コロナ禍で直面した観光銘菓ゆえの課題
『白い恋人』は1976年12月に発売した。当時人々の間ではチョコレートが広く親しまれるようになったころで、チョコレートをクッキーではさんだ新しい菓子を開発した。航空機の機内食に採用されたのをきっかけに評判を呼び、北海道を代表するブランド菓子にまで成長。土産菓子としても、数ある銘菓を抑えて全国トップクラスの知名度を誇る。
環境が大きく変わったのは2020年。新型コロナウイルスの感染拡大により観光が自粛され、主な販路を道内に限定する『白い恋人』の売上も減少した。マーケティング室マネージャーの松田次朗氏は「これまでにも、さまざまな自然災害の影響で北海道観光に影響は出ることがありましたが、コロナ禍はより大きな影響を与えました。長年貫いてきた『北海道でしか買えない』という大きな方針を守りつつも、今後の戦略を検討する必要がありました」と振り返る。
46周年という商品と深い縁のある2022年は、中心購買層であった観光客が減少するなか訪れる。46(しろ)という語呂合わせから、商品を盛り上げる年にするため、46周年プロジェクトチームは様々な企画を検討した。
「偉大なブランドに臆することなく、大切な節目を盛り上げるおもしろい企画の実現を目指しました。なかでも目玉として位置づけたのが、SNSを活用した集客キャンペーンです。特約店契約を結ぶ道内各地の正規特約店を訪れて購入を促進する施策ですが、SNSの運用には工数もコストもかかります。また、SNSの実績も十分とは言えないため、限られた人材で、なおかつ誰でも扱えるわかりやすいSNS運用ツールを探していました」(松田氏)
SNSを横断できるマーケティングプラットフォーム
ISHIYAは46周年キャンペーンの土台となるSNSシステムを模索するなか、宣伝会議アライアンス事業部を通じて、SNSマーケティングプラットフォーム『OWNLY』を開発・運営するスマートシェアと出会う。スマートシェア・OWNLY事業部の礒口耀氏は「企業と消費者とのコミュニケーションを創出し、事業の活性化に向けた“橋渡し”をするのが当社の役割です」と話す。
「『OWNLY』はTwitter、LINE、Instagramに対応し、20種類以上のイベントタイプでキャンペーン施策を実施できます。さらに、一過性のキャンペーンで終わらせるのではなく、施策を通じて購買情報やUGC(口コミ)などの様々なユーザーデータを収集し、それを今後のマーケティング施策に活かせる点も特徴です。UGCに関してはブランドや企業にとって、重要な資産だと認識しております。自社だけでなく、競合や市場に関する全てのUGCを収集し、分析および活用まで行うことが可能です」(礒口氏)
礒口氏はISHIYAの「46周年をSNSで盛り上げたい」という要望と、『白い恋人』の市場分析結果をもとに、全国各地に多数存在するファンと密度の高いコミュニケーションを実施し、より深い関係性を構築する狙いを示した。主軸のひとつが、UGCを活用したコミュニケーション施策で、Twitter、Instagramを用いて『白い恋人』関連のUGCを収集し、そのデータをキュレーションして、その結果をLPや商品ページ、SNS投稿などに用いるものだ。さらに、SNSを介して情報が拡散されつつ直接的な売上に寄与する、購入レシートを用いたSNSキャンペーンを提案した。
スマートシェアの提案を受けたISHIYA。松田氏は「当社としてはマストバイキャンペーンを実施したいという気持ちは強くありました。46周年キャンペーンでは、道内外の人たちに400店以上ある正規特約店を訪れて、『白い恋人』を購入して魅力を再認識していただくことがテーマとしてありました」と社内意向と合致する部分を強調する。
「スマートシェアの提案には、『白い恋人』ファンに着実にリーチする見込みがありながら、広告を一切使わない点にも惹かれました。当社はいままで、積極的に広告を打つ戦略を展開してきただけに、費用対効果は大幅に高まると感じました。当社が掲げる目的を、効率的かつ確実に実現する施策になると判断しました」(松田氏)
SNSを活用して話題性のある企画を実施
