【前篇】タクシーの車内は欲しいものに出会うきっかけが生まれる場所に
今回、紹介するのはニューステクノロジーが提供する「タクシーサイネージメディア」。「日本のメディア」モニターサービスを通じて、「KANADEMONO」を手掛けるbydesignとの購入体験コンテンツを導入した施策を実施。本記事は前篇・後篇の2本立てで公開。
前篇では、コロナ禍など不測の事態を乗り越え進化するタクシーサイネージメディアの今を紹介した。後篇となる本編では、「日本のメディア」モニターサービスで、ニューステクノロジーの「タクシーサイネージメディア」を活用した、「KANADEMONO」を手掛けるbydesignの事例を紹介する。
サイネージのサイズアップに合わせて、アドメディアから情報発信メディアへ
東京都内最大級12,500台に搭載されている「GROWTH」を運用するニューステクノロジーは、タクシーサイネージメディアの新たな可能性を探るため、その試金石として2022年10月にオリジナルコンテンツとしてタクシー内の情報番組「HEADLIGHT」を開始。その番組との取り組みとして、bydesignが手がけるカスタマイズオーダーの家具ブランド「KANADEMONO」が、「HEADLIGHT」の各コーナーで紹介された。
その効果はどのようなものだったのか。ニューステクノロジー 代表取締役の三浦純揮氏、bydesign 取締役社長の石川森生氏、同社のマーケティングゼネラルマネジャーの松本好司氏に話を聞いた。
ニューステクノロジーでは、2022年10月に「GROWTH」の大幅なリニューアルを実施。タクシー利用者に一歩先の新しい移動体験を提供するべく、新しいコンセプトとして「移動時間に、新体験を。」を掲げ、ハード・ソフト(放映コンテンツ、広告メニュー)ともに刷新した。
この刷新のタイミングで、自社制作の情報番組「HEADLIGHT(ヘッドライト)」の配信を開始。MCにはフリーアナウンサーの青木源太さんとタレントの山崎怜奈さんを起用。「知る、買う、出かける。新体験ぞくぞく。」を番組テーマとし、旅行やグルメ、スポーツやファッション、車など幅広いジャンルを取り扱い、週替わりでタクシーオリジナルの情報コンテンツを放映している。
タクシー車内の画面に表示されるQRコードから買い物が楽しめる「買いタク」や、注目の自動車やバイクの試乗レポートをテストドライバーがお届けする「TEST DRIVE」、リポーターによる東京の新スポット体験レポート「東京新体験」など、これまでのタクシー内動画になかったコンテンツラインナップとなっている。
これまでBtoB企業からの出稿が7割を占めていた「GROWTH」だが、「HEADLIGHT」では広告出稿企業の半数近くがBtoC企業と、これまでとは異なるクライアントを獲得している。
番組内の多様なコーナーで20秒のオリジナル広告を放映
ニューステクノロジーでは「HEADLIGHT」の存在により、今後ますますBtoC向けにビジネスを展開する企業のタクシーサイネージ活用が増えていると見込む。こうした仮説に基づき今回、「日本のメディア」のモニターサービスを利用し、bydesignが手がけるカスタマイズオーダーの家具ブランド「KANADEMONO」とのコラボレーション企画を行った。
「KANADEMONO」の主軸は木の天板と金属脚を組み合わせて作る「THE TABLE」というテーブルのプロダクトで、そこにサイズオーダーの要素を掛け合わせることでお客様の空間にぴったりパーソナライズされた家具を提供。販路をオンラインに限定する、家具市場においてD2Cビジネスの確立に挑む、挑戦的ブランドだ。
「HEADLIGHT」のコーナーである、画面に表示されるQRコードから買い物が楽しめるコーナー『買いタク!』と、東京の新体験スポットを紹介するコーナー『東京新体験』にて、11月28日週から3週連続で「KANADEMONO」を紹介。20秒という短い放映時間の中で、自宅・オフィスどちらにも合う「KANADEMONO」の魅力を訴求し、タクシーを利用するビジネスパーソンの認知向上だけでなく、購入を促す要素まで詰め込むこと目指した。
SNS広告の効果が弱まっている今、新たなメディアの可能性を試した
「これまでSNSをメインにリターゲティング広告を活用して、そこからのコンバージョンで販売へと結び付けてきた」と、「KANADEMONO」の成長理由を説明する石川氏。しかし、ある時期からSNS広告にる集客効果に限界を感じるようになったという。
