「踊る」がテーマ 学生が制作した 映像5作品を表彰
「TYO 学生ムービーアワード」は、コンテンツプロデュースカンパニーのTYO が、次世代の才能の発掘と育成、さらには、映像業界全体の発展に寄与していきたいという思いから開催している。コロナ禍での見送りを経て3 回目の開催となる今回は、「踊る」というテーマから発想した60 秒のショートフィルムを募集した。
金賞に選ばれたのは、上川林太郎さん(神戸芸術工科大)の『Tribe X』。アフリカのグロ族をモチーフにしたCG 作品で、グロ族のギャング同士が対立しダンスで解決していくストーリー。満場一致の金賞となり、「音楽、映像、CG のセンスが圧倒的」「踊りの高揚感を見事に映像にしている」と評価された。
企画にあたっては「グロ族のお祭りでかぶるお面の装飾を取り入れたい」という思いがヒントになった。「自分にとってガソリンスタンドは不気味な場所。そこで何か事件が起きてダンスで解決できたら面白いと思ったんです。終盤の金魚が飛び交うパートは、ルネ・マグリットのシュルレアリスムに影響を受けています」(上川さん)。
映像コンテストへの応募は初で、映像の制作期間は1 カ月ほど。音楽制作も得意としており、楽曲は自ら1 日で仕上げた。
審査員の佐藤渉さん(TYO / WHOAREYOU CM ディレクター)は本作について、「編集やアングルも丁寧で、素人の仕業ではないクオリティ」と絶賛。「古典的なイメージと現代的なイメージを組み合わせた独自性のある映像。審査員に媚びることなく、自身の好きなシュールな世界観を表現している点も良かった」と総括した。
銀賞は、柏井翔矢さん(城西国際大)らのグループ制作作品で、手足を拘束された女性によるタット(手や腕を使ったダンス)が印象的な『手のひら』。実写で「踊る側」と「踊らされる側」を行き来する男女の攻防を描いた。特別審査員を務めた「振付稼業air:man」の2 人は「映画『パルプ・フィクション』を思わせる設定。ダンスをそのまま表現するのではなく、物語にダンスが寄り添う演出が素敵でした」と評している。
このほか銅賞は伊藤愛理さん(金沢美術工芸大)の『踊り場』、土屋遥さん(女子美術大学短大)の『せんめんじょ』、吉田昌史さん(立命館大)の『「挑戦」』が選ばれた。
TYO 代表取締役社長の早船浩さんは「3年ぶりの開催でますますレベルが上がっていて、学生の皆さんの情熱を感じました」と総評を述べた。「広告映像には常に課題やテーマがあります。広告映像を中心に手がけるTYO 主催のアワードなのでテーマをどう表現したかを重要なポイントとして審査し、受賞作はこの点が突出していました」と話し、次回の積極的な参加を呼びかけた。制作現場で在学中からアシスタントを経験する学生も増えており、TYO では今後も学生のチャンスを広げる場を設けていく。各受賞作品は公式サイトで公開中だ。
各賞受賞作品はこちら
金賞
■『Tribe X 』 上川林太郎
神戸芸術工科大学 芸術工学部 映像表現学科 デジタルクリエーションコース 1 年
受賞コメント:作品のアイデアは、アフリカのグロ族のお祭りのダンスやお面、装飾が格好よいと思ったところから生まれました。グロ族のギャングの対立が起きても、ダンスで平和に解決するというストーリーです。生まれて初めて応募したコンテストで金賞をいただくことができ、とても嬉しいです。
企画+ディレクター+3D デザイン+アニメーション+編集+作曲/上川林太郎
銀賞
■『手のひら』 柏井翔矢(グループ応募・代表者)
城西国際大学 メディア学部 メディア情報学科 映像芸術コース 3 年
受賞コメント:この作品には、男が少女を踊らせていたつもりが、実は手のひらで踊らされていたという2 つの「踊る」があります。私は自分がプロデューサーを務める作品で日本一になるのも目標のひとつです。数ある多くの作品から銀賞を受賞できたこと大変嬉しく思います。
企画制作/ KASHI Pro.
企画+監督/柏井翔矢
撮影+CG+編集/国吉真舟
照明/荒健太郎
MA/横川一
音楽+振付/永島有彩
出演/中島花音、栗秋イブラヒン
銅賞
■『踊り場』 伊藤愛理
金沢美術工芸大学 美術工芸学部 デザイン科 3 年
受賞コメント:「踊る」というテーマで視聴者に楽しんでもらうために、自分自身が楽しむことを念頭においていました。中学生の頃に「踊り場」で「踊る」という設定を思いつき、今回、そのアイデアを映像化できました。この映像をご覧いただいた後に思わず踊り場で踊ってもらえると嬉しいです。
企画+ディレクター+アニメーション+編集/伊藤愛理
■『せんめんじょ』 土屋 遥
女子美術大学短期大学部 専攻科 造形専攻 デザインコース 1年
受賞コメント:今までの人生で賞をもらったことがないので、すごく不思議な気持ちです。自分にとって「踊る」ことは誰かに見せることではなく、個人的なこと。見てもらうのが恥ずかしいくらい自分をさらけだした作品となりました。受賞できると思っていなかったので本当に嬉しいです。
企画+ディレクション+アニメーション+編集/土屋 遥
■『「挑戦」』 吉田昌史
立命館大学 映像学部 映像学科 3 年
受賞コメント:銅賞を取ることができ、とても光栄です。この作品は、大学受験期の消えるに消えない不安や、思春期特有の個人が抱える問題が立ちはだかっても、負けじと好きなことに挑戦する女の子を表現しました。1 カット、1 カットにこだわってつくったので、自信に繋げていきたいです。
監督+企画+演出+編集/吉田昌史
撮影/水野太朗
照明/西中新
サウンドオペレーター/高悠也
音楽/ wa-iz
お問い合わせ
TYO Inc.
URL:https://tyo.co.jp/