2022年4月、ISHIYAは『白い恋人』46周年を記念した特設ページを開設するとともに、『OWNLY』を運用した様々なSNS施策を開始した。先行して実施したTwitterやInstagramによる『フォロー&ポストキャンペーン』では、SNS上で完結させる施策のほか、地元プロサッカーチームや音楽フェスなどのリアルイベントと連動させ、フォロー増加とUGCの創出を促した。礒口氏は「Instagramのキャンペーンはフィード投稿を行うため、新規ユーザーにリーチできないという欠点があります」と課題を挙げたうえでこう続ける。
「ISHIYAさんのユニークな点は、新規ユーザーも来場するリアルイベントとリンクさせたこと。一般的なマーケティング・販促チームではSNS部門とリアルイベント部門は別々に稼働するため、一体となった施策が生まれにくい傾向にあります。画期的な試みができたのも、新しい事柄に柔軟にチャレンジできる企業文化の存在が大きいと思います」(礒口氏)
さらに、かねてから考えていた『偉大なブランドに臆することのない、おもしろい企画』を実施する。第1弾として、『白い恋人』が約1年分当たるLINE連動マストバイキャンペーンを展開。LINEの友だち登録、同商品の購入レシート画像の送信が応募条件であり、破格のプレゼント規模による話題づくりと販売促進に寄与した。「46(しろ)という語呂合わせから始まった企画とあり、『1年分なんて食べきれないよ』といった、くすりとくるコミュニケーションの創出を狙いました」と松田氏は解説する。
第2弾としては、『白い恋人』オリジナルクッションプレゼントキャンペーンを実施した。包装パッケージ型のカバーを外すと、菓子本体を模したデザインのクッションが出てくる、当選者の驚きを生む仕様だ。
フォロワー数、友だち数は倍増 数字面でも大きな成果
幅広い施策に取り組んだ効果は、数字にも表れた。2022年4月の支援開始から約半年間で、Twitterのフォロワー数は約2万人から約4万3000人と倍増。Instagramでもフォロワー数を堅調に伸ばした。また、企業アカウント立ち上げ時から伴走したLINEの友だち数は、約1万5000人にまで上る。
46周年記念施策について、松田氏は「今回はTwitter、InstagramのフォロワーやLINEの友だちを増やすことを前提に実施し、数字面でもしっかりと成果を出すことができました。礒口さんと一緒に取り組む以前は、SNSは『未来のツール』のような遠い存在だと感じていましたが、施策を重ねるうちに『SNSの中にいるのは人』と腑に落ちてきました。それにより、人を楽しませようとする楽なスタンスで施策に向き合えました」と手応えを話す。
収集した情報資源をもとに、新たな施策につなげていく
松田氏は「次のフェーズでは、ブランディングや認知度向上のため、得られた“資源”を活用していこうと思います」と今後に言及する。松田氏が“資源”と話すのは、キャンペーン施策の応募条件であるユーザー情報、レシート情報である。数千点にもなるレシート情報は、ユーザーの購買動機や購買パターンを紐解く重要なヒントになる。
これまでのISHIYAとの取り組みを振り返り、礒口氏は「広告費を使わずにフォロワー数や友だち数を増やせたのは、松田さんをはじめとしたISHIYAさんが、様々な施策をきちんと積み重ねた結果です。レシート情報分析にも、地道な過程を大事にする『ISHIYAさんらしさ』が表れているのではないでしょうか」と語る。
「Instagram公式アカウントのユーザー体験を最適化するサービス『Findry』の活用も検討をしております。SNSを起点とし、ユーザーの気持ちに合致した導線を設計することで、ISHIYAさんとユーザーとの繫がりを強くして行きたいです。スマートシェアとしては、これからもサポートしていけたらなによりです」(礒口氏)
新たな施策の手応えと心強いパートナーのもと、松田氏は今後の展望を語る。「『白い恋人』をはじめとした土産菓子を取り揃えるISHIYAは、北海道観光の再興なくして発展はあり得ません。今後もスマートシェアさんと共にSNS施策を進展させつつ、将来的にはSNSを活用してお客様が喜び、正規特約店も当社もどちらも潤うオムニチャネルを実現したいです」。
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