松岡芳美氏
FRACTA
Research&Implementation局
ブランディングの課題実は“社内”にありませんか?
FRACTAは、創業当時は企業のECサイト制作を中心に成長。そのなかで、クライアントが抱える真の課題は、サイト制作の前段階にあたるブランディング施策の戦略にあるのではないか、との気づきを経て、より川上から支援に入るように。今ではコンセプト策定から、商品開発、さらにコミュニケーションまで、“伴走型”のブランディング支援で数々の実績をあげてきた。「ブランド戦略に課題を感じているけれど、何から始めたらよいのかわからない」という企業に対し、所在や組織の新旧、規模にかかわらず「課題がどこにあるのか?」を見つけるところからサポートしている。
そうした経緯から、同社では「One By One」と呼ばれる月額料金制のブランド支援サービスを展開。これはブランド成長のために、現在の課題感に合ったプロジェクトをFRACTAの担当者と共に実行できるというものだ。
そんなFRACTAはこれまで、エクスターナルブランディングに強みを持つ会社として知られてきた。しかし同社が最近、多く支援を求められているのがインターナルブランディングの領域。同社の調査研究機関「Research&Implementation局」に所属する松岡芳美氏は「クライアント企業の課題を聞くなかで、実はその課題はインターナルブランディングの施策で解決するのでは?と感じるケースが増えている」と言う。
マス・マーケティング発想では価値観が多様な世代に響かない
しかし現在、世で言われているインターナルブランディングの手法だけでは短期的な企業の売上にも、さらに長期的に見た際の企業価値向上にもつながりづらいのではないか、という疑問も抱いたのだという。
具体的には「多様性が叫ばれる現代、そうした世界観に親しんだミレニアル世代やZ世代、さらにはその下の世代がメインストリームになっていく。その際、従来のように企業側がパーパスや理念として企業の価値観を一方的に提示し、社員がそのとおり動くことを期待するのは難しいと感じたのだという。
「Z世代の人たちと話していると、良い意味で個人主義的な傾向が進んでいると感じます。これは“自分”という確固たるものがあるという意味。だからこそ、インターナルブランディングにおいても、画一的な価値観を浸透させようとするのは、時代に合っていないと感じたのです」(松岡氏)。
「社員の認知を獲得して、理解・共感を深めてから、一斉に動かしましょう!」というマス・マーケティング的な発想では、インターナルブランディングはうまくいかない。“上から与えられたもの”を本当に自分ごと化することができるのか?と考えた時に、頭では理解できたとしても、どうしても心理的な壁は生まれてしまう。それならば、社員一人ひとりが「こうありたい」と感じる気持ちを大事にする、“ボトムアップ” アプローチが有効ではないか、と考えたという。しかし、そこにも難しい課題が横たわっていた。
「完全なるボトムアップのやり方では時間がかかる上に、企業が掲げるあるべき姿からズレてしまいかねない。一般的に社員よりも経営者が思い描く理想の姿の方が、視座が高いことが多いためです」(松岡氏)。
部署ごとの役割を規定1日数時間、“役”になりきる
そこで松岡氏が考えたのが、ロールモデルをつくり、それに「なりきる」という手法だ。「1日、数時間であればその“役”を演じてもよいかな、と思えるようなブランド人格をつくり、『ちょっとだけその人になる』という感じですね。そういったものを部署やブランドごとに設定する手法を開発中です」。
もともとFRACTAでは、ブランドアイデンティティづくりに独自のメソッドを持っていた。ブランドを体現する人物を中心にして、そこから派生する形でブランドアイデンティティを規定。それにより、ブランドに対する社内外の理解が深まる、といった流れだ。
このブランド人格・アイデンティティの細分化とも言える「部署に紐づいた人格」を、自らが“演じる”。それも、1日に数時間だけ。そうした上からのお仕着せではない進め方こそが、これからのインターナルブランディングにはふさわしいのではないかと松岡氏は語る。
かつて「電通マン」や「銀行マン」のように社会的ステータスを内包する存在へと社員がなりきり、それにふさわしい行動規範を遵守する時代があった。しかし現代では、一人ひとりの価値観に合わせたアイデンティティの細分化が必要なのだ。
FRACTAはこれまで多くのエクスターナルブランディング案件を手掛けてきたが、松岡氏は「インターナルブランディングにおいてもこれまでの手法やメソッドを応用できる点は大きい」と話す。また、クライアント側にとっても、すでにエクスターナルブランディングで使っている「ブランドパーソナリティ」があるため、インターナルブランディングの考え方を自然に理解できる土壌があるのだという。
インターナルも同時に推進すべき理由
時代にふさわしいインターナルブランディングを模索し、ツール化を進めているFRACTAだが、インターナルブランディングだけを単独で推し進めようとは全く考えていないと松岡氏は言う。
「私たちが提唱するインターナルブランディングは、個別に機能するものではありません。インターナルとエクスターナルを有機的に組み合わせ、フェーズを区切ることなく融合させていく。そうすることで、クライアントの状況や課題に対して小回りの利く形での対応が可能になります。結果として、それがコストや時間の削減につながるのを感じますね」。
もちろん、2つのブランディング施策を連動させることで社員一人ひとりが自社ブランドに愛情を感じ、そこで働くことに誇りを持つことができれば、ものづくりや顧客対応をはじめとするブランド活動そのものの変化が期待できる。
その積み重ねが顧客への信頼醸成につながり、エクスターナルブランディングの成功へとダイレクトに効いてくる。長期的に企業価値を高める提案をしていきたいと松岡氏は展望を語った。
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