パラスポーツの抱える課題の一つである「支援金の獲得」。東京パラリンピックが終わり、パラスポーツ全体で注目度や支援金の低下が見られる中で、新たな機運につながる動きがある。
それが、パラ・パワーリフティング連盟と電通デジタルが2022年10月に開始したパラ選手の「個人スポンサー制度」。スポーツ選手のユニフォームに企業のスポンサードロゴが掲載されるのと同じように、パラ選手を支援する個人の名前がユニフォームに掲載される仕組みを考案し、支援者を募った。
クラウドファンディングを通じて同プロジェクトへの参加者を募集したところ、1カ月余りで目標金額を達成し、最終的には230%を達成した。2023年1月29日に行われた全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権では、パラ3大会連続出場の実績を持つ三浦浩選手をはじめとする選手たちが、完成したユニフォームを着用。会場は築地本願寺で、同寺院での初のスポーツイベント開催ということも相まって、メディアからの注目度も高かった。
支援金を使い、支援者を含めたファンとの交流イベントも開催した。2月4日に、目標達成御礼の「ごちゃまぜパワーリフティングイベント」を同じく築地本願寺で実施。障がい者も健常者も、選手もファンも、老若男女様々なバックグラウンドを持つ人が一緒になって楽しめるイベントとして、パワーリフティング体験や選手によるデモンストレーション、ミニライブなどを行い好評を得た。
本プロジェクトを立ち上げた電通デジタル アートディレクターの石田沙綾子氏は、「電通デジタルに『クリエイティブとAIの力を使って社会をよくしていく』をテーマにした社内コンペがあります。そこで企画が通ったのがはじまりでした。図書館に通って勉強するところから始まり、パラに関わる先輩方からより深く学び、縁をつないでいただき、パラ・パワーリフティング連盟しかない、と確信を持って提案に行きました。パラパワーさんとの出会いから企画もどんどん変わっていき、世界に挑戦する連盟やアスリートの方々に刺激や勇気ももらいながら、実現までたどり着くことができました」と話す。
パラ・パワーリフティング連盟事務局長の吉田彫子氏は「企画がとても面白く、すぐに賛同しました」と当時を振り返る。「今までファンの方々の声があるのはもちろん知っていたのですが、なかなか私たちまで届かなかったのです。このクラウドファンディングを通してたくさんのファンの方に支えてもらっていることが、言葉やロゴから伝わり、今後の活動に向けた勇気をもらいました」。
同連盟 強化委員長の吉田進氏も「これまで普及活動までなかなか手をつけられていなかったのでいい機会になりました。選手の精神面でも確実に影響がありました」と言う。
この活動を見て、他競技の大会主催者やアイドルのマネージメントの担当者から問い合わせがあるなど、水平展開の可能性も生まれている。「バーチャルの世界にも応用できると思いますし、『こんな使い方ができるんじゃないか』の逆提案も歓迎です。もっと多様なクリエイターの方々に参加してもらいたいと思っています」(石田氏)。