ミツカンの「おひとてま。® よだれ鶏」は、2020年1〜8月の8カ月連続で、セブン-イレブンの調理の素カテゴリーの販売個数第1位を獲得したヒット商品だ。同商品の開発に活用されたのが、ぐるなびの外食ビッグデータを基にした「ぐるなびデータライブラリ」だった。
ミツカンは商品開発や提案に活用
「おひとてま。® よだれ鶏」は、鶏肉に下味をつけて蒸した「サラダチキン」にかけるだけで、1品できあがるコンセプトの商品だ。「よだれ鶏」は四川料理のひとつで、中華料理店などでは定番メニューだ。しかし、家庭ではどれくらい需要のある料理か、把握することが難しかった。いわゆるTI値では出てこないメニューだったためだ。
そこで、外食での取り扱い指数を参考にするため、ぐるなびの「外食データベース」で動向を把握。社内外への提案材料として活用した。飲食店で人気が上がっている「よだれ鶏」だが、「家庭でたれをゼロから調理するのは手間がかかる。かけるだけで手軽に食べられるということであれば需要があるのではないか」という仮説が立った。結果は前述のとおりだ。
- TI値
- Table Index。料理や材料、商品の出現数を調査対象食卓数で除し、千分率で示したもの。食卓に登場するメニューを約1000メニューに分類し、数値化している。ライフスケープマーケティング社の登録商標。
商品開発だけでなく、外食チェーンや卸売との商談資料にもデータを使用している。特に「外食の利用意向」や「調味料の嗜好」などは、「背景情報として、提案の確かさを補強するのに役立っている。それによって採用ということではないが、現在の環境を両社で認識する上での目線合わせになっている」(ミツカン 河原裕之氏)。
たとえばミツカンの業務用情報では、外食の「鍋」の22〜23年のトレンドを掲載している。外食の鍋料理で好まれているスープは「和風だしをベースにしたスープ、好んで食べられているのは「キムチ味」など。こうした傾向に沿った商品として、チゲ(辛味)系、すき焼き系などの鍋つゆの素も紹介している。
外食ビッグデータの採用に至った経緯について、ミツカンの河原氏は、「当初は業務用製品の開発や提案が目的だった」と話す。
「それまでは定性的な情報に頼っている状態で、業務用カテゴリーの、特にユーザーについての定量的な情報が見られるのは助かっている。そこから、家庭用製品の開発や提案にも活用の幅が広がってきた。引き続き、貴重なユーザー目線での定量データとして商品開発・営業提案に活用したい」(ミツカンの田中友理氏)
リアルタイムBIで時機逃さない
ぐるなびの外食ビッグデータは、「ぐるなびデータライブラリ」というツールで利用できるほか、個別の案件ごとにぐるなびがビッグデータの分析を行うケースや、毎月2〜4本公開されるトレンド解説レポートでも概要をつかむことができる。
「ぐるなびデータライブラリ」は、いわゆるビジネスインテリジェンス(BI)ツールで、月次でぐるなび加盟の約6万店舗が掲載しているメニュー(=取り扱い)などの情報や、飲食店情報サイト「ぐるなび」上での検索動向を分析できる。エリア別や、「ぐるなび」ユーザーの性別や年齢などとのクロス集計も可能だ。
「データライブラリ」は流通・小売業のほか、食品や飲料メーカーなどの企業が利用している。個別案件でのビッグデータ抽出では、商社や代理店からの相談も増えてきている。
特定のメニューがトレンド化し、飲食店定番メニューになる場合の特徴的な数値の動きがある。先行するのは検索で、後から取扱数が上昇していき、交差する形になる。その後、取扱数が高い位置で安定するようになると、トレンドグルメと言える。
また、「データライブラリ」には、調査レポートを掲載する「レポートライブラリ」というコンテンツもある。月3~4本の消費者調査・飲食店調査・データレポートなど、旬なテーマと経年で実施している調査やデータ分析を掲載している。
「レポートで見られる独自調査は、設問や回答内容を誰が見てもわかるようにまとめられている印象。社内で用いる政策資料にも使用させていただいている」(ミツカンの河原氏)
2022年6月からぐるなびの「トレンドメニュー解説」の利用を始めた、惣菜の製造を手掛ける小売業の加工企業の担当者は、「データの蓄積での奥の深さがあり、そしてタイムリーな情報が得られる」と話す。
中食需要はここ10年ほど続いている。日本惣菜協会の調査によると、特に食料品スーパーでの惣菜販売は、2019年の2兆7407億円から、21年は2兆9470億円に伸長した。専門店そのほかや百貨店、コンビニエンスストアの他業態は、軒並み19年を下回っている状況だ。
「お客さまに、さらに高い品質の味を提供できるよう、研究が必要と考えている。一流の味を目標として設計したい」(担当者)
これまでも食品メーカーなどからの情報提供はあった。「メーカーからの情報は精度の高さはあるが」としつつ、「どうしてもセールス目的であり、メーカーの商品の範囲内での情報になってしまうと感じる。ぐるなびのデータは外食市場全体で、メーカーのフィルターを介さない公正さがある。データの蓄積量も多く、対応できるカテゴリーが広い」と話す。
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