がオンラインで商品やサービスを購入する場面がますます増える中、従来の規制では対応しきれないケースが出てきている。消費者庁は、ステルスマーケティングの規制の検討と並行して、景品表示法自体のあり方を見直す検討会も開催した。
中長期的な検討事項として挙がったもののひとつに、「ダークパターン」がある。誤操作を招いたり、選択を強制したりするようなデザインを用いたビジネスの手法を指
す。
OECD消費者政策委員会は「ダークパターン」について、「完全な定義は、技術や規制の展開に応じて、時とともに変化する可能性もある」としている。検討会でも「(ダ
ークパターンの)行為類型は多岐にわたり得るため、現行の景品表示法では規制が及ばないものや、景品表示法の規制対象でないものも存在し得る」としつつ、「どんな
対応が可能なのかを検討する必要がある」と位置付けた。
いわゆる「サブスク」の表示についても問題が表面化しつつある。日本広告審査機構によると、決まった料金を継続して支払うことでサービスを利用できる「サブスクリプション」を想起させるような表示でありながら、実際はサービス提供後も支払いが残るローン契約であったり、高額な中途解約金を求められたりするケースが増えてきているという。