【前回コラム】「耳の聞こえない生活」を知るのはとても豊かな時間だった(岸井ゆきの)【前編】
今回の登場人物紹介
※本記事は2022年12月18日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。
「トレーニングを重ねながら、ケイコになっていった」
中村:あらためて、12月16日に公開となった岸井ゆきのさんの主演映画『ケイコ 目を澄ませて』。こちらの作品の感想を聞いていきたいと思います。やっぱり、ケイコの役がすごく難しいだろうな、と思うんですね。聴覚障害があることや、 ボクサーという役もそうだけど、 本人もあまり感情を表に出さないタイプで、内に熱情を秘めたキャラクターなんですよね。だから、筋トレする時の表情も半端ない。キャラクターをつくるのが凄く難しかったんじゃないですか?
岸井:トレーニングを重ねながらケイコになっていった、という感覚がありましたね。監督と一緒にトレーニングはしていたものの、じゃあケイコは一体どういう人物で、といったことは全く話していなくて。もっとその場のことというか、こうやったらうまく縄跳びを跳べるかも、とか、今の「フック」、ちょっと遅かったんだよな、とか。そういうやり取りの中からケイコ像が生まれたのか、私の熱情がそのままケイコになっていったのかはわからないんですけど……。 「こういう人物だから、こうしよう」というのは、話し合いも考えも、最初はあまりなかったですね。
一同:へえ~!
権八:なんていうんだろう。この映画が特徴的なのは、BGMがないことなんですよね。音楽がないから、変に感情を誘導される感じもないし、本当にその場にある素材をそのまま見ているっていうかね。だから、岸井さんの目とか、手の動きを追ってしまいますよね。すごく繊細な感情の動きをずーっと追う映画、というか。だから、疲れもするんだけど……(笑)。
人の生活をずっとのぞき見しているというか、じっと見ている感じになりますよね。いい意味で「女優さんが、こういう感情を表現しようとしている」みたいなことを微塵も感じないというか。そういう凄さとか、迫力がありましたよね。
岸井:そこは意識しましたね。「ただ存在する」ということをやりたかったので。何かに驚いたから驚いた演技をするとか、 そういうことではなくて。ここにいるだけで、 この世界を切り取ってくれる人がいる、という感じですね。それに関してはチーム全体の信頼も大きかったし、ここでならそれができる、と思ったので。できるだけ「居る」。ここで生活して、ここに存在している、ということを撮っていただけたらと思っていました。
権八:いや、それは見事に結実していました(笑)。
澤本:さっき権八が「どこにも誘導されることがない」と言っていたけど、それはまさにそうで。もしも、耳が聞こえない方がいたとしたら、コミュニケーションは手話で行うじゃないですか。あとは目ですね。感情をぶつける時も拳でやるから、「ああ、そうなんだな」と。
もしも自分がこういう状況に置かれたとしたら、多分そうなるんだな、と思える。それを見た主人公のお母さまがどう思うだろう、というのも自然に見えるし。ある種のドキュメンタリーをのぞき見している感じがありましたよね。どこにも誘導されないのに、自分がそこを「見ちゃった」という感じが心に響いてくる、すごく素敵な映画だったなと思いますね。でも、岸井さんは怖かったです、やっぱり……(笑)。
一同:(笑)。
権八:殴ったり、殴られたりするのは、別に好きじゃないですよね?もちろん。
岸井: 好きじゃないです。ボクシングは好きですけど、ケイコと一緒で。でも、怖いし、殴られたら痛いし。
権八:そうだよね、お母さんが目を背けてしまうあの感じもわかるよね。ただ、そうは言いつつも迫力がちゃんと出ていて、すごい良かったですね~。
澤本:あとは、三浦友和さんがすごかったね。近くで見るとどんな感じなんですか?
