味の素「Cook Do 香味ペースト」のTikTok投稿が大きな反響を獲得した。TikTokの広告メニューのひとつ「Spark Ads」を活用したクリエイター投稿が1024万インプレッションを超える結果に。「香味ペースト」のマーケティング担当を務める山﨑誠也氏は、「#チャー活の話題化、認知拡大ができたと考えています。マーケターとTikTokクリエイターの連携をさらに高められれば、もっとよいコンテンツができるのではないか、という手応えを得られました」と話す。
「#チャー活」をキーワードに、「#香味ペースト」を用いたチャーハンづくりを促す、統合キャンペーンの一環。9月初旬〜11月中旬のキャンペーンの中で、TikTokを活用した施策は10月末までの火付け役を担った。まず、タイアップ投稿を実施したのち、9月中旬から一般ユーザーを対象にしたサンプリング投稿を実施。TikTokクリエイターや一般ユーザーの投稿を広告として配信し、再生回数を伸ばす「Spark Ads」を展開。話題の火種を絶やすことなく、コンテンツを投下した。10月からはテレビCMやほかのプラットフォームにも出稿した。
TikTokでは、「Spark Ads」の活用で1024万インプレッションを獲得したほか、エンゲージメント率は5.6%と高く推移。購入促進につながったことも伺える。ほかの施策との相乗効果も合わせ、「香味ペースト」の出荷数は、9月は前年比102%、10月は同比110%と伸長した。同ブランドを含む「半練り中華だし」市場全体は9月が同比99%、10月は同比94%と逆風が吹く中での拡大となった。チャーハン自体の食卓出現頻度(TI値)も9月は同比103%、10月は同比106%と伸びている。
「デジタル施策に対する小売り企業の皆さまの興味関心も高まっていると感じます。商談のフックにもなり始めていますし、デジタル広告は商品を動かすのか、店頭回転につながるのか、という点において、バズを生むことで寄与している部分はあると考えています。テレビCMだけでなく、デジタル施策も販売促進のバックアップとして用いる、というのは今後もっと広がるのではないでしょうか」(山﨑氏)
クリエイター選定の要点
成果の要因は、TikTok施策の中核を担ったクリエイター選びにあったようだ。
「オリエンテーションでは、その方の普段からの投稿の世界観を壊さないことに注意しました。私たちから過剰にコントロールしてしまうと、広告色が強くなってしまい、結局のところ、視聴されないものになって逆効果です。翻せば、あとから制限をかけないからこそ、最初のクリエイター選定が非常に重要なステップだったと思います」(山﨑氏)
クリエイター選定を担ったのは、味の素 食品事業本部 広告部でメディアプランニングやバイイングを担当している冷水秀行氏だ。事前に「チャーハンに関連したUGCの量、チャーハン関連コンテンツの中で人気のもの、ターゲット層とクリエイターのつながりを見た上で」(冷水氏)、TikTok for Business公式のクリエイターマッチングツール「TikTok Creator Marketplace」で料理関連の投稿をしているクリエイターを選定。「200人ほど確認をしました」(冷水氏)。その際のポイントはおおよそ次のとおりだ。
・KPIを達成できるクリエイターかどうか
「PR投稿や直近の30投稿のうち、再生回数で下位5本を基準にしました。全体の平均再生回数を見るときは、100万回再生など、平均を引き上げてしまう投稿は除いてもらい、KPIを達成できる見込みがあるかどうかを判断しました」(冷水氏)
・フォロワー数より再生回数
「再生回数が多い人をピックアップしています。フォロワー数は、直近で増加傾向があるか(=コンテンツが支持されているか)という観点で見ていました」(冷水氏)
・視聴者の興味が動画の内容に向けられているか
「たとえば、コメントが容姿などに偏っている方は除く、ということです。内容に視聴者が興味を持っているか、クリエイターの方も説明能力が高いと感じられる方をピックアップしました」(冷水氏)
その中から、自然に再生回数が伸びたものを選び、「Spark Ads」で広告としても配信した。
例:https://www.tiktok.com/@keitaro072/video/7141272524632902914
「複数のクリエイターをアサインしたのは非常によかったのではないかと思います」と話すのは、TikTok for Businessの楊洋氏だ。
「味の素さまの事例では、少ないクリエイターですべてを伝えようとするのではなく、クリエイターごとに訴求ポイントを分けていました。たとえば、ある投稿では調理の手軽さに絞る、また別の投稿ではおいしさをシンプルに表現する、ということです。そうすることでユーザーにもストレスなくメッセージが伝わります。接触の機会も増えるので、全体の再生回数を担保できる効果もあります」(楊氏)
クリエイターごとに再生のされ方に違いがあることもわかってきた。
「調理系の投稿は、中華鍋を振ったときの音がするほうが、シズルもあって食欲をそそり、関心を集めるのに寄与したようです。また、レシピ系のクリエイターによる投稿は、そのほかのジャンルに比べ、再生数の勢いは下がるものの、保存数が多くなりました。調理する際に見返しているのではないか、と思われます。動画の新鮮さもさほど関係なく、投稿から時間が経ってからの広告配信でも、エンゲージメント率が高めに推移しました」(冷水氏)
TikTokでは、レシピのような実用性の高い投稿も多く再生されるようになってきた。「保存数については、いまのTikTokを反映したエピソードだと思います」と話すのは、TikTok for Businessの安田岳人氏。
「レシピなどのような、実用性のある動画を含めて、保存して見返す行為が一般的になっているというのは、当社でも認識しています。ユーザーが幅広い年齢層に広がり、より生活に根付いたと理解しています」(安田氏)
「鍋キューブ」への波及も
山﨑氏は、今回のTikTok施策について、「大きな話題を生みたい一方で、やはり広告と表示されるため、見ていただけないのではないか、という懸念は正直ありました」と振り返る。
「しかし、結果としてはそうした懸念を跳ね返してくれるものになりました。広告だから、というよりも、生活者の関心にあった魅力的なものは見られるし、そうでないものは見られない。今回は、新しい生活様式もあってできませんでしたが、マーケター本人がクリエイターに製品の特徴や歴史、どんな点が支持されているかを、熱意をもって伝えられると、よりよいコンテンツができるのではないでしょうか」(山﨑氏)
味の素は、「香味ペースト」での成果を受け、鍋用調味料「鍋キューブ」でもTikTokで広告を実施した。これには、「香味ペースト」で実施した投稿が波及し、料理系で人気を集めるTikTokクリエイターが自発的に投稿したことも後押しとなった。「鍋キューブ」も認知拡大につながり、コールセンターに若年層から商品を褒めるような内容の連絡もあったという。
「次回以降は、キャンペーン全体により〈立体感〉を持たせたい」と話すのは冷水氏だ。
「TikTok広告の『TopView』を用いたり、オーガニック投稿や『Spark Ads』と合わせてCM素材の動画配信をすると、投稿動画の横のつながりが生まれ、『#チャー活』そのものの認知がさらに大きく取れるのではないかと思います。オリエンで説明する商品の訴求点も複数用意し、よりクリエイターさんが本音から押し出したいポイントを見極められるようにできればと思いました」(冷水氏)
「今回のケースは、TikTok広告の機能特徴を、統合キャンペーンの中でご活用いただけた好例でした。TikTok for Businessは、フルファネルをサポートできる広告配信サービスですが、一方で、必ずしもTikTok広告だけでマーケティングの課題すべてを解決することはできません。キャンペーンの中で果たしたい目的に応じた手法があるので、ひとつのパーツとしてご活用いただけたらと思います」(安田氏)
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