米連邦取引委員会(FTC)は4月13日、一般用医薬品や健康食品、サプリなどのマーケティングに携わる約670社に対し、根拠のない広告で消費者をあざむいた場合、違反1件あたり最大5万120ドル(約660万円)の民事制裁金を課すと通知した。通知は抑止や将来的な訴訟のためのもの。2021年4月の最高裁判決を受け、FTCは、「ペナルティ・オフェンス通知(Notice of Penalty Offenses)」と呼ばれる手法を復活させている。
- 「ペナルティ・オフェンス通知」の対象
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- 2023年
- 「立証」(Substantiation)
- 2021年
- 「収入増の機会」(Money-Making Opportunities)
- 「推奨」(Endorsements)
- 「教育市場」(Education)
- 1983年
- 「体重減」(Weight loss)
- 1980年
- 「送りつけ商法」(Unordered merchandise)
- 1979年
- 「省エネルギー」(Energy saving)
- 「羊毛製品」(Wool)
- 「実用新案・発明の販促」(Idea or invention promotion)
- 1978年
- 「自動車レンタル」(Auto Rental)
- 「毛皮製品」(Fur)
- 「セールス」(sales of merchandising or service)
- 「羽根・羽毛製品」(Feather & down)
- 1977年
- 「ビジネスチャンス」(Business Opportunities)
- 「住宅改修」(Home Improvements)
- 「模造コイン」(Imitation coin)
- 1976年
- 「玩具」(Toys)
- 1975年
- 「おとり商法」(Bait & Switch)
- 「債権回収」(Debt collection)
- 「損傷、欠陥品の販売」(Damaged or defective)
- ※記載なし
- 中古品・修理品(Used or rebuilt merchandise)
- テキスタイル(Textile)
- 2023年
通知先のリストにはアマゾンやウォルマート、コストコなどの小売、コカ・コーラ、ユニリーバ、ファイザーなどのメーカーが連なる。日系では、大塚製薬の米国法人や、NIKKEN、「キヨーレオピン」などを販売する湧永製薬の米国法人の名前もある。
FTCは、「健康関連の強調表示をすでに行っているか、今後行う可能性のある企業に通知しているが、必ずしも健康強調表示に限定するものではなく、製品の有効性や性能について広告などで訴求する、あらゆるマーケティング担当者に適用される」とした。
「『立証』に関するペナルティ・オフェンス通知」として発出した。通知に記されているのは、製品が主張する効果などに対し、裏付けとなる合理的な根拠や証拠がない、検証のレベルや種類を偽っている、科学的または臨床的に証明されていると偽っているなど、過去の行政命令で違法とされた行為や慣行。
各社には併せて「商品の推奨にかかるペナルティ・オフェンス通知」も送付した。「商品の推奨にかかるペナルティ・オフェンス通知」は、虚偽の商品レビューや利用者のコメントなどが違法であると通知したもの。21年10月に約700社に送られた。
「ペナルティ・オフェンス通知」は過去の行政命令で違法とされた行為をしないよう求めるもので、未然に違反を防ぐ抑止力としての効果が期待される。また、今後、民事制裁金を求める際の根拠にもなる。FTCが民事制裁金を求める場合、当該企業がFTC法に反する不公正または欺瞞的な行為であると知っていたこと、FTCが当該行為は不公正または欺瞞的であるという決定を出していたことを証明することが条件とされる。
FTCはこれまでFTC法第13条を根拠に、違反企業に不正利得の吐き戻し(ディスゴージメント)をさせ、消費者被害の救済に充ててきたが、現在はできなくなっている。米連邦最高裁が「法第13条は差止命令を求めるのみで、直接的に金銭的救済を得ることを規定していない」と判決を下したため。
FTCは21年に3件の「ペナルティ・オフェンス通知」を出している。それ以前は「体重減」に関するもので、発出は1983年までさかのぼる。
3月31日付でFTC委員を辞めたクリスティーン・S・ウィルソン氏は、今回の「実証に関するペナルティ・オフェンス通知」について、「民事制裁金を受けるケースは比較的少ないと予想される」としている。すでに出された通知と比べ、違法行為の立証が複雑かつ不確実だからだという。
「しかし、本通知に記載されている実務は、FTCが長年にわたって採用してきた枠組みであり、裁判でも勝利してきたアプローチであることに留意しておきたい。マーケティング担当者は、当該の通知と引用されている事例を検討し、それに従って広告などにおける主張を調整することをお勧めする」(ウィルソン氏)