旅エッセイで半生を振り返る 『じゆうがたび』発売開始
中村:え〜、まずはですね。毎回ゲストの方にお願いしている「20秒自己紹介」というのがありまして。これ、何度来ていただいても自己紹介していただくというコーナーになっていまして(笑)。
宇賀:はい(笑)。
中村:この「すぐおわ」は広告の番組ということで、ご自身の自己紹介をラジオCMの秒数 20秒に合わせてやってください、というコーナーです。
宇賀:はい。
中村:まあ、何でも構いませんので。
宇賀:わかりました!
中村:では、どうぞ!
カーン♫
宇賀:フリーアナウンサーの宇賀なつみです。この度、2月22日に初エッセイ本『じゆうがたび』(幻冬舎)が発売されることになりました。私の1秒……。1秒じゃないや、一番の趣味である「旅」をテーマに、これまでの半生を振り返るような内容になっておりますので、ぜひよろしくお願いしまーす!
カンカンカン♫
澤本:すごい!間違えたのに、ちゃんと(笑)。
宇賀:「一番」ていうのを1秒って言っちゃった……(笑)。10秒に引っ張られて(笑)。
澤本:裏で言ってたからね。
宇賀:ははははは。
澤本:これはじゃあ、ついに2月22日に?
宇賀:そうなんですよ、もうすぐです。
中村:はい。『じゆうがたび』。これは、ちょっとどんなものなのか、お話を。
宇賀:そうですね、もう一番の趣味が旅で。旅がそのまま私の人生であると言ってもいいかな、ぐらいに思っているんですけど。その旅を振り返りながら、55の旅のエッセイでこれまでの半生も振り返っていく、みたいな内容になっていますね。だから、幼少期から学生時代、あとは就職活動とか局アナ時代、そして、どうしてフリーランスになって、なぜ事務所に入らずにひとりでやっているのか、ということが全て読めばわかるような内容になっていると思います。
中村:え、「55旅」あるんですか?
宇賀:55旅あります。これ、目次を見ていただくと何年の何月にどこっていうのが全部書いてあるんですけど。
澤本:じゃあ、ここに目次があるのでちょっと見てみると……。ホントだ、1章「出発」からね。
宇賀:2章「着陸」3章「帰路」4章「聖地」5章「新天地」っていう形になっているんですけど。もし、気になる場所とかがあれば(笑)。国内海外、いろいろ混ぜてみたので。
澤本:あ、ほんとですね。国内と海外が半々ぐらいですね。
宇賀:いや。55中、海外は18ぐらいじゃなかったかな……。
澤本:あ、本当ですか?結構ある気がしますけどね。でも、場所というよりかは、一番気になるのはフリーになる気持ちを固めた場所っていうところですかね。
宇賀:ああ~!それがまさにですね。3章の最後。「なるようにしかならないよ 2018年6月ハノイ」っていう。私、ベトナムで「辞める」って決めてるんですよね。
澤本:それ、どういうことですか?
大事なことに気づいたのは、いつも旅の途中だった
宇賀:なんか、大事なことに気がつくのっていつも旅の途中だな、って思っていて。日々忙しく過ごしていると、どうしてもやらなくちゃならないこと、仕事とか家事をこなすのに精一杯で、自分の心と対話する時間ってあんまりないじゃないですか?意識してつくらないと。
澤本:たしかに。
中村:俯瞰できないですよね、自分を。
宇賀:うんうん。で、旅の途中ってやっぱり「余白」があるから、そもそも海外に行ったら自分の年齢とか肩書とか所属とか役割って本当に関係なく、ただ「自分」としてそこにいて。自由にものごとを考えたり、想像したりする時間があるので。その中で、自分の本当の気持ちに素直になれることが多いんですよね。
だからこそ、大事なことは旅の中で決める。いつも運命が動いたのは旅の途中だったな、ということを思い出して、これをテーマに書こうということになったんですよね。
澤本:ふう~ん。
中村:それじゃ、逆になんとなく自分の中でモヤモヤしているものがあるから、ちゃんと決めたい気持ちもあって「旅に行こう!」みたいなこともあるんですか?
