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【ご報告】本が完成しました!
尾上:いやー、やっとできましたね!本が。
嶋野:できた!
尾上:完成まで、ほんとに長かったですね。この連載が始まったのが2020年9月ですから、なんと2年半かかっています。
嶋野:本ってこんなに作るの大変だったんだね。何度頓挫しかけたことか…
尾上:そんな中で、半分以上は書き下ろしましたからね。
嶋野:そうだよね。編集者の方の偉大さと尊さを感じましたね。尾上さん、この本のポイントはなんですか?
尾上:我々が広告の仕事で身につけた技術を、個人で商売する方にも使えるように紐解いたことではないでしょうか?ハウトゥー本とはちょっと違う、本質から考えると言いますか…
嶋野:そうですね。個人的には「読みやすい」のもいいと思います。仕事や移動の合間にささっと読めて。読んだ人が「自分だったら」と考えるためのワークシート例もあるのでぜひ使ってみて欲しいです。
尾上:あと、僕ら自身もいろんなお店の方から学んでいって、そのエッセンスを入れているのも特徴かもしれません。僕らの学びを新鮮にお届けしたい的な。
嶋野:大事なテーマになっている「客観力」も、お話を伺っていく中で見つかったキーワードだったりね。
尾上:商売をしているうちに見えづらくなる、客観的な視点の鍛え方ですね。
思えば、僕らの仕事ってクライアントの「客観」から始まったりしますし、そこは手助けできそうだと思いましたね。いやー、長かった。嶋野さんのガチ説教も3回くらいありましたっけ…
嶋野:あの時の尾上くんのヤバいエピソードは全世界に公開して、世界中から説教を集めたいところですね。と、長くなってきましたが、今日は本の「はじめに」の部分を公開しますので、ぜひご覧ください。
はじめに(書籍より転載)
嶋野:はじめまして、広告プランナーの嶋野裕介です。
尾上:広告プランナーの尾上永晃です。わたしたちは普段は広告やPR、SNSでのキャンペーンを設計しています。
嶋野:ざっくり言うと、商品やサービスを知ってもらって購入してもらったり好きになってもらったりする企画を考える仕事ですね。飲食やファッション、地方自治体と幅広いジャンルを担当しています。
尾上:で、そんな2人がなぜこういった本をつくるに至ったのかですが、 2020年の春頃。家の近所でコロナの影響を受けて閉店する店が相次いでいまして。「好きだったあの店も閉めてしまうんだな」と見つけては寂しい気持ちになり、なにか助けになれることがあったらよかったのに、と思っていました。とは言っても、客の立場でできることは、その店に行くことくらいで。
嶋野:一方で、わたしたちの仕事で培ったノウハウを活用したらまた違った貢献ができるのではないか、とも思いました。それで、後輩である尾上くんにそんな相談をしていたんですよね。
尾上:われわれ2人は、広告のクリエイターとして日々企業の課題に向き合っていろんな広告をつくってきました。最近は広告も幅が広くなってきており、いわゆる広告の幅を越えて商品をつくったりすることもあります。
嶋野:企業の悩みごとを聞いてそのもととなる課題を見つけることで、形にとらわれずにアイデアを考え、解決する仕事とも言えますね。
尾上:はい。そこから、街なかの商店やネット上の個人商店にも、そこで培った知見を提供すれば役に立ててもらえるのではないか? と思うようになってきて。
嶋野:あと、これは個人的な思い出ですが、わたしは大阪で商店街が3つ重なる場所で生まれ育ちまして。そこにたこ焼きを出す駄菓子屋があって、小さい頃によく通っていたんですね。そこのおばあさんは、いつもはニコニコしてたのに、あるときぼそっと「なんでウチより、あの店が人気なのかね」って真顔で言ったことがあって。その言葉が妙に記憶に残ってまして。
尾上:なるほど。お店をやってる人は、多かれ少なかれそういう気持ちを持っているのかもしれませんね。
嶋野:そうなんです。同じような商品を扱っていても、お店によって人気に違いがあることがある。それで思うのは、知られていなければ、どんなにいい商品でも届かないんだってことです。
住んでいた商店街には、たくさんの個人商店がひしめいていました。競争も激しかったですが、生き残る店はいつもサービスの質だけではなく、新聞のチラシやミニイベントなど、知られる努力もしていた気がします。
まさに地元に本社があった松下電器の創業者である松下幸之助さんも「よい商品ができたら、それを宣伝することが我々の義務であり、使命である。よい商品ができれば、宣伝せずとも勝手に広まるという考えは、迷信である」とおっしゃってますしね。
尾上:よい商品を作っていたなら、知られるはずだ。というストーリーを信じたい気持ちもありますが、なかなかそうじゃない面もありますよね。
いま、 BASEやShopifyなどのネットショップ開設支援サイトにより気軽にお店がつくれるようになったことで、商売を立ち上げる人はどんどん増えています。コロナ禍がきっかけとなり、既存の店もネットや SNS での告知など新たな販路 拡大にトライしはじめています。これからさらに、多くの個人や企業がネット ショップや SNSを通じてビジネスをすることになるはずです。
