経済産業省はこのほど、物価高を背景とした流通業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進について取りまとめた報告書を発表した。DXを支援するスタートアップ企業をまとめた事例集も公表している。4月5日に発表した。
2022〜23年度にかけ、売上原価や電力料金が増大したことで、中小小売業では営業損失が広がる恐れが強い。検討会の試算によると、中小小売業の損益構造で営業利益の平均割合は18〜20年度で0.1%。22年度の予測では赤字に転じてマイナス6.3%、23年度はマイナス7.1%となる。
事例集で取り上げた22の事業は、22年に実施した「SUPER-DXコンテスト」の一次審査を通過したもの。Eコマースの支援や、需要予測や発注、配送の効率化、スタッフの生産性向上、省人化などがメインだが、広告の配信を支援するものもある。
課題は小売業の人時生産性の低さだ。特に中小の飲食料品の小売業は1687円で、同じ中小の製造や情報通信と比べ1200円ほど低い。報告書でも、流通業でDXが進展しない理由について、「一番の理由、背景は『働いている人が忙しく、そこまで考える余裕がない』ため」と記している。
中・長期的には収益自体の拡大も欠かせない。物価の上昇幅は22年度がピークになる一方、今後数年間は続く見通し。消費マインドの向上、社会全体の賃上げによる可処分所得の向上、価格転嫁への理解の浸透など、マクロなアプローチも焦点となりそうだ。