宇賀:はい、それもあります。単純に「夏だから海で泳ぎたい!」とか「冬だからスノボしたい!」とかで行くこともありますけど。「あ~、なんか最近忙しすぎるからダメだ。旅に出よう!」みたいな。
中村:ああ~、なるほど。
宇賀:ちょっと自分の時間がなさすぎるから無理やり旅に出て、自分の声を聞こう、みたいなこともあります。
中村:めちゃくちゃいいっすね!それで、ベトナムのハノイに行った時の「なるようにしかならないよ」という見出しがあるんですけど。これは、どんなことを思われたんですか?
宇賀:それまで局アナとして10年やってきて、本当に刺激的で贅沢な経験をさせていただいたんですけど……。最後の1年ぐらいって正直、同じ場所でずっと「足踏み」をしている感覚だったんですね。それが好きっていう人ももちろんいるだろうけど、私の場合はやっぱり「どの方向にでもいいから、一歩前に進んでいたいな」っていうのがあって。
ベトナムって、ゆるいじゃないですか?空気もダラリーンとしているし、東南アジア独特の匂いとかもあるし。街の人たちも割とマイペースに昼間から地べたに座ってお茶を飲んで過ごしているのを見て、「ああ~。なんか、どんな形でも生きてはいけるな」という風に思えたっていうか。
それで、市場でずっと座ってカゴを編んでいたおばあちゃんが、ニーッと笑ってこっちを見ていたんですよ。で、10秒ぐらいずーっと見つめ合っていて。何も言葉はかわさなかったんですけど、「まあ、なるようにしかならないよ」って言われている気がした、っていう話です……(笑)。
中村:なるほど!
澤本:じゃあ、そのおばあちゃんに言われたんですね?
宇賀:そう。「なんとかなるよ」って。でも、「なるようにしかならないよ」とも言われたなって。そっか、どうせなるようにしかならないんだったら、会社を辞めよう!って思ったんです。
澤本:ほお~、すごいなあ……。じゃあ、ベトナムに発たれる羽田か成田までは、そこまでのことはさほど考えていなかった?
宇賀:うーん……。本当は「会社を辞めて独立してみたい」って思っていたんでしょうけど、その声を聞こえないふりをしていたと思います。怖いから。
澤本:なるほど。それが急に聞こえて目の前に「発言者」が現れたと。
宇賀:これ、なんか怖いですね(笑)。怖い話みたいになっていますけど。でも、本当に全部「思い込み」なんですよ。人生も結局、「つくり話」じゃないですか?
澤本:はいはい。
宇賀:自分がどこで何をどう感じて行動するかっていうのは、自分でつくるしかないので。だから、まさに「ベトナムで決めた」っていうことですかね。
澤本:へえ~。
日記を読み返すことで「あの日」の記憶が蘇る
中村:あとは55の旅の中で、これは結構自分を変えたな、みたいなポイントってありますか?
宇賀:いやー、いっぱいあるんですけどね~。でも、ひとつフリーになる一個手前の話でいうと、「7年後の未来 2013年9月 ニース」っていうのがあるんですけど。私、東京オリンピック・パラリンピックが決まったっていうニュースが入ってきた時に、ニースにいたんですよ。
澤本:へえ~。
宇賀:スポーツキャスターをやっていたんですね、『報道ステーション』(テレビ朝日)で。で、「うわ、本当に決まったんだ!」と思ってもちろん興奮しましたし、嬉しかったんですけど。はて、7年後に私は何をしているだろうか?と考えた時に、正直「もう、スポーツの仕事はしてないかな……」って思っちゃったんですよね。それも、もし東京にいて、いつものスタッフさんや仲間に囲まれていたら「うわ~、みんな7年後まで頑張ろうぜ〜!」みたいになっていたかもしれないんですけど。やっぱり海外にいて、自分で考えて「うーん、7年後は34歳か……。何をしてるかな?」と思った時に、その時に考えたことを手帳に書いてあって。それを今回、振り返って読んだんですけど。
澤本:うんうん。
宇賀:「番組の方向性とかスタッフの意向とかには関係なく、主観でものごとを伝えていたい」って書いているんですよ(笑)。
澤本:すごいねえ。
宇賀:面白くないですか?そんなことを思っていたんだ?って。
澤本:へえ~。じゃあ、結構そういう言葉を書き留めている方なんですね?
