※本記事は『広報会議』2023年4月号(3月1日発行)の転載記事です。
DATA | |
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URL | https://fin.miraiteiban.jp/ |
開設 | 2017年3月 |
担当者数 | 5人 |
コンセプト | 5年先の未来の定番の種を探し出す。 |
制作体制 | 年度計画(テーマなど)を前年度に決定し、月に1度の企画会議で具体的な内容や取材先を決定する。執筆は外部のライターに依頼している。 |
更新頻度 | 月7本 |
総記事数 | 約500本 |
効果測定 | PV数やセッション数は把握しつつも、評価基準にはしていない。社内の反応や、インタビュイーの取り組みや価値観を通して「記事が未来について考えるきっかけとなるものか」を基準としている。 |
大丸松坂屋百貨店 未来定番研究所 研究員
榎 洋明氏
中島 実月氏
全国に15店舗を構える大丸松坂屋百貨店は、2017年3月に「5年先の未来定番生活の提案」を目指し、未来定番研究所を発足。同時にその情報発信拠点として、オウンドメディア「FUTURE IS NOW」(以下、F.I.N)を立ち上げた。
未来定番研究所は、2017年に掲げられた同社の中期ビジョン実現を推進する、社長直轄の部門。百貨店の枠にとらわれず、広い視野から価値観の発掘や研究に取り組んでいる。これまで百貨店として培ってきた審美眼を、地域やNPO、有識者などの知見と掛け合わせ、未来の定番となるモノやコトを発明する役割を果たす。
この「未来の定番」となりうる価値観を広める拠点が、「F.I.N.」だ。先駆的な取り組みを行っている多様なジャンルの“時代の目利き”へのインタビューを通じ、「“今”から未来を探る」発信を続けている。
未来定番のヒントを提案
F.I.Nが特にこだわっているのは、「予測された」未来の定番ではなく、「提案したい」未来の定番を取り上げること。例えば、金銭授受ではなく物々交換で仕事をする「おすしカンパニー」の取り組みを紹介する記事では、「お金を介さないことで関係性がフラットになる。自社の資源や資産が何であるかを認識することができる」と未来の定番となりうるヒントをまとめた。
また、連載「47人に聞く、地元の見る目を変えた人。」では、47都道府県それぞれのキーパーソンを取材。全国の自然、人、文化、産業などの魅力や可能性を、その土地に根付いて活動する人の視点で発掘し、紹介している。
間もなく立ち上げから6年目に突入するが、インタビュイーから「こんな面白い人がいるんですよ」と新たな“目利き”を紹介してもらったり、前年度の振り返りから浮かび上がった新たなキーワードが次年度の月間テーマになったりと、それまでの調査研究がヒントや土台となって新たな企画が生まれることも増えてきた。
社員の「未来定番カタログ」を作る
読者ターゲットは年齢や性別を問わず、F.I.N.が取り上げる価値観に共感してくれる人。加えて、これからの百貨店をつくる従業員たちだ。「従業員には、F.I.N.を未来定番のカタログとして活用して欲しいと思っています」と未来定番研究所 研究員の中島実月氏。F.I.N.の社内認知を高めるため、更新情報などをメールや社内ポータルサイトで配信している。記事は外部のライターが執筆しているが、記事末尾に自分たちで「編集後記」を執筆することで「中の人」の温度を感じられるものに。また、未来定番研究所の目線からの気づきをまとめることで、社員に向けて記事のポイントを伝える役割を果たしている。
キーワードで検索性・回遊性を向上
幅広いジャンルの記事を数多く蓄積しているF.I.N.では、訪問者が興味のある記事にアクセスしやすいよう、「注目のキーワード」からも記事を検索できる機能を付与している。人名や連載名のほか、「循環」「逃げる」「分かち合う」など、独自の検索用キーワードを多数設置した。検索性・回遊性が上がったほか、「このキーワードは面白いね」と声をかけられることも多いという。
サイトの評価は「それぞれの“目利き”の価値観を深く理解し、未来を一緒に考えるきっかけとなる記事をつくれたかどうか」。取材した“目利き”とその後のつながりが持てたかなど、定性的な面で測定。PV数を価値基準にしていない反面、興味を引くタイトルや文字数など、読んでもらうために必要な工夫は怠らない。
「F.I.Nでは、ローンチからこれまでに約700名の方に取材をしてきました。そのご縁を大切にしながら、人、モノ、アイデアをつなげる活動により一層注力し、5年先のスタンダードを提案していきたいです」(未来定番研究所 研究員 榎洋明氏)。
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