岸井:撮影でご一緒する前に何度かトレーニングをご一緒させていただいたんですけど、その時には私、結構トレーニングを積んでいたので。最初から会長とケイコ、みたいな感じだったんですね。最後までその感じでいましたね。友和さんは、自分のシーンが夜だったとしても、昼から様子を見に来てくださるんですよね。なので、 この映画を撮っているときは「三浦友和さん」という感じではなくて、「会長」でした。 その経験値と、何から何まで知り尽くしているような雰囲気が、こっちまで影響を与えるような大きな背中で。友和さんと一緒にこの映画ができて、本当に嬉しかったですね。
澤本:二人で会話をしているシーンとかが、本当に会長と教え子みたいな感じで。会長が思っていることもわかるし、ケイコが思っていることもわかる、みたいな。不思議な感じで見ていましたけどね。
岸井:そうですね。ケイコと会長はいつも横並びでいるんですよね。手話というのは対面しなきゃいけないし、会話も対面でするじゃないですか?でも、そうじゃなくてふたりはいつも横並びで、話をしなくてもわかり合える間柄なんだ、っていうのが凄く素敵だなと思いました。川でふたりで座っているシーンとかも、やっぱり横なんですよね。「いいなぁ~!」って思って。
澤本:あはははは!
果たして、芸能界の「お友だち」はできたのか?
権八:友和さんとは友だちになれたんですか?
岸井:あはははは!友だちにはちょっとなれていないですけど(笑)。
権八:ホントに?前回出てもらった時に、なかなか芸能界のお友だちができないって言ってたからさ(笑)。撮影の後に、あんまりご飯に行ったりしないって。
岸井:しないですねえ~。あ、でも、友和さんとは行きましたよ、食事に。
権八:あ、もう下の名前で「友和~!」みたいな!?(笑)
一同:あはははは!そんなわけないです(笑)。
中村:ちゃんとLINE交換しました?
岸井:え~、してない~!!
一同:(爆笑)。
権八:でも、ご飯は食べに行ったと?
岸井:はい。終わった後に皆で。監督とか出演者の皆さんと食事に行かせていただいて。
権八:それはアレでしょ?前に岸井さんが言っていた「オフィシャルな食事会」でしょう?
岸井:まあ、そうですね……。
一同:あはははは!
岸井:まあ、そうです。はい(笑)。でも、もう友和さん主催というか、友和さんがお店を決めてくださって行ったので。で、プロデューサーはいなかったです。
権八:かわいそうじゃん、プロデューサー!(笑)なんでいなかったんだろう?(笑)その後どうですか、この一年で。女優さんの友だちとかはできました?
岸井:できてない……(笑)。
一同:あはははは!
権八:できていない?不思議ですけどね、こういう感じなのに。気さくで人懐っこいと僕は思うんだけど(笑)。なんでだろうね?
岸井:いや、終わってから予定を合わせるのとか、大変そうじゃないですか?
権八:まあまあ、そうね。
岸井:そういうのとか。もう、皆の気持ちがわかんない。
澤本:あはははは!
岸井:本当に「食事に行こうね」って言っているのかどうか。
権八:ああ~!社交辞令なんじゃないかってこと?
岸井:もう、永遠にそういう機会がないのに言っているのか、ホントに「行こう」って思ってくれているのかもわからないし。でも、皆これが終わったらいろんなお仕事があるから予定を合わせるのも大変だし。2回ぐらい全員の予定が合わなかったら、たぶんこれ、自然消滅するんだろうなぁ、みたいに先回りしちゃって……。
権八:あっはっはっは!
中村:そういう実現できない約束をするぐらいなら、一歩引いちゃった方がいいかな、と?
岸井:そうなんですよ。寂しくなっちゃうから。
一同:あはははは!
権八:でも、キャラ的にはグイグイ行っちゃっても……。
岸井:いやいや、恥ずかしい恥ずかしい(笑)。
権八:カワイイ!恥ずかしいんだ?(笑)よく「今度ご飯行きましょう!」ってなって「じゃあ、連絡するね」ってなって、実際はしないじゃない、大体?(笑)で、その時にさ、ホントに「いつにします?」とかって言う人がいるじゃないですか?
岸井:その場でね、ありますよね。
権八:その場でグイッと踏み込んでくる人。それ、してみたら?(笑)
岸井:私が?
権八:いや、全然嫌な感じがしない、岸井さんに言われても。
澤本:それ、権八はできるよね?
権八:いや、おれはしないですよ。だって、恥ずかしいじゃん……(笑)。
澤本:じゃあ、おんなじじゃん、そしたら(笑)。
権八:そうそうそう。恥ずかしいよね(笑)。
岸井:やっぱり仕切ってくれる人が誰かいないと。