嶋野:そこで、さまざまな上手な知られ方をしているお店にインタビューをさせていただいて、うまく知られているお店が何を考えているのか、何をやっているのか、ということを記事として発信してきました。この本はウェブメディア「アドバタイムズ」での連載がもとになっているのですが、わたしたちも多くの学びや気づきをもらいました。と同時に、われわれが普段やっている仕事から学びを共有できる部分もあるなという思いが強くなっていきまして。
尾上:なので、学んだことと本業で培ったものをまぜて共有するっていう感じの本となっております。本業からの知見で言いますと、わたしたちが仕事をするときに大切にしているのは、ただ大きな声で伝えるだけでなく、「自社のサービスや商品を、お客さんが興味を持つような見せ方にして伝える」ことです。
嶋野:そのために最も大事なのが、「客観的な視点」だとわたしたちは考えています。広告の仕事でも、まず企業や商品の「実際のところ、この商品の何が最も魅力的なのか?」を探し出す部分に多くの時間を費やしますが、それができるのは、わたしたちが外からの視点で、客観的に冷静にその価値を見つめることができるからなのです。この本では、「お客さんが興味を持つ点」を正しくつかむための力を「客観力」と呼び、その身につけ方を伝えていきます。
尾上:まず自分を知るってことですね。孫子も「敵を知り己を知れ」と言っています。敵(競合相手)を知ることを説く本は多いけれど、己を知るための本はあまりない。そんなふうに感じたのも、この本を書こうと思った動機の一つですよね。
嶋野:就活でも恋愛でも、自分の魅力を客観的に知らずして、うまくいくことは少ないですよね。商売だって同じです。世の中に自分のお店しかないなら別に知られ方を気にしなくてもいいですが、実際は無数の競合がいます。そして、お客さんとのつながり方も伝え方も無限にある。そんな時代だからこそ、みなさんがご自身の商売の魅力を再発見し、届けたい相手に上手に伝えるための一助になればと思います。
尾上:とか言いつつ、ここまで読んでくださった方の中には「もうそんなの知ってる(やってるよ)」とか「そういうまどろっこしいのはいいから具体的な知られる方法をちゃちゃっと3秒で教えてよ」と思われる方もいるかもしれないので、そういう方のためには、すぐに実践できる「 SNSで知られるプロの技17」を用意しました。
嶋野:でも、なるべく流れで読んでほしいです!
本のご感想やレビュー、お待ちしております
嶋野:という感じになっております。ご購入いただけた方からのご感想や、Amazonレビューなどもどしどしお待ちしております。
尾上:まだ発売から数日ですが、早くもnoteで熱い感想を書いてくれている方もいらっしゃって。嬉しい限りですね。
嶋野:本当に、少しでも皆さんの商売の助けになれたら嬉しいですね。
尾上:初版は、宮司さんに製本所に来てもらって、印刷したての本に商売繁盛の祈祷もしてもらいましたからね。
嶋野:なんなら本の表紙も招き猫になっているので、置いておくだけで商売繁盛の助けになるかも…?
尾上:刊行記念イベント(詳細下記)もあるのでぜひ。豪華ゲストを迎えてお送りします。参加いただいた方には特別なステッカーも!
嶋野:お待ちしております!
詳細・購入はこちらから(Amazon)
ご感想などはこちらから:『嶋野・尾上の「これからの知られ方」』へのお便り
4月11日 刊行記念トークイベント開催のお知らせ
刊行を記念し、著者の嶋野裕介氏、尾上永晃氏と、『スマホで「読まれる」「つながる」文章術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者である奥山晶二郎氏によるトークイベントを、青山ブックセンターにて開催します。テーマは「SNS時代に、ひとりでもできる発信法」。ぜひふるってご参加ください。
日程: 4月11日 (火) 19:00〜20:30 開場18:30~
入場料:1540円
定員:80名
会場:青山ブックセンター本店 大教室
詳細・申込はこちらから
5月12日には伊良コーラのコーラ小林さんをゲストに迎えたトークイベントを、本屋B&Bにて開催予定。詳細は追ってアップします。
嶋野裕介
東京大学経済学部卒。ブランドマーケティング論を専攻。マーケティングプランナー、営業職を経てクリエイティブ職へ。主に飲料メーカー、自動車メーカー、地方自治体などのPR・プロモーションを担当。国内外のアワード審査員などを務める。好きなものは、新聞とオセロと研修。
尾上永晃
東京理科大学大学院建築学部卒。都市の設計とブランド論を専攻。プロデューサー職を経て企画職に。SNSでの人々の動きを意識したコミュニケーション設計で、飲食チェーン、製菓会社、出版社など分野を問わず担当。国内外でブランドやコミュニケーションの講義を行う。好きなものは、料理。
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