Web広告のようにポスティングの効果も可視化
竹下(ワタミ):当社では2018年11月に、ワタミが長年培ってきたから揚げのノウハウと、実家が玉子焼き屋さんのテリー伊藤氏のノウハウをかけあわせた新業態「から揚げの天才」の出店をスタートしました。現在ではFC店を中心に東北から関西まで54店舗あります。看板業態だった居酒屋「和民」運営の時代から、オンライン・オフラインを使い分けた販促の経験はあったものの、から揚げの天才はテイクアウトがメインとなる、新たな業態のため、これまでのナレッジが生かしきれないところからのスタートでした。
特にチラシポスティングにおいては効果の見えづらさから砂漠に水をまくようなイメージさえ持っていました。売上を拡大するための施策の打ち手がなくなってくると、ポスティングを実施するも、いまいち反響が把握できない。効果測定も、チラシにつけたクーポンの使用率など、解像度が高いとは言えませんでした。オフライン施策においてもオンラインのような詳細な効果測定ができないものかと考えていたとき、ラクスルさんからお話をいただきました。
近藤(ラクスル):今回ワタミさんと取り組んだのは、これまで効果の可視化が難しかったポスティングチラシによるオフライン販促の効果をオンラインで取得する方法を通し、OMOマーケティングの成功パターンを検証するというものです。企業の販促担当者の中でも、チラシポスティングは「効果は不透明だけれどなんとなくやらなければならない」という意識が常態化しています。
しかし、オフライン施策であってもオンライン同様CPA(顧客獲得単価)やインプレッション数を基に、施策の改善や意思決定ができる、そういったデータを取得できる仕組みを提供したいと考えていました。
二次元コードに対する消費者意識の変化が後押し
近藤:今回の実験では、「から揚げの天才」の店舗業態(駅前店舗、ロードサイド店、商店街内店舗など)ごとに商圏となるエリアを選定し、チラシデザインのABテスト、チラシ内のどの二次元コードが読み込まれたか、タイミングなどを分析し傾向を調査しました。
「から揚げの天才」という決まったプロダクトに対しての受け取り方は、エリアと居住者層によって違いが生まれます。こうした商圏を把握することで、利用意向の特徴を見出し、ユーザーに最適化した効果的なチラシ施策へとつなげていきます。
ここ数年の電子決済の急速な浸透などを背景に、生活者の中で二次元コードに対する認知は一気にあがりました。さらにスマートフォンの中に読み取り機能が常設されているので、二次元コードに対して疑問を抱く人はほとんどいません。こうした生活者の意識の変化を受け、二次元コードの読み取りによる効果測定を実施しました。
エリア販促の最適化の鍵は商圏の地域性の把握
竹下:もちろんこれまでも出店の際は、店舗における商圏の定義づけは行っていました。しかしあくまで肌感覚で「線路を越えたらそこは商圏にはならない」など手探りでセグメントしていました。それが今回の実験を通じて「ここまで詳細にわかるのか」という驚きがありました。
実験は12月のクリスマス期間に行い、チラシの表面にはファミリーパックやクリスマスプレート、特別価格など複数人向けのメニューを記載。裏面には単品メニューやUber Eats(デリバリー)、公式アプリなどの案内を掲載しました(図)。例えば関東の駅前店舗では店舗から0~800メートル以内のエリアAと800~1500メートルのエリアBでは読み込まれるコンテンツに大きな差が生まれました。エリアA ではUberEats、公式アプリの順に、エリアBでは特別価格、クリスマスプレートメニューの順でアクセスが伸びました。
この店舗は駅周辺のエリアA は個人世帯が多く、エリアBは住宅街に位置しており、同じ地域でも店舗から800メートル以上離れると、需要が全く異なることが発覚しました。例えばこうした結果があれば、エリアA とエリアB でチラシデザインを大きく変更するという意思決定も可能になります。
ポスティング前の認知獲得でチラシの反響が2.8倍向上
近藤:チラシはユーザーごとに最適化したコンテンツを作成することで、読み込まれることが分かりました。そのうえで、複数チャネルを掛け合わせチラシの効果を底上げすることができるのではないかと仮説を立て、もう一つの実験を行いました。
竹下:居酒屋の「和民」のリブランディング業態である「焼肉の和民」のチラシの配布実験です。映画館で動画広告(シネアド)でブランドを認知させてからチラシを渡した層と、認知なしでポスティングした層(店舗沿線エリア)との読み取り率の違いを検証しました。結果、映画館配布は沿線エリア配布と比較し、読み取り率が2.8倍以上となりました。
また、映画館配布では予約フォームへのアクセスが沿線エリアの倍以上となり、事前認知が来店への意欲につながることも判明しました。
今回の2つの実験をきっかけにオフライン販促の成果の可視化の解像度をあげるとともに、オンライン・オフラインにとらわれない、複数チャネルを掛け合わせ店舗販促の効果を最大化できる施策の実現を目指します。
販促管理システムで集めたデータを店舗販促に活用
近藤:当社が提供する法人向け販促管理システム「ラクスル エンタープライズ」では今回の実験のような店舗・拠点ごとの利用実績を本部で集約し、データを基に各店舗に合わせてカスタマイズした販促支援を行うことも可能です。そのほか、販促物の個別発注や製作の一元管理、店舗間でのナレッジ共有などの機能も有しています。当社では今後も店舗運営を行う企業の販促活動に貢献できるようサービス向上に努めていきます。
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