※本記事は4月1日発売の『販促会議』2023年5月号の転載記事です。
花王グループ
カスタマーマーケティング
営業部門
トレードマーケティング部
塩見亮介氏
変わるニーズを素早くキャッチアップし施策に反映
──どのような業務を担当していますか。
花王グループカスタマーマーケティングで、トレードマーケティング部に所属しています。商品としては「ビオレ」の日焼け止めやデオドラントなど季節性のあるものを担当しており、花王本社で開発・製造した商品の事業戦略を、流通さま向けの販売戦略に落とし込み、営業担当とともに各小売への提案方法を検討しています。また、各営業から挙がる流通さまの声や消費者の声をキャッチアップし、花王本社へのフィードバックも行っています。
──コロナ禍を経て、流通を取り巻く環境に変化はありましたか。
これまで以上に消費者の求めるものが多様化しました。例えば日焼け止めでは、コロナで外出が減り、以前よりもしっかりとメイクをする機会が減ったことで、日焼け止めをベースメイク代わりに使用する人が増えた。そのため、日焼け止めに光拡散(肌を明るく見せる)機能などを付加し、化粧品代わりに使用できるような商品が増えています。このように、消費者のニーズの変化を受け、発売される商品にも変化がありました。
消費者ニーズを把握することは、流通さまにとっても売上に直結する重要なテーマです。しかし、ニーズは多様化したうえ、目まぐるしく変化します。例えばハンドクリームは手指衛生の習慣化により、手荒れ予防や除菌もできる商品などが多く並んでいましたが、徐々に美容価値を付加させた商品に変化してきています。流通さまからは、そういった潮流に合わせた品ぞろえを求められる。そのため、私たちメーカーがしっかりと市場背景や環境要因を理解し、お伝えすることに価値があると思っています。
消費者ニーズの把握は多くの企業にとって課題だと思いますが、当社の社員は入社時から「消費者起点」を徹底することを求められています。それはものづくりを行う開発担当だけでなく、マーケティングや販売担当も同様です。そのため対流通さまだけでなく、その先のお客さまが何を求めているか、ということは徹底して考えています。定量データによる分析はもちろん、定性的なお客さまの声や、時にはSNSなども活用しながら、お客さまが商品やブランドに対しどのような感想を持っているかを常にチェックしています。
目先の売上に捉われず長期的視点でロイヤル化を目指す
──そうした変化に合わせ、施策はどのように起案していますか。
最近「ビオレUV」から発売した、霧のようなテクスチャーが特徴の顔・からだ用日焼け止め「アクアリッチ アクアプロテクトミスト 瞬感ミストUV」を例にとると、多様化するニーズに対応するため、まずは本発売の前に一度、販路を絞って某チェーンで先行販売を実施しました。
そこでお客さまの反応や生の声を抽出し、社内で検証・改良するというフローを踏みました。その結果、日焼け止めとしてはミストのため髪に使う方が多い、ということがわかりました。そこで、ヘアケア売場の棚にこの商品を置いてもらうなど、得たユーザー属性や商品の使われ方などの情報を販売戦略に生かしました。
このように、検証と改良を行いながらスピーディにPDCAを回し、商品のどのような特徴がお客さまに評価されるかを確認した上で販売戦略を練り、実行するということを行っています。
こういった施策は、「ビオレ」を通してお客さまの生活をいかに豊かにできるかという考えに基づいています。そのため、ついつい目先の売上を得るために価格メリットの強調などを考えがちですが、そういった単発的な戦略ではなく、長期的な目線で購入に繋がる、お客さまのニーズに合った施策を実行しています。
市場背景を踏まえた消費者起点の提案が採用の肝
──そうした施策や商品を流通に提案する際、実施していることはありますか。
流通さま向けに新製品説明や提案をする際には、……
……本記事の続きは、『販促会議』2023年5月号で読むことができます。