サントリーホールなどの全国のコンサートホール・美術館、また公共施設の運営管理や広報業務などを手がけるサントリーパブリシティサービス(以下SPS)で、企画・営業を担当している大堀聡氏は宣伝会議のマーケティング実践講座を受講し、学んだことを現場で活かしている。大堀氏がなぜマーケティングを学ぼうと考えたのか、その理由と受講後の変化について聞いた。
せっかくの施設やサービスが知られていなかった
—— 担当の業務について教えてください。
全国で公共施設を運営してきた知見を活かし、より広範な公共施設や複合施設の運営支援を行うために、自治体と直接対話をして提案する業務を担っています。
—— 具体的にはどういった業務ですか。
例えば自治体が公共施設の建て替えや新設を検討する時、また民間企業へ運営業務の代行を検討している際に、構想段階から対話を行っています。目的はその施設がより良くなるように、生活者と自治体が目指すものを最大限体現できるようSPSのもっている運営者側の知見を活かした提案をしています。
—— 受講前はどのような課題をお持ちでしたか。
現職に異動する前の話なのですが、当時の私は文化施設の現場でマネージャーを担当していました。そこで感じた課題は「自治体サービスは意外と地域住民の方に知られていない」ということです。“知っている人だけがお得に利用できている”というように、住民の負担しているお金と利用環境が平等になっていません。せっかくの施設やサービスが本当に必要としている人に届いていないのは、運営している我々としても残念に感じるし、生活者だって知っていれば利用したいというニーズはあるはずなのに、と感じていました。
—— その課題感解決のためにマーケティングを選ばれたのは?
当時、とても尊敬する上司がいまして、その方がマーケティング知識に長けていました。マーケティングの知識を活かして施設を活性化させている姿を見たことが、出発点になりました。そして「気づかずの市場」の発見の重要性や、「既存商材を変えずにマーケットを変更してみる」などのマーケティングの基本的な考え方をその上司から学びました。
—— その後、現職に異動されるわけですね。
マネージャーを一年ほど経験した後、現職に異動しました。異動したことにより業務がBtoCからBtoGへと変化し、自身が対面するのは地域住民の皆様から、各地域の自治体へと変わりました。しかし、自治体が求める提案には、その先にいる住民のニーズの把握が重要です。ニーズを基にした提案をしないことには、地域のためにもならないし、我々が介入する意味がないと感じました。
—— そこで、マーケティングを本格的に学ぼうと思われたのですね。
はい。現場で体感したマーケティングの知識が現職にも役に立つように感じ、もっと深くマーケティングについて学ぼうと考えて受講しました。
ワークや課題をこなすことで使えるスキルが身につく
—— 実際に受講されていかがでしたか?
マーケティングの手法一つ一つを深く学べました。豊富な事例を元に、生徒の反応を見ながら講師の方が深く説明してくれます。そのうえで講座内でワークの時間があり、課題も出ることで、学んだことを自分で実践することが出来ました。そのサイクルにより自分の中に知識が染み込み、営業活動の時にどうマーケティングの技術を応用するかイメージができました。これは、本やYouTubeなどで受け身で学習しているだけではできないことだと思います。
—— 印象に残っている講義はありますか?
1つを選ぶのが難しいくらいすべてが印象的でした。マーケティングの手法はデータを扱うイメージが強かったのですが、人間を知るというか、情緒的な価値やインサイトの葛藤といった人の深層心理に通じるものが大きく、その理解を深める技術がある、ということを知れたことが大きな収穫でした。
また、マーケットにいる人全員がステージの違うターゲットであって、相手のいる階層に合わせて、切り口(アプローチ)を変えるという講義も印象に残っています。
今まではマーケットにいる人をセグメントに分けて、ターゲットを絞ってアプローチしていましたが、逆にその行為が機会損失を招いていたんだなと実感しました。この考え方は、受講前に課題と感じていた、情報の不平等性の是正にもつながるように感じています。
講義後の今は、会話の中で、「その人に必要な介入支援って何だろう?」と考えられたり、こういう階層にいるからこういうアプローチにした方がいいか、と会話の中でくみ取って切り口を変えたりなど、営業のコミュニケーションに応用しています。
—— 今後の展望などありましたら教えてください。
学んだことを活かす、というところでいうと、カテゴリの事実とユーザーの根源的な願いを用いたアプローチを使って、生活者のニーズ・インサイトをしっかりと把握したうえで、提案業務をしていきたいと思っています。
我々SPSの武器は、これまでクライアントや、その先のお客様のニーズに柔軟に対応してきたことによって得た知見です。つまりハードではなくソフトにあるので、シーズからニーズを考えるのではなく、ニーズからシーズを考えるようにしていきたいです。今後、事業領域を拡大する上で、マーケットの探索を行う際、「アンメットニーズから探りシーズを考える」というように、その他にも講座で学んだことを組み込んでいき、マーケットの裾野を広げていきたいと考えています。