宇賀:あ、そうですね。小学校高学年からずっと手帳に日記を書いていて。最初はおばあちゃんにサンリオの可愛いキャラクター手帳を買ってもらったのになんにも予定がなくて。書くことがないのが寂しくて。で、「〇〇ちゃんと遊ぶ」とか書くようになったんですね。そしたら、それがクセになって。「毎日、ハイライトを一個つくりたいな」って思うようになって。その日にあったことを2,3行で誰に会って何を感じたとか書くようになって。で、長い時には1ページぐらいブワーッて書くようになって。それが今でも続いているっていう感じですね。
澤本:ふう~ん。ずっと続けていらっしゃるわけですよね?そういうのって、例えばパン!と開いて、そこに書いてある文字を読んだら、その日に戻りますか?当時の記憶って。
宇賀:それが、戻るんですよ。
澤本:へえ~!
宇賀:私もびっくりしましたけど。たとえば、男性に「好きだ」って言ってもらえる章、2章の最後に「ヒロイン失格 2011年3月 熊本」っていうのがあるんですけど。これは、古舘伊知郎さんにいきなり電話をして怒られるっていう話なんですよ……(笑)。これも、電話をしたことは覚えているんですけど、正直言って細かいやり取りは忘れちゃっていて。
中村:別に、酔っ払って電話したとか、そういうことじゃないんですね?
宇賀:酔っ払ってじゃない……(笑)。あ、でもちょっとだけ、入ってたのかな?
中村:あっはっは!
宇賀:この勢いで、どうしても「抱えていた思い」を誰かに伝えなきゃ!って思ったんですよ。
中村:真面目なお話でね。
宇賀:そうです。で、いきなりお電話してしまったんですけど。その時に言われたこととか全部書いてあったんです。振り返ったら。
中村:へえ~。
宇賀:それを読んでバーッと思い出しました、その時のシチュエーションを。なんか渋谷の裏路地みたいなところで電話をかけたんですけど……(笑)。そのシーンを思い出したというか。
中村:ちなみに、どんなことをご相談したんですか?
宇賀:当時はまだお天気キャスターで。入社初日にデビューしたのは本当にありがたくて、運が良かったとは思うんですけど。でも、1年経っても2年経っても私、天気しかやっていなかったんですよ。で、他の局も含めて同期たちは本当にいろんなことをやっていて……。スポーツ取材をやったり、バラエティ番組をやったりしているのに。「私は別に、“お天気お姉さん”になりたかったわけじゃないんだけどな」っていうのがずーっとあって。
でも、最初の1年はもちろんこれをしっかりとやろう、と。で、2年目も「あと1年は頑張ろう」と。でも、3年目の春を迎えようとしてもまだ何も変化がないっていう時に、「不安に思っている」ことをまずは知ってもらわなきゃいけない、と思ったというか。
中村:で、そしたら?
宇賀:そしたら「欲張り過ぎです」って言われました(笑)。
中村・澤本:あはははは!
宇賀:あとは「おれには何の決定権もないんだよね」っていう話もしてもらいましたね。まあ、そうなんですけど。でも、最後にちゃんとありがたいお言葉もいただいて。それを私は前向きに解釈して、また次につなげていくっていう話ですね。
澤本:へえ~。じゃあ、時間って文字から飛んで、記憶が蘇るんですね。
宇賀:蘇るんですよ、書いておくと。本当忘れちゃうんですけどね~。でも、忘れちゃうのがもったいないから、ちゃんと書いておこうって改めて思いました。
中村:そうですね。本に結実するわけですからね。
宇賀:そうなんですよ。「何年何月のどこ」っていうのは、書いていなかったら多分、覚えてないですから。
澤本:たしかに。