日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)は、年鑑『Graphic Design in Japan 2023』の掲載作品選考会を開催。厳正な選考の結果、約580作品を入選とし、その中から第25回亀倉雄策賞とJAGDA賞2023を決定した。
「亀倉雄策賞」は、JAGDA初代会長を務め、世界のデザイン界にも影響を与え続けた故・亀倉雄策の業績をたたえ、1999年に創設。毎年『Graphic Design in Japan』出品作品の中から、年齢やキャリアを問わず、最も輝いている作品とその制作者に授与するもの。今年は、岡崎智弘氏、三澤遥氏のそれぞれの仕事が拮抗し、初の2名同時受賞となった。
亀倉雄策賞の選考においては、対象となる作品の中から17作品が最終的なノミネート作品となった。最終選考の一次選考では、選考委員10名がひとり3票を持ち投票を行ったところ、7票と6票がそれぞれ1作品、3票が2作品、2票が4作品に。ここで各選考委員がそれぞれ評価する作品についての見解を述べ、議論を交わした結果、得票上位4作品に議論で浮上した2作品を加えた計6作品(岡崎智弘、関本明子、高田唯、永井一史、林規章、三澤遥の作品)を候補として残すことになった。さらに6作品に対してひとり1票持ちで投票したが、いずれも過半数には届かなかったため、得票上位の岡崎・三澤の両作品を対象として決戦投票を行った。結果はそれぞれが5票の同数となり、さらに議論した結果、いずれも受賞にふさわしい優れた作品という点で意見が一致し、亀倉雄策賞としては初めてとなる2作品の同時受賞が決定したという。
選考委員は、岡崎氏の作品について「コマ撮りアニメーションというありふれた手法を深く追求し、他の追随を許さない領域に達して世界にも類を見ない」「イメージがどのような視覚体験として伝わるかというグラフィックデザインの原点を感じさせる」「ポピュラーなメディアの場で先端的な表現を成立させた」と評している。
三澤氏の作品については「この数年、高いレベルで受賞を競ってきた三澤の仕事に共通するデリケートさを持った作品」「既存の建築資材を活用するなどローコストに努めながら、高いクオリティを保っている」「今回はさらに新たなデザインの切り口を発見し定着させた仕事で、表現の幅の広さを見せた」という評価が寄せられた。
また、その年を代表する優れたグラフィックデザインを顕彰し、後世に伝えるものとして、毎年『Graphic Design in Japan』出品作品の中から、特に優れた数作品に授与されるJAGDA賞には、10作品が選出された。
「JAGDA年鑑」の本年度の編集長は中村至男氏、ブックデザインは石塚俊氏が務めており、6月に発刊予定。
また、第25回亀倉雄策賞受賞記念展は、6月13日よりクリエイションギャラリーG8にて開催される。また、受賞作品をはじめ、年鑑『Graphic Design in Japan 2023』掲載作品の中から約300作品を実物と映像で紹介する「日本のグラフィックデザイン2023」は、6月下旬から東京ミッドタウンデザインハブにて開催が予定されている。
〇第25回亀倉雄策賞
岡崎智弘
受賞作品:放送局の番組コンテンツ映像「デザインあneo あのテーマ」(日本放送協会)
三澤 遥
受賞作品:幼稚園のサイン計画「玉造幼稚園」(玉造幼稚園/ジャクエツ)
※JAGDA賞も受賞
〇JAGDA賞2023
服部一成
ポスター販売サイトの商品「これはリンゴではない」(アワ フェイバリット ショップ)
牧寿次郎
アートイベントのツール「芸術激流 ラフティング+アート」(国立奥多摩美術館/アートセンターオンゴーイング)
永井一史
製菓会社のリブランディングロゴ「Juchheim」(ユーハイム)
葛西薫
作家の戯曲集のブックデザイン「岩松了戯曲集(1986-1999/2000-2022)」(リトルモア)
関本明子
京菓匠のパッケージデザイン「七條甘春堂」(七條甘春堂)
窪田 新
音楽アルバムの発売告知新聞広告「ユーミンをめぐる物語」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
坂本俊太
音楽演奏ウェブアプリケーション「演奏図案」(坂本俊太)
松永美春
飲料ブランドのコマーシャル映像「POCARI SWEAT 手をのばそうよ。届くから。」(大塚製薬)
藤田佳子
複合「香林居」 *新人賞と同時受賞