「BtoCにおいてはSNS広告が中心。同時に当社の場合、建築士やインテリアコーディネーターの方が施主への提案時に選んでいただけるケースが増えているので、BtoBの訴求も必要でしたが、ビジネスパーソンに絞ったターゲティング広告は現状のWEB広告が得意な領域でないため、別のアプローチも必要と考えていました」(松本氏)。
そこで、東京23区のタクシー利用者のうち7割以上がビジネスパーソンという顧客層へのアプローチができるメディアとして着目したのがタクシーサイネージメディアだった。車内空間に特化したコンテンツには工夫が求められるが、今回は視聴後のアクションに貢献することを目指し「体験型」の動画コンテンツでアプローチを行った。
動画コンテンツの内容は1週ごとに変え、1週目は組み合わせが500通りにもなるバリエーションを訴求。2週目は在宅勤務などで注目度が上がっている実用的なケーブルマネジメントを備えた美しく整った作業環境が作れる良さを伝えた。3週目は体験型ショールーム KANADEMONO BASEにおいて自分だけのテーブルの組み合わせが試せるカスタマイズの豊富さを表現。それぞれ「KANADEMONO」の魅力について切り口を変えて紹介していくクリエイティブ手法をとった。
「テレビの情報番組だと4-5分かけて紹介することもあると思いますが、これらのコンテンツは20秒。その分、多様な角度から魅力を詰め込むことを目指しました」(三浦氏)。
放映後の期間の問合せ件数が、単純計算で1.5倍に
今回の出稿の反響については、「SNS広告と比較すれば、大きな数字の伸びがあったわけではありません」と石川氏。しかし「これまでは媒体ごとに細かく成果を見て、広告出稿の調整をしてきましたが、個々の広告出稿単体での効果測定にそれほど意味はないと考えています」という。「ひとつの施策だけでコンバージョンに至るわけではありません。複数の施策を組み合わせたカスタマージャーニー全体で評価する必要があると思いますし、その観点からすると、今回の施策は効果があった、と我々では結論づけています」(松本氏)。
「家具選びは認知から選定までタイムラグがあるため、11月28日から3週間の出稿で、その期間に急な反響があったわけではありませんが、とくにBtoCの広告出稿の効果が下がりがちな年末年始の期間、さらに1月中旬くらいまでの問合せ件数が単純計算で1.5倍になりました」(石川氏)。
タクシーサイネージメディアの力を測るためにその間、他の広告出稿におけるパラメータは触っていないという。ニューステクノロジーによるブランド調査においても、広告接触者は非接触者に比べて「KANADEMONO」の認知、特徴認知、HPアクセス、SNSアクセスの指標が高い結果に。
認知率は55.2pt差、SNSアクセス44.6pt差というように、認知のみならず、認知後のアクションでも効果が出ていた。しかも認知者は個人年収600万円以上、世帯年収900万円以上がそれぞれ約3割を占めるなど、高収入層へのアプローチが実現できたことも明らかになった。
これからのタクシーサイネージメディアに何を期待するのか?
今回の施策を通じて、石川氏はタクシーサイネージメディアにどのような期待を抱いたのだろうか。
「今は動画主体の時代ですが、SNSで動画を流しても個人にカスタマイズされすぎ、リーチの規模を担保するのが難しい。だからこそ、タクシー利用者というセグメントを対象に動画で広告を打ちたい企業は多いはず。これまでBtoBの広告が溢れていてある意味では慣れていましたが、情報番組のように新たな情報が得られるメディアとして認識されるようになれば、さらに多様な可能性が考えられると思います」(石川氏)。
さらに松本氏は「今回、ニューステクノロジーさんには、20秒という時間の中で『KANADEMONO』の魅力を伝える動画制作のために、試行錯誤をしていただきました。今回の効果も認めていますが、タクシーならではのターゲティング、クリエイティブやサイネージの使い方が突き詰められていくことで、さらに効果が高まると期待しています」と続ける。
「効果があるからこそ、これまでもBtoB企業を中心にご出稿いただいています。情報番組の立ち上げや、今回の『KANADEMONO』さんのようなBtoC向け商材の広告など、タクシーサイネージメディアの価値が変わろうとしています。改めて注目していただくと、新たな発見や使い方がある。自ら変化し続け、メディアの価値を高めていきたいと思っています」(三浦氏)。
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