米連邦取引委員会(FTC)は1月23日(米国時間)、「ダークパターン」によって消費者をあざむいていたとして、クレジットスコア照会サービスを手がけるクレジット・カルマ(Credit Karma)に、300万ドル(約3億9000万円)を支払うとする同意命令を出した。パブリックコメント(意見募集)を経て、欺瞞的広告の停止などを含む内容を確定させた。
- ダークパターン
- 企業の収益のために望ましい行動を消費者に取らせ、消費者被害を招くだまし行為。日本における景表法検討会でも「ダークパターンの行為類型は多岐にわたり得るため、現行の景品表示法では規制が及ばないものや、景品表示法の規制対象でないものも存在し得る」としつつ、「どのような対応が可能なのかを検討する必要がある」と位置付けている。
クレジット・カルマは2018年から21年4月にかけ、消費者に「クレジットカードに事前承認されました」「事前承認を受けた人は審査に90%通過します」とうたう広告メールを送り、カード申し込みをさせていた。FTCによると、実際には通過したのは3分の2だったほか、信用機関からの照会によって多くのユーザーの信用情報に傷がつき、ほかの金融商品を将来的に購入・利用しづらくなっていた。
メールの内容はA/Bテストに基づくもので、「事前承認された(pre-approved)」のほうが、「通過する可能性が高い」と示すよりもクリック率などの数値がよい傾向があった。FTCはクレジット・カルマの社内資料などを基に、同社が審査通過の確実性をアピールすることが広告効果を高めて収益に貢献すると認識していたことや、「事前承認されたカードに落ちたが、どういうことか」といった問い合わせが多く、必ずしも通過しない点について消費者が誤解していることを知っていたと判断した。
「クレジット・カルマは、事前承認という誤った表現で消費者の時間を奪い、不必要な信用調査をさせた。FTCは、消費者に害を与え、オンライン商取引を汚染するダークパターンの取り締まりを継続する」(消費者保護局のサミュエル・レビン局長)
クレジット・カルマは、クレジットカードのほか、自動車や住宅、個人ローンなどの借り入れ審査の際に使用される「クレジットスコア」を確認できるサービスを提供している。ユーザーが登録する個人情報のほか、収集したクレジット情報や収入情報など2500項目に及ぶユーザーデータを基に、金融商品のターゲティング広告配信なども手がける。クレジット・カルマのユーザーは米国、英国、カナダで1億人を超えており、米国のミレニアル世代の約半数が登録しているという。米会計ソフトのインテュイット(Intuit)の子会社。インテュイットはメール広告自動化のメールチンプ(Mailchimp)なども傘下に持つ。
同意命令は、排除措置の内容について対象事業者と合意の上、執行する手続き。意見募集と委員会での議決を経て、確定する。裁判で争わないため、迅速に排除措置を講じられるメリットがある。