ここではテーマのうちのひとつ、メンバーの選ぶ「2022年のベストテレビCM」は?についての内容をお届けします。
■登場者
2022 年のベストテレビCM は?
福里:続いてそれぞれの「ベストテレビCM」の発表に移りましょうか。
杉井:私は少し遡りますが、「ひらパー」(ひらかたパーク)の「ジェームズはキャシーの方を」篇です。
「プールサイドの読書は、だいたいウソ。」というコピーの通り、岡田准一さんがプールサイドで読書をしているけど全然頭に入っていない人を演じていて。企画はぶっ飛んで見えるけどそこにはたしかに共感があると思いました。あと一見、商品と離れているように見えて、このCMではひらパーのプールが魅力的に見えるんですよね。ふざけているけど、商品訴求もきちんとしているお手本にしたい15 秒CM だと思いました。
福里:私はプールサイドでも、けっこう真剣に読書してましたけどね(笑)。
鈴木:僕は福里さんがやられているユニクロの「ぼくのユニフォーム」篇です。
このシリーズは各篇異なる桑田佳祐さんの曲が当てられているつくり自体も好きですが、特に斎藤佑樹さんが新しいユニフォームを探すこの回が好きでした。「感動パンツ」という商品との接着もいいですし、新たな門出を応援する着地がすばらしいと思いました。
大石:僕は新日邦「808FACTORY」という工場野菜のCM シリーズの「ひっこした日」篇です。新しい街に引っ越してきた女性が、まだ片付いていない部屋で、レタスにハムカツを挟んで食べる。そこに入る「はじめての街のハムカツはちょっと分厚目でした」というナレーションが、わりと商品に近いコトバなのに、すごく豊かで、効いてて。
スタッフを見たらCD がアートディレクターの水口克夫さん、コピーが谷山雅計さん、水野百合江さんというチームで。CMプランナー不在でこんな素敵なCM つくられると怖いなぁ~怖いなぁ~です(笑)。
福里:こういうCM は、大石くんも得意そうですけどね。
栗田:僕は大塚製薬「カロリーメイト」の「Midnight Train」篇ですね。
これはアレンジを加えたYOASOBI の曲を使っているんですが、ターゲットにより近付き、愛される演出だと思いました。CM というと映像やストーリーに注目が集まりがちですが、音楽の力はテーマとしてもっと重要視されてもいいんじゃないかと。
神田:悩みましたが、僕は三井住友カードの「家族ポイント」のシリーズです。
最近は情報を誇張しているCM が多い分、リアルな描写が効く時代だと思うのですが、このCM は「ポイントの喜びってこれくらいでしょ」「家族の関係ってつかず離れずぐらいな関係性でしょ」と、誇張しすぎない今のリアルをコマーシャルで上質に描いているところに驚きました。
福里:こういうストーリーがシリーズで続いていくCM というのは、今の時代でも伝わるんでしょうかね。ちょっとそこは気になったんですが。杉井さんはどうでしたか?
杉井:挟まれてしまいましたが(笑)。私も神田さんと同じで好きでした。みんなが
薄々感じていた家族観を言語化してくれていて、今の時代らしいCM だと思いました。
神田:一応ストーリーもののCM ですが、必ずしも順番を追って見なくても、それぞれにメッセージが込められて良い意味で独立しているのも今っぽいなと。
山本:僕はマクドナルドの「ビッグマックなんて」篇の15 秒のCM ですね。ずっと前
からある商品に新鮮な印象を加えた感じがすごくいいなと。しっかり商品名がコピー
に入っているんですが、情緒があるなと感じました。
福里:すばらしいですよね。なぜかこちらに「おいおい、勘違いしないでくれよ」と話しかけてくる演出で。見事な15 秒だと思いました。
栗田:最初お店の看板でコピーだけ見たのですが、そそられました。コピーが強い。
山本:「商品が売れるCM」のフォーマットに則っていますが、それ系のCM とは全く違う完成度になっていると思いました。
福里:私は「村田俊平(電通)作品群」が2022 年目立っていたなと。木村拓哉さんと芦田愛菜さんの「タウンワーク」のシリーズ、松本人志さんと山田孝之さんの「Air ワーク」のシリーズ(いずれもリクルート)。メジャーなタレントたちだけど普通とは違うCM ならではの出方で、2 人の関係性も新鮮で。CM でしかできない表現できちんと目立っているなと思いました。
吉兼 僕はサントリーBOSS の「宇宙人ジョーンズ・禁じられた惑星」篇です。勝手に「もうこのシリーズは終わっちゃったのかな」と思っていたら、ラスボスにぴったりな役で中島みゆきさんが登場して。今の時代をちゃんと反映していて、やはり働く人のそばにBOSS があるんだと、表現もメッセージも強いと思ったCM でした。
福里:あれ、まだ終わってませんから!(笑)。2023 年もちゃんと続きますので(笑)。
(……この続きは月刊『ブレーン』2023年3月号に掲載しています)。
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