22年の足踏みから脱却へ
アサヒビールは3月30日、吉本興業と共同で「スマートドリンキング(スマドリ)」のプロモーションを始めた。停滞気味のノンアルコールテイスト飲料などの販売に発破をかけ、お酒を飲める・飲めない、飲む・飲まないの境界のない飲用スタイルの普及を図る。
「ダウンタウン」の浜田雅功さんをはじめ、吉本興業の芸人らを起用した。イメージソングの配信や期間限定店舗の出店、お笑いライブの開催などを行う。店頭ではアルコール度数で商品を選べる陳列やメニュー提案など販促を強化する。アサヒビールの松山一雄社長は吉本興業とのコラボレーションに「ふだん成し得ないようなインパクトを出せるのではないか」(松山社長)と期待を寄せる。
「スマドリ」は、お酒を飲まない、飲めない人もターゲットに含めたアサヒビールのプロジェクトで、2020年に始めた。「ビアリー」や「ハイボリー」のヒットを受け、2021年のアルコールテイスト飲料の売上金額は前年比126%に伸長。しかし、22年は同比99%と足踏みしている。
伸び悩みの要因のひとつは認知度の低さだという。22年度は東京・渋谷に専用のバー「SUMADORI-BAR SHIBUYA」をオープンするも、認知度は13%に留まった。認知が高まらない理由について松山社長は、「コミュニケーションが商品に寄り過ぎたことも原因としてある」と話す。
「たとえば『ビアリー』は、『微アルのビアリー』と打ち出して初年度からヒットしたが、スマドリと直接的に結びつけることができなかった。23年度は、スマドリは生活文化という文脈でやっていきたい」(松山社長)
ノンアルコール・微アルコール飲料の飲用者数自体は伸びている。アサヒビール マーケティング本部長の梶浦瑞穂氏は、「カテゴリーの飲用者は20年の1500万人から22年は1800万人と増えている。23年度からは、スマドリのプロジェクトを通じ、ノンアルコール〜低アルコール飲料のある飲用シーンが楽しいものなのだと訴えていきたい」と話す。
「従来のお酒の代替品としての扱われ方から、抜け出せていないという反省もある。笑顔の生まれる、楽しめるスタイルなんだということが浸透できれば」(梶浦氏)
3月30日には「[飲めなくても]ええねん」「[飲むならそれも]ええねん」「[何を飲んでも]ええねん」と、浜田雅功さんのほか、漫才コンビ「ブラックマヨネーズ」の小杉竜一さん、漫才コンビ「ミキ」の亜生さん、「3時のヒロイン」の福田麻貴さんの4人が歌う動画の配信を始めた。
浜田さんはプロジェクトの発表会場で「〔お酒を飲める人としては〕『もっと飲んだらええやん』とか言うけど、飲まない人は『う〜ん…』と思っているかもしれない。何を飲んでもいいとなれば、飲みの場も楽しくなるでしょうし」と趣旨について述べた。動画のイメージも、浜田さんの自宅での飲み会だという。
松山社長は「グループとしても、スマートドリンキングは5年、10年かかっても実施、浸透するまでやるという考え」と意欲的だ。社長就任後に打ち出したブランドマネージャー制度についても「各ブラマネには、スマドリに積極的に関わって自分のブランドの拡大に生かしてほしい」と話す。
「ブラマネ制度は、ひとつのブランドをひとつの企業ととらえ、ブラマネはブランドのすべてのことについて多面的に経営していく存在。スマドリもその一つの側面のひとつ」(松山社長)
電通デジタルとの合弁会社スマドリについては、「スマドリは特定の商品カテゴリーに限定されないし、必要があればサービスの開発も必要になるのではないか。〔企業の〕スマドリを中心に掘り下げていきたい」とした。