電通グループはこのほど、2023年の世界の広告市場は22年比3.8%増の7409億ドルとする予測を発表した。伸長のほとんどはメディア価格のインフレに起因するもので、米国をはじめとした上位12市場の恒常ドルベースでの成長率は0.6%減。2022年の世界の広告市場は21年比8.0%増の7136億ドルとした。成長率は22年7月の発表から、0.7ポイント下方修正した。
メディア別では、デジタル広告費が同比13.7%増の3944億ドルで、市場拡大のけん引役となっている。デジタルの総広告費に占める割合は55.3%となる見込み。動画広告が7.1%増、ソーシャルメディア広告が13.5%増、検索連動型広告が7.2%増。
テレビは同比1.7%増の1824億ドルで、総広告費に占める割合は、1.5ポイント減の25.6%と予測した。WFA(世界広告主連盟)の推計では、メディア価格の上昇率は地上波放送と有料チャンネルのテレビ(リニアテレビ)が最も高く、米国のほか、イギリスでも19.0%増、インドで13.2%増と、各市場で増加している。4マスメディアではラジオが同比3.6%増の356億ドル。新聞、雑誌はマイナス成長で、新聞は同比5.2%減の303億ドル、雑誌は同比5.5%減の211億ドルとした。
日本を含むアジア太平洋は前年比3.9%増の2358億ドルで、日本の22年の広告市場は同比3.6%増の見込み。日本では渡航制限の解除や、旅行を支援する政府の景気刺激策を踏まえ、22年7月から2.8ポイント上方修正したが、地域平均を下回る。23年は同比1.5%増とした。WFA推計のメディア価格上昇率で最も高いのは「デジタル動画広告」で同比6.5%増。テレビは同比3.6%増とした。
アジア太平洋のトップは中国で、22年は1.9%増の1208億ドルの予測。第1四半期は同比7.2%増と好調だったが、春節後に新型コロナウイルスの感染が再拡大し、第2四半期は同比4.7%減となった。下期は第3四半期に同比3.2%増、第4四半期に同比2.2%増とゆるやかな回復をみせている。デジタル広告が拡大しているが、主要なデジタルプラットフォームではアクティブユーザーの増加が鈍くなってきているという。
地域別で伸長率が最も高いのは北米とラテンアメリカを合わせた米州で、前年比13.2%増の3269億ドル。2022年の米国のテレビのメディア価格は、地上波アップフロントにおけるプライム帯の取引で同比21.1%増の予測。米労働省による産業別・生産者物価指数では、広告会社が2021年10月を境に急伸しており、22年11月は149.33(1995年=100)と、95年以来過去最高水準となった。
電通グループの予測は、21年11月下旬までに北米・ラテンアメリカ、ヨーロッパ・中東、アジア太平洋など58市場から収集したデータを基に、広告会社の手数料や割引などを除いた現地通貨建ての金額を、22年11月の平均為替レートで米ドルに換算している。ロシア市場は除外。
OECD(経済協力開発機構)はG20(主要20カ国)のインフレ率を23年は6.6%、24年は5.1%と予測。日本は、23年が2.0%、24年が1.7%で、世界的なインフレによる広告市場規模への影響はしばらく尾を引きそうだ。